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151・という夢を見たんだ

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 結局。頭の中で言葉を選びつつ、俺は恐る恐る口を開く。

「……これは、あくまで一般論として言うんだけど」
「ああ、なんだ?」
「その……怖いなら別に、逃げてもいいと思うよ、俺は」
「は?」
「信頼とか自信ってのは、他人から押し付けられてどうこうするもんじゃないと思うし。なんのかんの言っても人間命が一番大事なのは当たり前のことだし、生き延びてこそできることってのもあるだろうし。い、一般論、一般論としてね?」
「……ははっ。そうか」

 つい保険というかフォローというか、そういう感じの方向に回ってしまった俺に、ルビーノは意味深な苦笑を見せた。

「なら俺も、一般論として言わせてもらうんだが」
「う、うん」
「他人からの期待によって生まれる信頼や自信も、時と場合によってはそう悪くないもんだぜ。少なくとも、今のオレにとってはな」

 ルビーノのその微笑みは、俺にはどこか吹っ切れたような色をしているように見えた。
 釣られて俺もへらっと笑う。風に流された花びらの一片が、赤く輝く髪の前を横切って消えていく。

「……そっか」
「気遣い、感謝する。少し冷えてきたな。向こうの連中に火でも焚いてやるとするか」

 そう言い残してルビーノは、望遠鏡に集まる面々の方へ歩いて行った。去り際、後ろ姿で俺に片手を上げてみせながら。
 うーん。いろいろあるんだろうな、あいつにも。いくら守護隊長サマとは言っても、あいつだって人間だ。最初の頃はキャラメイクのための属性としか思わなかったけど……最近は、そういう駄目な部分も含めて、あいつの作ってきた人生なんだと思うようになってきた。

(……あ)

 そのときふと、なんとなくわかった気がした。前からときどき感じていたモヤモヤの正体。言葉にするのは相変わらず難しいけれど、少しだけ霧が晴れたように思う。これがいわゆる、腑に落ちるってやつか。
 遠くで、みんなの声がしている。ランプの火が温かく揺れている。知らず知らずあくびが出てきた。テーブルの上で組んだ両腕に、知らず知らず顔面が落ちていく。昼間の緊張がほぐれた反動で、今さら気が抜けてしまったみたいだ。でも悪くない。心地いい。遠いみんなの笑う声が、やがて霧のようにぼやけていく……



「……い。おい」
「ふがっ」

 鼻を摘み上げられて飛び起きる。な、何!? え、寝てた!? まさかの夢オチ!? 今までのは全部幸せな夢で、ほんとの俺は今日もまた深夜からバイトです、とかいうオチだけは勘弁な!?
 もちろん、冷静になってみればそんなことはなかった(よかった)。さっきルビーノが座っていた対面の椅子から、不機嫌そうな顔で俺の鼻をつまんでいるのは、まさかのミマだ。

「寝言、うるさい。騎士様たちの声が聞こえない、どっか行け」
「え、うそ、俺寝言言うんだ……ん、あれ、お前、望遠鏡は」
「コラルが夢中になってる。僕はもういい」

 ちらりと振り返る視線を追えば、ランジンと一緒に、楽しそうに夜空を観察するコラルの姿があった。譲ってあげたのか。最近優しいじゃん……なんつって、寝た子を起こすのも怖いから黙っとくけど。
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