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25・NTRなのかなんなのか
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「すごいです、灯士さま! おれ、感動しちゃいましたよ!」
「ふふっ、ありがとうございます! みんなが僕を護ってくれたからですよ」
「初戦でこんなに成果を上げられるなんて、さっすがミマ。オレも君に賭けた甲斐があったよ」
遠くの方で、ミマたちがはしゃぐ声がする。物理的に距離が開いているから……と言うよりはむしろ、俺の気がどっかに遠のいているせいだろうか。まあ、距離自体も遠いんだけど。
(全然活躍できなかった……なんで? いや、マジ、マジでなんで?)
ぐるぐると頭の中で自問自答する。なんかの罰? またしても俺なんかやっちゃいました? いや、でも、心当たりなんか何もない。ちょっと前までの騎士サマたちは全員、俺にもちゃんと優しくしてくれていたはずなのに。
生気が抜けた顔でたたずむ俺に、ミマがまた一瞬だけ視線をよこす。口元が、例の「ふふっ♡」の形に歪んだ。可憐なはずのその仕草が、今はひどく悪意に満ちているように見えるのは、心が弱った俺の被害妄想だろうか。
一通り状況確認を終えたトパシオが俺の目の前を通り過ぎ、ミマの肩をぽんと叩く。
「さ、どうする、ミマ? 耀燈輝昇はやるかい?」
「ええ、もちろん」
ミマはにっこりとトパシオに笑いかけ、腰に下げた布袋を外して持ち上げた。じゃらりという音とともに、鮮やかな虹色の結晶が彼の手のひらに転がり出る。え、まさか、あれ課金石? なんでミマだけ持ってんの?
手のひらに築かれた小さな山から、ミマは小さめのひとかけらだけをつまみ上げ、残りを布袋に戻した。
「それじゃ、お願いします。今回は、サフィール様に」
「ああ。俺とミマとの初めて……だな。不束者だが、よろしく頼む」
「や、やだなあ、その言い方、なんか恥ずかしいですよぅ……ふふっ♡」
「? 緊張しているのか? 大丈夫だ、肩の力を抜くといい」
口元を両手で覆ったミマに向かって、サフィールが一歩距離を詰めた。指輪でもはめるみたいにうやうやしくミマの手を持ち上げ、自分の胸にそっと触れさせる。
「始めるぞ。……っ、は」
(……あ)
そっか。始まるのか、例のあの儀式が。自分でやるのも大概だったけど、今度はミマとサフィールのアレを見せつけられんのか。どんな顔して見てりゃいいんだろう、俺。
胸の中に、ぽっかりと穴が開いたみたいだ。嫉妬……いや、そんな感情を覚えるほど、俺はまだサフィールに思い入れがあるわけじゃない。胸を空しく吹き抜けるこの気持ちの正体は、たぶん、疎外感だ。前世で嫌と言うほど覚えのある、今世じゃもう味わわなくて済むと思っていた気持ち。
目を逸らそうかとも思ったけれど、それより前に、またしてもミマが俺を見ていることに気が付いた。その手の中には、クリスタルガラスのシェードに覆われたランプが一灯。いくつものサファイアと、深い青色の炎を宿したそのランプは、どう見てもサフィールのものだ。
「じゃあ、行きますね、サフィール様」
「ああ。……く……っ!」
中央の、星状に白線が走る大きなサファイアを、ミマの細い指がするりと撫でた。サフィールの眉間にしわが寄り、唇から低い声がこぼれ始める。
「サフィール様……あっ、こう……これでいい、ですか?」
「はっ、あ、ああ……。……はは、良いな……、貴方の指は……温かい、な、……っ」
「ふふっ♡ 嬉しい……ねえ、お願い、サフィール様……もっと僕を、僕だけを感じて……っ」
ミマの手が速度を増し、指先が蛇のようにランプに絡みつく。サフィールはわずかに胸を反らして、更に感極まったような声を上げている。……うん、改めて客観的に見ると、なんかその、ほんと、なんと言ったらいいか。
「……っ、ミマ、はぁっ……俺、俺の名を呼んでくれっ、ミマ……っ!」
「うん、いいよ、サフィール様……サフィール様……っ!!」
「っは、ミマ、ミマ……っ! くぅあ……っ!!」
頭を振ったサフィールの髪の毛が揺れる。揺れる炎の濃紺色を反射して、額からきらきらと汗が飛び散る。
「は、ぁ……っ」
「サフィール様……よかった、ですか?」
「……ああ。最高だ、貴方は……」
「……ふふっ♡」
何やら満足げに息を吐くサフィールを見届けて、ミマは再び、嘲笑うような顔で俺を見たけれど。
「……あっ、ハイ。うん。お疲れ」
……ごめん、これは嫉妬とか疎外感とかいう問題じゃねーわ。俺いま純粋に困惑してるわ。
ある意味冷静になれたと言うか、救われたっちゃ救われたかもしれない。別の種類の混乱は押し寄せてきたけど。
「ふふっ、ありがとうございます! みんなが僕を護ってくれたからですよ」
「初戦でこんなに成果を上げられるなんて、さっすがミマ。オレも君に賭けた甲斐があったよ」
遠くの方で、ミマたちがはしゃぐ声がする。物理的に距離が開いているから……と言うよりはむしろ、俺の気がどっかに遠のいているせいだろうか。まあ、距離自体も遠いんだけど。
(全然活躍できなかった……なんで? いや、マジ、マジでなんで?)
