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34・賭け券一口100ジュエネル
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スクリーンの中のキラメキは次々に色を変えていく。騎士サマたちが繰り広げる醜態を、より鮮やかに刻み込もうとするかのように。
「うぅっ、帰してください、おうちに……おうちに帰してっ……」
「駄ぁ目、駄目だよぉ。くふふぅ、心配しなくても殺さないって。一週間後にはちゃぁんとおうちに帰してあげる。ただそれまでは色々と……観察させてねぇ」
「そんな……うっ、うっ」
「あぁ、そぉんな顔されると悲しくなっちゃうなぁ。ほら、スマイルスマイル。そもそもがキミのためにやってることじゃぁん?」
「ひっく……うぅっ」
「ほら。ねぇ……笑えよ」
「ひぅっ……」
紫のアメティスタはワイングラス片手に、檻の中に閉じ込められた少年をねっとりと眺めまわしていた。
「わんっ、わんわんッ! わおーんっ! はふっ、ハフハフっ! きゃうんっ!」
「うう、おいたわしや、ランジン様……」
「ちくしょう、この世には神も仏もあったもんじゃねえ……!」
水色のランジンは往来の真ん中で、四つん這いになって楽しげに犬の真似をしていた。
「さあさあ、皆さまお立ち合い! ここにおわす悲劇の美少年騎士、名はランジン! 勇猛果敢も過ぎたるは仇、戦火の中でおぞましき魔犬の呪いを受けしこの彼が、さりとてそれでも民を護らんと、今夜剣を交えるは憎き闇の獣ども!! 世紀の試合は本日五時より闘技場にて!! さあ張った張った、早くしないと締め切っちゃうぞ!!」
その横で黄色のトパシオは……あっ、こいつはこういう奴だって知ってるからいいです。
六者六様の醜態を、俺は口を開けたまま身じろぎもせず見つめ続けていた。約二名は普段とあんまり変わらなかったけど、それ以外の四人は、まさに裏の顔と呼ぶにふさわしい有り様だ。
「どうだ」
なぜか勝ち誇ったように問いかけながら、ジルコンは指輪をはめた手を下ろす。壁に映る光がすっと消え、俺はようやく我に帰った。
「な……んで。なんでこんなことすんだよ、お前……」
「は?」
精一杯首だけを持ち上げて、ジルコンの顔を睨み上げる。
「なんで俺にこんなもん見せんだよ! お前にこんなことされるいわれなんてねーだろ!!」
「言ったろ。嫉妬に狂った王子が、他の騎士を貶めるためのイベントだって」
「そうじゃなくて!! お前自身の意志を聞いてんだよ、俺は!!」
「……ほう」
ジルコンはちょっと驚いたように目を見開いた。細いけれど意外に無骨な指が、思案するように形のいいあごを撫でる。
「俺の意志か。そうだな。俺の剣であり盾である騎士たちが、私欲によって蹂躙されようとしているのが気に食わない、ってところだな」
「じゅ、蹂躙って……」
「事実だろ。調子こいてハーレムがどうとかほざいてたのはどこのどいつだ」
「うぐっ」
「だいたい」
ジルコンがまたも片手で、俺の体をうつ伏せに転がした。肩越しに彼の顔をふり仰ぐ。彫刻みたいに整った無表情の中に、またしても面白がっているような気配がうっすら滲んでいる。な、なんか、嫌な予感が。
「男同士でハーレムって、お前、実際どういうことかわかってるのか。自分がどんな立ち位置になるのかも含めてな」
「は? 何だよ、それ……ぅえっ!?」
疑問符を浮かべる暇もなく、反射的に体がびちっと跳ねた。きつく縛られた縄の隙間から、ジルコンの指が忍び込んできたからだ。
「うぅっ、帰してください、おうちに……おうちに帰してっ……」
「駄ぁ目、駄目だよぉ。くふふぅ、心配しなくても殺さないって。一週間後にはちゃぁんとおうちに帰してあげる。ただそれまでは色々と……観察させてねぇ」
「そんな……うっ、うっ」
「あぁ、そぉんな顔されると悲しくなっちゃうなぁ。ほら、スマイルスマイル。そもそもがキミのためにやってることじゃぁん?」
「ひっく……うぅっ」
「ほら。ねぇ……笑えよ」
「ひぅっ……」
紫のアメティスタはワイングラス片手に、檻の中に閉じ込められた少年をねっとりと眺めまわしていた。
「わんっ、わんわんッ! わおーんっ! はふっ、ハフハフっ! きゃうんっ!」
「うう、おいたわしや、ランジン様……」
「ちくしょう、この世には神も仏もあったもんじゃねえ……!」
水色のランジンは往来の真ん中で、四つん這いになって楽しげに犬の真似をしていた。
「さあさあ、皆さまお立ち合い! ここにおわす悲劇の美少年騎士、名はランジン! 勇猛果敢も過ぎたるは仇、戦火の中でおぞましき魔犬の呪いを受けしこの彼が、さりとてそれでも民を護らんと、今夜剣を交えるは憎き闇の獣ども!! 世紀の試合は本日五時より闘技場にて!! さあ張った張った、早くしないと締め切っちゃうぞ!!」
その横で黄色のトパシオは……あっ、こいつはこういう奴だって知ってるからいいです。
六者六様の醜態を、俺は口を開けたまま身じろぎもせず見つめ続けていた。約二名は普段とあんまり変わらなかったけど、それ以外の四人は、まさに裏の顔と呼ぶにふさわしい有り様だ。
「どうだ」
なぜか勝ち誇ったように問いかけながら、ジルコンは指輪をはめた手を下ろす。壁に映る光がすっと消え、俺はようやく我に帰った。
「な……んで。なんでこんなことすんだよ、お前……」
「は?」
精一杯首だけを持ち上げて、ジルコンの顔を睨み上げる。
「なんで俺にこんなもん見せんだよ! お前にこんなことされるいわれなんてねーだろ!!」
「言ったろ。嫉妬に狂った王子が、他の騎士を貶めるためのイベントだって」
「そうじゃなくて!! お前自身の意志を聞いてんだよ、俺は!!」
「……ほう」
ジルコンはちょっと驚いたように目を見開いた。細いけれど意外に無骨な指が、思案するように形のいいあごを撫でる。
「俺の意志か。そうだな。俺の剣であり盾である騎士たちが、私欲によって蹂躙されようとしているのが気に食わない、ってところだな」
「じゅ、蹂躙って……」
「事実だろ。調子こいてハーレムがどうとかほざいてたのはどこのどいつだ」
「うぐっ」
「だいたい」
ジルコンがまたも片手で、俺の体をうつ伏せに転がした。肩越しに彼の顔をふり仰ぐ。彫刻みたいに整った無表情の中に、またしても面白がっているような気配がうっすら滲んでいる。な、なんか、嫌な予感が。
「男同士でハーレムって、お前、実際どういうことかわかってるのか。自分がどんな立ち位置になるのかも含めてな」
「は? 何だよ、それ……ぅえっ!?」
疑問符を浮かべる暇もなく、反射的に体がびちっと跳ねた。きつく縛られた縄の隙間から、ジルコンの指が忍び込んできたからだ。
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