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36・突然の提案
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高らかな叫びが、何度も反響して消えたあと。
静まり返った部屋の中。ベッドの上に仁王立ちした俺in荒縄と、あごをずり落としたまま目を丸くしているジルコンは、真っ向から視線をぶつからせて対峙していた。
キラキラ王子vs無課金アバターライク俺。圧がすげえ。でも引かねえぞ、俺は。このコンプラ丸無視前時代的王子にどんな嫌がらせをされたって、欲望のままに生きてやると決めたんだ!!
やがて。
「……クッ」
ついた肘を肘掛けから下ろして、ジルコンは喉の奥から笑いを漏らす。ついついビクッと警戒してしまう自分が悲しい。ま、負けねえぞ!
「お前は本当に、ほんっとうに、遼遠果てなき馬鹿なんだな」
「う、うっせーうっせー! 馬鹿って言う方が馬鹿なんですぅー!!」
「で? 具体的にはどうするつもりだ。廃課金主人公様を差し置いて、お前のような当て馬がちやほやされるに値する算段は?」
「ぐ……」
そこを突っ込まれるとぐうの音しか出ねえ。威勢のいいことを言ってみたものの、何をどうすりゃそんなことになるのかは見当もつかない。現時点ではそんな未来、まったくの夢物語だ。
でも俺はそんなことでしょぼくれはしない。強がりだろうと虚勢だろうと、もう引っ込みはつかないし、つけない。前世と同じひとりぼっちはもう、ごめんだ。
無言でせいいっぱい胸を張る俺に、ジルコンは目を細めて口端を釣り上げた。
「ククッ。まあ、そうなるだろうな」
「だ、だからって!」
「協力してやる」
「は?」
「俺が協力してやる。と言ったら、お前、どうする」
「……はあ?」
だしぬけな提案の意味がわからず、耳とジルコンの両方を同時に疑った。だがどうやら耳は正常みたいだし、ジルコンはさっきと打って変わった大真面目な顔で俺を見上げている。
「なんだよ、協力って」
「イベントフラグの管理や必須パラメーターの調整は、俺の権限である程度はどうにかできる。膳立てはしてやる。後はお前次第だ」
「いや、そうじゃなくて……なんで急にそんなこと言い出したのか、意味わかんねーんだけど」
「……」
偉そうに組んだ足を外して、ジルコンは椅子から立ち上がった。窓に立ち、カーテンを開けて目を向けたのは、視界をふさぐ円形の中央棟……ではなく、多分、その先にある東棟。ミマの居室だ。
「さっきも言っただろう。俺は俺の懐刀たる騎士団が、私利私欲でいいように弄ばれかけているのが気に食わない」
「あ……」
「それも彼ら自身の意志に拠るものならまだしも、金の力で、半ば強制的に、だ。不快に思うのは当然だろう? いかに人の心が無いプログラムと言えどな」
「う」
耳が痛い。いろんな意味で。俺だって似たようなことやろうとしてたんだし。
「で、でも、それじゃなおさら、なんで俺なんだよ」
「どういうことだ」
「だってお前が俺に協力したら、今度は俺が、その、弄ぶ……ことになっちゃうんじゃねーの。俺がみんなに惚れられて、ハ、ハーレムなんか作っちゃったりしたら」
「お前が?」
ジルコンは振り向いて眉を上げ、口を歪めて、はん、と鼻で笑った。
「……お前が??」
……ムカつく!!
静まり返った部屋の中。ベッドの上に仁王立ちした俺in荒縄と、あごをずり落としたまま目を丸くしているジルコンは、真っ向から視線をぶつからせて対峙していた。
キラキラ王子vs無課金アバターライク俺。圧がすげえ。でも引かねえぞ、俺は。このコンプラ丸無視前時代的王子にどんな嫌がらせをされたって、欲望のままに生きてやると決めたんだ!!
やがて。
「……クッ」
ついた肘を肘掛けから下ろして、ジルコンは喉の奥から笑いを漏らす。ついついビクッと警戒してしまう自分が悲しい。ま、負けねえぞ!
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でも俺はそんなことでしょぼくれはしない。強がりだろうと虚勢だろうと、もう引っ込みはつかないし、つけない。前世と同じひとりぼっちはもう、ごめんだ。
無言でせいいっぱい胸を張る俺に、ジルコンは目を細めて口端を釣り上げた。
「ククッ。まあ、そうなるだろうな」
「だ、だからって!」
「協力してやる」
「は?」
「俺が協力してやる。と言ったら、お前、どうする」
「……はあ?」
だしぬけな提案の意味がわからず、耳とジルコンの両方を同時に疑った。だがどうやら耳は正常みたいだし、ジルコンはさっきと打って変わった大真面目な顔で俺を見上げている。
「なんだよ、協力って」
「イベントフラグの管理や必須パラメーターの調整は、俺の権限である程度はどうにかできる。膳立てはしてやる。後はお前次第だ」
「いや、そうじゃなくて……なんで急にそんなこと言い出したのか、意味わかんねーんだけど」
「……」
偉そうに組んだ足を外して、ジルコンは椅子から立ち上がった。窓に立ち、カーテンを開けて目を向けたのは、視界をふさぐ円形の中央棟……ではなく、多分、その先にある東棟。ミマの居室だ。
「さっきも言っただろう。俺は俺の懐刀たる騎士団が、私利私欲でいいように弄ばれかけているのが気に食わない」
「あ……」
「それも彼ら自身の意志に拠るものならまだしも、金の力で、半ば強制的に、だ。不快に思うのは当然だろう? いかに人の心が無いプログラムと言えどな」
「う」
耳が痛い。いろんな意味で。俺だって似たようなことやろうとしてたんだし。
「で、でも、それじゃなおさら、なんで俺なんだよ」
「どういうことだ」
「だってお前が俺に協力したら、今度は俺が、その、弄ぶ……ことになっちゃうんじゃねーの。俺がみんなに惚れられて、ハ、ハーレムなんか作っちゃったりしたら」
「お前が?」
ジルコンは振り向いて眉を上げ、口を歪めて、はん、と鼻で笑った。
「……お前が??」
……ムカつく!!
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