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137・ギョーてん!朝ごはん

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 不安と心配で寝つけない夜を明かした、翌朝。

「ふぁあ……」

 こぼれたあくびをそのままため息に繋げながら、いつもの無課金ぬののふくに着替えて部屋を出た。昨日はあんまり眠れなかった。当たり前か。俺の肩を掴みかけたあの鉤爪が、そのまま深々と突き刺さる悪夢を何度も見てしまった。
 それでも食欲が残っているのは、ジルコンの料理の腕前のなせる技か、それとも俺の生き汚なさのせいなのか。まあ、どっちにしろ悪いことではないよな。目を擦り擦り食堂のドアを開け、ぼんやりとテーブル側に視線を移した──瞬間、一気に目が覚めた。

「……ミマ」
「……っ」

 何の因果か追い討ちか。普段はここにいないはずの相手──ミマは、ぎょっとしたような顔で硬直している。座っている席は俺の定位置の対面、いつもは空席になっている場所だ。

「な、なんでお前がここに」
「なんっ……、……何でって、僕だってここで朝食を摂る権利はあるはずでしょう?」
「まあそりゃ、そうだけど……」
「何ですぅ!? なんか文句でもあんのかコルァ、ですぅ!」

 ミマの隣席、お子様用の高椅子に座ったコラルが、ぴょんぴょんと跳ねながら俺を威嚇する。こいつもいんのか。まあ、不思議マスコットとはいえ食事ぐらいは摂るか、普通。
 あ、そうか。アメティスタのところで見た光景が蘇る。そう言えば俺がいない世界のミマは、普通にこの食堂で食事をしていた。その記憶と今のミマの記憶がどんな風に合わさってるのかは知らないが、考えられる原因といえばそれくらいだ。

「なんすかお前、ミマサマに出てけとでも言うつもりですぅかぁ!? ここが自分のナワバリだとでも思ってんですぅ!? むしろオマエの方が出てけですぅこのドブネズミヤロウ!!」
「てめっ……いや、そんなこと言うつもりはない……けど……」
「そう。よかった、ふふっ♡」

 ミマはにっこりと笑って、直後にすっと表情をなくす。あ、こいつもこいつで意地になってんな。まあ確かに、こいつにも食堂を使う権利があるってのはその通り。けど、それを言うならここで俺が退散する道理だってない。平常心平常心、自分に言い聞かせながら椅子を引き、席に着いて今日の朝食を待つ。

「お待たせいたしました。本日の……おや」

 料理の乗ったワゴンを運んできたジルコンが、俺たちを見て一瞬だけ眉をひそめた。だが即座に平静を取り戻し、俺たちの前に皿を置いていく。

「……失礼いたしました。本日の朝食は、エーデルポークのローストと酢キャベツのホットサンドイッチ。及びルッコラと削りチーズのサラダ、オリーブドレッシング添えでございます」
「わあ♡ 美味しそうだね、チュー君」
「そーだな、ミマ! 朝からしっかり栄養取れそうだな、あははは!」

 白々しい会話を交わしつつ、俺たちは同時に笑い合う。なにこの茶番。でもなんだろう、ここで負けたら駄目だって気がする。
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