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156・アナタとワタシはオトモダチ
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「もちろん、こちらとしてはそのような意図は毛頭ない」
場に呑まれることなく冷静に返すジルコン。隣にいてくれてよかった。この席における唯一のメリットだ。
「生物としてのありようは違えど、我らは現に今ここで、対等に言葉を交わしている。同じ知性を持ったヒト同士として、我々は貴殿らを最大限に尊重しているつもりだ」
「はっ。そりゃまたずいぶんありがたい話じゃねえか、なぁ?」
「……」
フォルコの視線が、ちらりとエイグルに移る。ジルコンの穏当なセリフとは裏腹に、エイグルのまとう雰囲気はさっきよりもずっと殺気立っているみたいだ(あ、シャレじゃないです)。なんだかどうもこっちの彼は、そもそも人間という種族自体が嫌いなように見える。そんな相手と話し合いなんて成り立つのか? 不安がつのる。
不穏な空気を切るように、トパシオが明るい声を上げた。
「とにかく、オレたちの害とそちらの利が相反する以上、どこかで落とし所は探らなきゃいけないよな。それがいわゆる『実りある対話』ってやつだろ?」
「当然。どころかこちらは既に妥協案まで用意してやってるんだぜ。泣いて感謝しな」
「ほう?」
尊大な言いぐさに、ジルコンがわずかに目を細めた。言外に非難をこめた視線を受けても、フォルコは両の肘掛けに腕を預けてふんぞり返ったままだ。その黄金色の瞳が、突如きろりと俺を刺す。……って、え、俺?
「その灯士。チュー太郎とか言ったっけ? クリスタルの灯士にくっついてる、オマケの方」
「お、オマケぇ!?」
「彼が、どうした」
いきり立つ俺を片手で制して、ジルコンは無表情で言葉を返す。だがその鉄面皮は、フォルコの次の言葉によって大きく揺らいだ。
「そいつ。うちにくれよ」
「へ?」
「……は!?」
予想外の提案に、俺はぽかんと口を開ける。ジルコンもらしくなく声を跳ね上げ、驚愕に目を見開いてる。その反応を予想していたかのように、フォルコはくっくっとおかしそうに笑った。
「なに、別に獲って喰おうってんじゃねえ。ただちょっとオトモダチになってもらうだけだ。オレらの里で一緒に暮らして、スキアの処理を手伝ってくれるオトモダチにな」
「駄目だ」
俺が事態を飲み込むより先に、ジルコンがきっぱりと言い放つ。声色に、さっきまでとは打って変わったあからさまな不快感を滲ませて。
「は、そう言うと思ったぜ。だが考えてみろよ、お前らにとっても決して悪い話じゃねえはずだ」
「妥協案というのはそれだけか。ならばこちらとしては妥協の余地はない」
「待て待て、話ぐらい聞いたっていいだろ、つれねえな。それとも私情か? 一国の王子様がそんなんじゃ困るぜ、なあお姫様?」
そんなセリフを吐きながらフォルコが話を振ったのは、なんとミマじゃなくて俺の方だ。お、お姫様ぁ? 俺が? いや、BL的世界観では一般的な例えなのかもしれないけど、にしたってどこをどう見て言ってんだ。鳥目か? 翼人だけに。
場に呑まれることなく冷静に返すジルコン。隣にいてくれてよかった。この席における唯一のメリットだ。
「生物としてのありようは違えど、我らは現に今ここで、対等に言葉を交わしている。同じ知性を持ったヒト同士として、我々は貴殿らを最大限に尊重しているつもりだ」
「はっ。そりゃまたずいぶんありがたい話じゃねえか、なぁ?」
「……」
フォルコの視線が、ちらりとエイグルに移る。ジルコンの穏当なセリフとは裏腹に、エイグルのまとう雰囲気はさっきよりもずっと殺気立っているみたいだ(あ、シャレじゃないです)。なんだかどうもこっちの彼は、そもそも人間という種族自体が嫌いなように見える。そんな相手と話し合いなんて成り立つのか? 不安がつのる。
不穏な空気を切るように、トパシオが明るい声を上げた。
「とにかく、オレたちの害とそちらの利が相反する以上、どこかで落とし所は探らなきゃいけないよな。それがいわゆる『実りある対話』ってやつだろ?」
「当然。どころかこちらは既に妥協案まで用意してやってるんだぜ。泣いて感謝しな」
「ほう?」
尊大な言いぐさに、ジルコンがわずかに目を細めた。言外に非難をこめた視線を受けても、フォルコは両の肘掛けに腕を預けてふんぞり返ったままだ。その黄金色の瞳が、突如きろりと俺を刺す。……って、え、俺?
「その灯士。チュー太郎とか言ったっけ? クリスタルの灯士にくっついてる、オマケの方」
「お、オマケぇ!?」
「彼が、どうした」
いきり立つ俺を片手で制して、ジルコンは無表情で言葉を返す。だがその鉄面皮は、フォルコの次の言葉によって大きく揺らいだ。
「そいつ。うちにくれよ」
「へ?」
「……は!?」
予想外の提案に、俺はぽかんと口を開ける。ジルコンもらしくなく声を跳ね上げ、驚愕に目を見開いてる。その反応を予想していたかのように、フォルコはくっくっとおかしそうに笑った。
「なに、別に獲って喰おうってんじゃねえ。ただちょっとオトモダチになってもらうだけだ。オレらの里で一緒に暮らして、スキアの処理を手伝ってくれるオトモダチにな」
「駄目だ」
俺が事態を飲み込むより先に、ジルコンがきっぱりと言い放つ。声色に、さっきまでとは打って変わったあからさまな不快感を滲ませて。
「は、そう言うと思ったぜ。だが考えてみろよ、お前らにとっても決して悪い話じゃねえはずだ」
「妥協案というのはそれだけか。ならばこちらとしては妥協の余地はない」
「待て待て、話ぐらい聞いたっていいだろ、つれねえな。それとも私情か? 一国の王子様がそんなんじゃ困るぜ、なあお姫様?」
そんなセリフを吐きながらフォルコが話を振ったのは、なんとミマじゃなくて俺の方だ。お、お姫様ぁ? 俺が? いや、BL的世界観では一般的な例えなのかもしれないけど、にしたってどこをどう見て言ってんだ。鳥目か? 翼人だけに。
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