転生したらBLゲーの負け犬ライバルでしたが現代社会に疲れ果てた陰キャオタクの俺はこの際男相手でもいいからとにかくチヤホヤされたいっ!

スイセイ

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17・メタ発言はシステムの代理

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「ではチュー太郎様、そろそろ今後のスケジュールを決めていただいてもよろしいですか」
「……ん? あ、そうだそうだ、ごめんごめん」

 ソファに身を預けて、久々(と言っても実質一日ぶりだが、普段の頻度から比べると雲泥の差だ)のネットに耽溺する俺を、ジルコンはしばらく横から見守ったあとで声を掛けてきた。態度は丁寧なままだが、さすがにしびれを切らした感が否めない。ごめんて。

「つーか、今更言い出すのもなんだけど、ジルコンも座ってくれよ。そこ立ってられると落ち着かねーよ」
「いえ。そういうわけには参りません」
「出たよ、執事キャラ。いいじゃん、俺がいいっつってんだから」
「勿体ないお言葉でございます」

 頭を下げつつも、足は一歩たりともその場から動かない。マジで座って欲しいんだけどな。気遣いとかそういうこと以前に、ソファの斜め後ろに立たれてスマホ覗き見られてるこの状況がキツい。おちおちえっちなサイトも覗けないじゃないですか。でもこれ以上言ったところで聞きゃしないんだろうな。ひとつため息をついて、せめて俺の方も背筋を伸ばす。

「えーっと、スケジュールって? それ以前に俺、明日から何すんの?」
「はい。灯士の皆様には明日みょうにちより、スキアの討伐と、討伐に備えた訓練を行っていただくことになります」
「ふむふむ」
「週の初めに共に訓練を行うパートナーを選択し、月の曜日から金の曜日まではパートナーに応じた集中訓練、土の曜日にスキアの討伐。日の曜日は休息日。と、このようなサイクルで行動を決定していただきます。もちろん、スキアの動向によってはこちらも随時対応する必要がありますが」
「週休一日かー。まあ、そこは前世まえとあんま変わんねーかな」
「選択したパートナーによって、上昇するパラメーターが変化いたします」
「お、メタ発言」
「ルビーノならば武力、サフィールならば魔力。スマラクトは知力、アメティスタは魅力、トパシオは財力、ランジンは気力が上昇する、と言った具合ですね。絆を深めたい相手を選択するか、成長させたいパラメーターを重視するか。よくお考えの上でスケジュールをお決めください」

 俺の混ぜっ返しにはぴくりとも動じずに、ジルコンは流れるように説明を終えた。うーん、背後にシステムの存在を感じる。

「あれ? あんたは?」
「私、でございますか?」
「うん。あんたも騎士なんだろ? スマラクトが言ってたよ」
「ああ、もうご存知でしたか。私は……そうですね。寮の仕事がございますので、訓練をご一緒できるわけではないのですが……灯士様が休息を望まれる際には、いつでも寮でお待ちしておりますよ」
「お休み担当、ってこと?」
「そうなります」
「ふーん」

 なるほどねー。こいつを攻略したけりゃ、休みばっかり取ることになるってわけか。始めのうちはちょっと難易度高そうだな。やっぱ特別ポジションのキャラだからか。王子だし……いや、ガチで王子かどうかはまだ保留にしとくけどさ、一応。

「まあ、初めのうちは気楽に決めていただいても問題はございません。では、今週のスケジュールを伺います」
「えっと、パートナーを選べばいいんだよな?」
「はい。いかがなさいますか?」
「んー……」

 ソファの背もたれに頭を預けて天井を仰ぐ。どうしよっかなあ。初手ジルコン選んでニート生活、ってのも悪くはないけど、それで死んだら元も子もねえし。パラ上げのセオリー的に言うなら、やっぱり最初は攻撃力からかなあ。ってことは武力……ルビーノか。まあ選択肢的にも一番上だし、無難なとこかな。

「じゃ、ルビーノで」
「かしこまりました。そのように手配しておきます」
「ん。よろしくー」
「この後はどうされますか。儀式と訓練でお疲れでしょう、少しお休みになりますか」
「うーん、そうね。じゃあちょっと寝よっかな」
「かしこまりました。ベッドは整えてありますので、二階でお休みください。夕食の際にお呼びいたします」
「うん、ありがとう。おやすみー」

 また深々と頭を下げて、ジルコンは扉の向こうへ去っていった。一人になると急に疲労を実感し始める。早く上行こう。あ、でも、もうちょっとだけネットしよう。動画までは見れるの確認したけど、アプリはどうかな。さすがに駄目かなあ。ああ、血涙もんだ。いくら最近のジュエぷりが虚無だとはいえ、動画勢に移行するのはさすがにダイアちゃんのマスター失格だろうなあ。待てよ、たしかネットの噂で、ジュエぷりのブラウザ版が開発中だって耳にしたような。まずはそれを調べてみて、それから……



 二時間後。

「失礼致します、チュー太郎様。お食事の準備が……おや」
「……あっ」

 呼びに来たジルコンと目が合ったのは、案内板片手にソファに座ったままの俺だった。

「お食事の準備が整いました。ご都合がよろしければ、食堂へとおいでくださいませ」
「……ハイ……」

 何も触れずに話を進めるジルコンの気遣いが、余計気まずかったのは言うまでもない。
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