転生したらBLゲーの負け犬ライバルでしたが現代社会に疲れ果てた陰キャオタクの俺はこの際男相手でもいいからとにかくチヤホヤされたいっ!

スイセイ

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152・ニジゲン

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 望遠鏡の近くで、ルビーノが焚き火を始めたみたいだ。バーベキューの〆にキャンプファイヤーだなんて、俺の生きてた現代日本じゃなかなかできない。燃え上がる炎の熱と光を夜が和らげて、俺たちのテーブルを柔らかく照らしている。俺とミマは無言でそれを見つめている。

「残念だったな」

 ひとり言にしてはずいぶんはっきりした声で、唐突にミマが呟いた。

「残念?」
「自らイベントを主催することで、一気に全員の親愛度を上げようって魂胆だったんだろ。けどお前が上げたのと同じかそれ以上に、僕と騎士様たちとの親愛度も上がった。プラマイで言えばゼロもしくはマイナスだよ。無意味な努力、ご苦労様」
「あー……」

 言われて思い出した。確かに、そういう下心が一切なかったとか、考えもしなかったと言ってしまったらそれは嘘になる。恋愛的な意味は置いといても、ちょっとでも仲良くなれればいいと思ってたのは事実なんだし。
 だけど。

「……んー。なんかもう、その辺はいいかな」
「は?」
「なんだかんだ言ってそれなりに親睦は深められたわけだし。親愛度の数字はお前に譲ってやるよ」
「なっ……」

 するりと出てきた俺の言葉に、ミマは意表を突かれたように振り返る。実際、強がりでもなんでもない。俺が本音で喋っていることは、ミマにもしっかり伝わったみたいだ。喋り方が少し焦ったような早口に変わる。

「今さら何言ってんの、お前。余裕ぶってるつもり? それとも現実逃避? 親愛度の数字がなけりゃ、お前なんかゴミ以下の扱いしか受けられないんだぞ」
「えー、でも、実際、最近は前ほど悪い扱いされてねーし。まあ、ラブとかちやほやとかそんなんには程遠いけど? よくよく考えてみたら人と人との関係なんて、全部数字に表せるわけねーじゃんなあ」
「何言ってんだ……何言ってんだよ、お前」

 ミマは信じられないものを見るかのような瞳で俺を見ている。膝の上で握った拳が、ぶるぶると震えているのがちらりと見えた。え、何? 俺そんな変なこと言ったつもりないんだけど。これはまたしても俺なんか言っちゃいましたパターン? ミマのまとう雰囲気は、まるで自分の世界全部を揺るがされているみたいな焦燥感に満ちている。

「全部だろ、数字が。親愛度が全部だろ、そうでなきゃ困る。そうでなきゃ、僕は」
「え、何、どうしたマジで」
「……課金して親愛度を上げれば、騎士様たちは僕のものになる。親愛度の低いお前は、冷たく扱われて然るべきだ。そうであるはずだろ」
「まー、システム的に言えばそうなってはいるんだろうけど、現実的に」
「何が現実的にだよ! ありえない、そんなの、だって、だってこの世界は」
「お、落ち着けって、ミマ」
「だって彼らは──二次元だ!」
「……!」

 絞り出すように告げられたその一言に、心臓を突かれたみたいな気分になった。俺だけじゃない。その瞬間、ミマ自身もまた、自分の言葉に衝撃を受けたように目を見開いていた。
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