転生したらBLゲーの負け犬ライバルでしたが現代社会に疲れ果てた陰キャオタクの俺はこの際男相手でもいいからとにかくチヤホヤされたいっ!

スイセイ

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94・闇の炎になんとかかんとか

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「来ないなら僕から行くよ。撃ち落とせ、ペルレ・レイ!」
「へ? のわっ!?」

 立ち尽くしていた俺めがけて、白い光の玉が飛んでくる。慌ててその場から飛び退いた。さっきまで俺が立っていた敷き石が、赤く熱を帯びてわずかに歪む。こ、怖っ!!

「安心しなよ、呪符の安全装置があるからね。見た目は派手だけど死にはしない。まあ、皮一枚くらいは焼けるかもしれないけど」
「それ聞いて安心できるわけねーだろ!? わ、ちょ、やめてやめてやめて! ストップストップポーズポーズポーズ!」
「あっははははっ! チュー君、これはショウだよ!? 萎えさせるようなこと言うなよ、なっ!!」
「ギャーッ!?」

 四つん這いでシャカシャカ逃げ回る俺の後ろに、光の玉が連続で着弾しては炸裂する。ステージに砂埃が巻き上がる。高笑いを上げながらランプを振りかざすミマは、明らかに目がイッちゃってる。こ、こいつ戦闘狂かよお!? 対戦ゲーで暴言吐くタイプだろ絶対!!

「ハッ、どうしたよ無課金野郎! あれれぇ、いいのかなぁ、このままじゃランジン様たちとぶつかっちゃうよぉ!?」
「く、くっそぉ、うわうわうわ!」

 切り結ぶ二人を目の前に、急ブレーキをかけて旋回する。あの中に飛び込んでいくことはできない。邪魔とかそういう気遣い以前に、俺の命がさらに危ない。
 視界の隅に入る客席は、全員総立ちレベルの大盛り上がりだ。いくつかの声高な野次が、遮音構造を突き抜けて飛んでくる。

「何やってんだネズミ野郎―っ! 塩試合見せてんじゃねーぞー!」
「二足より四足歩行の方がうめーじゃねーか! そのままドブまで逃げ帰っていもいんだぞー!」
「うるせーっ!! お前らみんな顔覚えたからな、夜にランプの灯ぃ絶やすんじゃねーぞ!?」

 反射的に言い返してから立ち上がる。ミマは嘲るような笑みを浮かべて、ダイヤで飾られたランプを軽く掲げた。

「まったく、野卑な連中だ。けど、何やってんだってのはごもっともな意見だね。反撃してこないの? 呪文の使い方、覚えられなかったかな?」
「ぐ……っそ、あーあーそこまで言うならやってやらあ、後悔すんなよ!? あとで慰謝料とか言い出すんじゃねーぞ!?」
「事故の際の補償はトパシオ持ちの契約だよ。いいから、来いよ。できるもんなら」
「く……っそおお!!」

 煽りにまんまと乗せられる形で、ランプをミマに突き出した。人に向かって攻撃魔法を撃つなんて、当たり前だが生きてて初めてだ。本能がかけるリミッターを、熱くなった頭で意図的に外す。
 ランプを握る手に意識を集中させる。さんざん繰り返したランジンとの練習、血の流れを手のひらに集めるような感覚。記憶を反芻するたびに、手のひらのくぼみがじんわりと熱くなる。ここから撃ち出すような感覚で発動……発動?
 あ、待った、技名! 技名考えてなかった! ミマもみんなもいつも言ってるやつ! なんか、なんかかっこいいやつ! ないか!?

「え、あ、や……闇! 闇の炎に……灼かれよ! ダーク・フレイム!!」

 あっ駄目だ。センスも最悪だがそれ以前にこれ、世界観的にも完全悪役の技ですね?
 スンッと頭が冷えた。裏腹に生まれた鈍い金色の光は、一直線にミマに向かって飛んでいく。正確には、ミマのかざしたランプに向かって。
 そして、俺の魔法が着弾する寸前。
 ミマの手元で、何かが光った。
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