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38・信じる心が力になったりならなかったり
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「ってことはつまり、イベントが起きるまではとりあえず、今までみたいに演習と討伐をこなしていかなきゃってことか」
「そういうことだ」
「そっかー……うぅ」
思わず渋い顔にもなろうもんだ。気が重い。またしばらくオミソっ子扱いが確定か。今日みたいな総すかんじゃなく一対一なのは、俺にとっていいことなのか悪いことかどっちになるだろう。
「ちなみに、直近のイベントっていつ?」
「最短だと……そうだな。サフィールとのランダム遭遇イベントなら、次の金の曜日に起こせるだろうな」
「サフィールかあぁー……」
出てきた名前に、さらに頭を抱える。あの青色クール女タラシイケメン、どうもミマのお気に入りっぽいんだよなあ。手コキシステムでも真っ先に選んでたし。ちょっかいかけたらどんな目にあうか、考えるだけで恐ろしい。
「やるしかねえんだよなあ……ま、考えようによっちゃ、ミマの悔しがる面が拝めるチャンスか」
「その意気だ、チュー太郎」
「お……」
さっきからずっと意地悪いニヤニヤ顔だったジルコンが、ようやくちょっとだけ優しく笑った。こうして笑っているときだけは、執事モードのジルコンそのままだ。なんだか変にどぎまぎしてしまった……のもつかの間。
「先に言っておくが、ミマは月額課金のプレミアムジュエリーボックスを購入している。親愛度上昇三倍、パラメーター上昇三倍の効果が加算された最上級コースだ」
「さんば……って、じゃあ俺絶対勝てねえじゃん!」
「当然、そうだろうな。多少親愛度を上げたところで、速攻で塗り返されるのが関の山だ」
「ど、どうすんだよ、そんなの……」
何か秘策でもあるのか。あってくれなきゃ困る。恐る恐る訊ねた俺から、ジルコンはすっと目を逸らす。
「数値の上では親愛度ゼロでも、起こしたイベントの記憶までゼロになるわけじゃない。一度でも心を通じ合わせた相手を、無下に扱うような奴らじゃないのは俺が保証する」
「いやそりゃ理屈の上ではそうかもしんないけど! でも実際俺いま数値に従って邪険にされてるわけですけど!?」
「……数字を超える想いの力を、お前なら見せてくれると信じている」
「丸投げ!!」
ちくしょう、なんか綺麗っぽい言葉でごまかしやがって! 泣いてる俺に課金勧める鬼畜が言っても説得力ねえんだよ!
いや実際、可能なのかそんなこと? リアルだったらそういうこともあるだろうけど、この世界はカネとシステムがものを言う修羅の国だぜ? ……あれ、でも。
「そういや、ジルコンは俺に優しく……してくれてるかどうかは怪しいとこだけど、少なくとも露骨に冷たくはなってないよな。なんで?」
「システムについての自覚がある以上、そう易々と態度を変えるつもりはないが……一番の理由は、俺とミマとの親愛度がさほど上がっていないからだろうな」
「え、なんで」
「さあ? 俺のようなタイプはミマ様のお好みじゃないんだろ」
「へえー……」
ふーん。なるほどね。こいつも俺と同じく嫌われ仲間か。思わず性格の悪い笑いをこぼすと、銀の瞳が俺をじろりと射抜いた。
「……何が可笑しい」
「いやあ? ただお前みたいな完璧イケメン王子サマでも、他人にそっぽ向かれることもあるんだなーって」
「……」
「痛い痛い痛い!」
ニヤニヤしていた俺の頬に、ジルコンはまたしても指輪をぐりぐりさせる。なんだよ! 事実を言っただけだろうが!
「そういうことだ」
「そっかー……うぅ」
思わず渋い顔にもなろうもんだ。気が重い。またしばらくオミソっ子扱いが確定か。今日みたいな総すかんじゃなく一対一なのは、俺にとっていいことなのか悪いことかどっちになるだろう。
「ちなみに、直近のイベントっていつ?」
「最短だと……そうだな。サフィールとのランダム遭遇イベントなら、次の金の曜日に起こせるだろうな」
「サフィールかあぁー……」
出てきた名前に、さらに頭を抱える。あの青色クール女タラシイケメン、どうもミマのお気に入りっぽいんだよなあ。手コキシステムでも真っ先に選んでたし。ちょっかいかけたらどんな目にあうか、考えるだけで恐ろしい。
「やるしかねえんだよなあ……ま、考えようによっちゃ、ミマの悔しがる面が拝めるチャンスか」
「その意気だ、チュー太郎」
「お……」
さっきからずっと意地悪いニヤニヤ顔だったジルコンが、ようやくちょっとだけ優しく笑った。こうして笑っているときだけは、執事モードのジルコンそのままだ。なんだか変にどぎまぎしてしまった……のもつかの間。
「先に言っておくが、ミマは月額課金のプレミアムジュエリーボックスを購入している。親愛度上昇三倍、パラメーター上昇三倍の効果が加算された最上級コースだ」
「さんば……って、じゃあ俺絶対勝てねえじゃん!」
「当然、そうだろうな。多少親愛度を上げたところで、速攻で塗り返されるのが関の山だ」
「ど、どうすんだよ、そんなの……」
何か秘策でもあるのか。あってくれなきゃ困る。恐る恐る訊ねた俺から、ジルコンはすっと目を逸らす。
「数値の上では親愛度ゼロでも、起こしたイベントの記憶までゼロになるわけじゃない。一度でも心を通じ合わせた相手を、無下に扱うような奴らじゃないのは俺が保証する」
「いやそりゃ理屈の上ではそうかもしんないけど! でも実際俺いま数値に従って邪険にされてるわけですけど!?」
「……数字を超える想いの力を、お前なら見せてくれると信じている」
「丸投げ!!」
ちくしょう、なんか綺麗っぽい言葉でごまかしやがって! 泣いてる俺に課金勧める鬼畜が言っても説得力ねえんだよ!
いや実際、可能なのかそんなこと? リアルだったらそういうこともあるだろうけど、この世界はカネとシステムがものを言う修羅の国だぜ? ……あれ、でも。
「そういや、ジルコンは俺に優しく……してくれてるかどうかは怪しいとこだけど、少なくとも露骨に冷たくはなってないよな。なんで?」
「システムについての自覚がある以上、そう易々と態度を変えるつもりはないが……一番の理由は、俺とミマとの親愛度がさほど上がっていないからだろうな」
「え、なんで」
「さあ? 俺のようなタイプはミマ様のお好みじゃないんだろ」
「へえー……」
ふーん。なるほどね。こいつも俺と同じく嫌われ仲間か。思わず性格の悪い笑いをこぼすと、銀の瞳が俺をじろりと射抜いた。
「……何が可笑しい」
「いやあ? ただお前みたいな完璧イケメン王子サマでも、他人にそっぽ向かれることもあるんだなーって」
「……」
「痛い痛い痛い!」
ニヤニヤしていた俺の頬に、ジルコンはまたしても指輪をぐりぐりさせる。なんだよ! 事実を言っただけだろうが!
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