ぐるぐると頭の中で自問自答する。なんかの罰? またしても俺なんかやっちゃいました? いや、でも、心当たりなんか何もない。ちょっと前までの騎士サマたちは全員、俺にもちゃんと優しくしてくれていたはずなのに。
生気が抜けた顔でたたずむ俺に、ミマがまた一瞬だけ視線をよこす。口元が、例の「ふふっ♡」の形に歪んだ。可憐なはずのその仕草が、今はひどく悪意に満ちているように見えるのは、心が弱った俺の被害妄想だろうか。
一通り状況確認を終えたトパシオが俺の目の前を通り過ぎ、ミマの肩をぽんと叩く。
「さ、どうする、ミマ? 耀燈輝昇はやるかい?」
「ええ、もちろん」
ミマはにっこりとトパシオに笑いかけ、腰に下げた布袋を外して持ち上げた。じゃらりという音とともに、鮮やかな虹色の結晶が彼の手のひらに転がり出る。え、まさか、あれ課金石? なんでミマだけ持ってんの?
手のひらに築かれた小さな山から、ミマは小さめのひとかけらだけをつまみ上げ、残りを布袋に戻した。
「それじゃ、お願いします。今回は、サフィール様に」
「ああ。俺とミマとの初めて……だな。不束者だが、よろしく頼む」
「や、やだなあ、その言い方、なんか恥ずかしいですよぅ……ふふっ♡」
「? 緊張しているのか? 大丈夫だ、肩の力を抜くといい」
口元を両手で覆ったミマに向かって、サフィールが一歩距離を詰めた。指輪でもはめるみたいにうやうやしくミマの手を持ち上げ、自分の胸にそっと触れさせる。
「始めるぞ。……っ、は」
(……あ)
そっか。始まるのか、例のあの儀式が。自分でやるのも大概だったけど、今度はミマとサフィールのアレを見せつけられんのか。どんな顔して見てりゃいいんだろう、俺。
胸の中に、ぽっかりと穴が開いたみたいだ。嫉妬……いや、そんな感情を覚えるほど、俺はまだサフィールに思い入れがあるわけじゃない。胸を空しく吹き抜けるこの気持ちの正体は、たぶん、疎外感だ。前世で嫌と言うほど覚えのある、今世じゃもう味わわなくて済むと思っていた気持ち。
目を逸らそうかとも思ったけれど、それより前に、またしてもミマが俺を見ていることに気が付いた。その手の中には、クリスタルガラスのシェードに覆われたランプが一灯。いくつものサファイアと、深い青色の炎を宿したそのランプは、どう見てもサフィールのものだ。
「じゃあ、行きますね、サフィール様」
「ああ。……く……っ!」
中央の、星状に白線が走る大きなサファイアを、ミマの細い指がするりと撫でた。サフィールの眉間にしわが寄り、唇から低い声がこぼれ始める。
「サフィール様……あっ、こう……これでいい、ですか?」
「はっ、あ、ああ……。……はは、良いな……、貴方の指は……温かい、な、……っ」
「ふふっ♡ 嬉しい……ねえ、お願い、サフィール様……もっと僕を、僕だけを感じて……っ」
ミマの手が速度を増し、指先が蛇のようにランプに絡みつく。サフィールはわずかに胸を反らして、更に感極まったような声を上げている。……うん、改めて客観的に見ると、なんかその、ほんと、なんと言ったらいいか。
「……っ、ミマ、はぁっ……俺、俺の名を呼んでくれっ、ミマ……っ!」
「うん、いいよ、サフィール様……サフィール様……っ!!」
「っは、ミマ、ミマ……っ! くぅあ……っ!!」
頭を振ったサフィールの髪の毛が揺れる。揺れる炎の濃紺色を反射して、額からきらきらと汗が飛び散る。
「は、ぁ……っ」
「サフィール様……よかった、ですか?」
「……ああ。最高だ、貴方は……」
「……ふふっ♡」
何やら満足げに息を吐くサフィールを見届けて、ミマは再び、嘲笑うような顔で俺を見たけれど。
「……あっ、ハイ。うん。お疲れ」
……ごめん、これは嫉妬とか疎外感とかいう問題じゃねーわ。俺いま純粋に困惑してるわ。
ある意味冷静になれたと言うか、救われたっちゃ救われたかもしれない。別の種類の混乱は押し寄せてきたけど。
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