転生したらBLゲーの負け犬ライバルでしたが現代社会に疲れ果てた陰キャオタクの俺はこの際男相手でもいいからとにかくチヤホヤされたいっ!

スイセイ

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149・肉焼きジジイ店じまい

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 肉も野菜もあらかた焼き終えて、宴もたけなわ。
 肉焼きジジイとしての職務をまっとうした俺は、テーブルの一番端っこで、余った半焦げ野菜をちまちまとつついていた。
 柔らかだった太陽もそろそろ沈みかけ、東の地平には藍色の夜空が滲み始めている。俺の隣ではジルコンとスマラクト、トパシオが、
机上に置かれたランプを囲んで談笑中だ。アメティスタはワインの瓶を片手に、木の根元に丸くなって眠っている。少し離れたところではサフィールが持ち込んだ望遠鏡に、興味津々のランジンやミマ、コラルが集まってきている。
 俺はと言えばそんな光景を、隅の方からただぼけっと眺めてるだけだ。会を企画したりご大層なこと言ってはみたものの、やっぱり人間の性根ってのはそうすぐには変わらないもんで。ミマみたいに自分から輪の中に入って、わいわい談笑を始めるとはなかなかいかない俺だ。でも、まあ、これはこれでそんなに悪くない。飲み会ぼっちの孤独とは違って、なんとなく今は、俺がただここにいることも許されている気がする。
 感慨と焦げたキャベツを噛みしめる俺の顔に、不意に上方からの影が落ちた。

「チュー太郎」
「ん? あ、ルビーノ」

 後ろから声をかけられ、箸を止めて振り返る。声の主、ルビーノは、空いた椅子を俺の前まで引き寄せ、背もたれを前にして腰を下ろした。

「今日はご苦労だったな。楽しい宴だった。ジルコンに感謝しなくちゃな。もちろん、オマエにも」
「え、俺? やー、俺は別になんもしてないよ?」
「隠すことはないだろう。オマエの提案だったんだよな? ジルコンの奴、まあ嬉しそうな顔をしながら教えてくれたぜ」
「えぁ……」

 どう返していいかわからずに、ぽりぽりと頰をかく。なんだ、バレてたのか。ジルコンのことだから考えなしにバラしたわけじゃないだろうけど、にしても嬉しそうな顔って、なんか、て、照れる。
 視線をさまよわせる俺を見つめて、ルビーノはフッと表情を緩めた。それから少し改まった声で、俺の瞳に焦点を合わせる。

「正直に言えば、最初はオマエがここまでの灯士になるとはとても思っていなかった。体力はないわ弱音は吐くわ、おまけに何かあるごとにブツブツ妙な独り言は言うわで、内心大丈夫なのかと不安だったんだが。それが今や、ディアマンテ殿下の信頼も厚いひとかどの灯士だ。さっきの挨拶も、ちょっとしたもんだったぜ」
「え、あはは、そう? や、お世辞でもそう言ってくれるとめっちゃ嬉しいよ、マジで」
「お世辞なんかじゃないさ。ああ……なあ、一つ、聞きたいことがあるんだが」
「ん?」

 一瞬だけ、辺りを伺うように視線を走らせたあと。ルビーノは俺からさりげなく目を逸らし、ごく小さな声で呟いた。

「怖くは……ないのか」
「え? そりゃ……まあ、今後のことを考えると、怖くないわけはないけど」
「ああ、そうだな、そうだよな。悪い、少し質問を変えよう」

 苦笑するルビーノの横顔が、机上のランプに照らされる。すっと通った鼻筋に沿って、色濃い影が落ちている。
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