転生したらBLゲーの負け犬ライバルでしたが現代社会に疲れ果てた陰キャオタクの俺はこの際男相手でもいいからとにかくチヤホヤされたいっ！

１３４・©︎宝石の騎士と七つの耀燈

　さて。
　肉体的にも精神的にも疲れ切った俺は、自室のベッドに辿り着いた瞬間泥のように眠り込んだ──そしてそのまま、一夜明けて。

　宣言した通りにジルコンは、さっそく翼人族への対策を開始した。具体的には情報収集、近年の動向調査、スキア値の変動データ洗い直し、等等。忙しく立ち回る耀燈騎士団の末席で、あんまり出来の良くない俺の頭がどうにか理解したことと言えば、以下の通りだ。

　ひとつ。そもそも翼人族とは、闇スキアの力を体内に取り込み、自らの魔力に変えて利用する種族のことである。元々辺境に住んでいた魔物の類が、百年戦争時の混沌を糧に変容し、高い知能と魔力を身につけた、ファンタジー用語で言うところの魔族的なポジションに当たる生き物らしい。
　それでも百年戦争終結あたりの時期までは、獲物であるスキア自体が強力化していたこともあり、人類にとってはそれほどの脅威となる存在ではなかった。が、近年は人間側の開発が進み始め、居住区が重なるようになったこともあって、衝突を起こすこともしばしばだとか。
　ここら辺の歴史はスマラクトに教えてもらった。相変わらず分厚い資料と難解な講座がセットになってたけど、なんせ俺も命の瀬戸際だ、頑張って覚えたぜ。ジルコンに褒めてくれとねだったら、虚無を見るような目の執事モードで頭を撫でてくれた。まあヨシ。

　ひとつ。今回預言に現れた翼人族は、恐らくエーデルシュタイン王国北部の山間に根城を構える山賊軍団のことである。縄張りを通る馬車やスキア討伐者たちを狙い、金品や時には命までもを強奪していく獰猛な猛禽。その中でも注目すべきは二人、リーダーであるフォルコと、彼の副官エイグルだ。彼らこそが例の新キャラ、ジルコンに見せられた立ち絵の二人でもある。
　まず、リーダーのフォルコ。父親の跡を継いで最近族長に就任した若き新鋭で、性格は傲岸不遜、傍若無人、唯我独尊、粗にして野だが卑ではないといったところ。直情的だが意外と頭もキレる、敵に回したら厄介な相手だとか。守護石はホークアイ（一応宝石モチーフは忘れてなかったのか）、身長は182cm、髪の色は茶色、瞳の色は金色。代表的なセリフは「気に入った。お前、オレのものになれ」。
　次に、副官エイグル。幼い頃よりフォルコに付き従う忠実な従者で、厳格かつ実直、敵対する者には容赦しない冷徹な性格。厚みも高さも相当な体格、顎のあたりに傷跡の残る顔面、どちらもかなりの威圧感を持っている。噂では人食い熊でもひと睨みするだけで退散させられるとのこと。守護石はイーグルアイ、身長は192cm、髪の色は黒、瞳の色は濃灰色。代表的なセリフは「私の身はフォルコ様にお仕えするためだけに存在している。そしてフォルコ様が求める、貴殿にもだ」。
　……以上、©︎ 宝石の騎士と七つの耀燈、オフィシャルホームページより抜粋。こと情報戦に関しては、この世界でもインターネットに勝るものはない。これぞ最強チート。いらない情報もだいぶ混ざってたけど。

　そして、最後のひとつ──俺にとっては、これが一番重要なこととして。
　来月の初め。彼ら翼人族のフォルコとエイグルが、交渉と言う名の宣戦布告をしにやって来る。