転生したらBLゲーの負け犬ライバルでしたが現代社会に疲れ果てた陰キャオタクの俺はこの際男相手でもいいからとにかくチヤホヤされたいっ!

スイセイ

文字の大きさ
上 下
14 / 200

12・運命の出逢い

しおりを挟む
『お知らせ』

 掲示板の上部には、ただ一語、そう彫り込まれていた。板面にはいくつかの文章が表示されている。内容はいわゆる「運営からのお知らせ」ってやつだ。イベント開催のお知らせ。不具合のお詫び。コラボのお知らせ。不具合のお詫び。不具合の補填について。不具合のお詫び。不具合多すぎだろってのはもはやここのデフォだからいいとして、問題はその中に混じったひとつ。

『宝石騎士×ジュエぷりコラボ記念・リツイートキャンペーン開催! 詳細はこちらから→https://www...』

「いや……ま、まさか、そんな……なあ?」

 信じたい気持ちと疑心のはざまで半笑いを浮かべつつ、だが視線は文面に張りついて剥がれない。常識的に考えてありえない。ありえないけれど、もし、もしも、そうだとしたら、俺は。

 しばらく躊躇してから、アドレスの書いてある部分に手を伸ばす。白塗りの板に触れた手は、自覚できるくらいに震えていた。

 瞬間。掲示板に書かれていた文字が、溶けるようにかき消えた。上部の『お知らせ』が、カリカリと音を立てながら姿を変えてゆく。https://www...、要は、さっき表示されていたアドレスだ。

「……っ、まさか……っ!!」

 真っ白になった板面に、じんわりと文字が浮かび上がる。コラボのお知らせ、from 宝石騎士公式ホームページ。ホームページ、つまり。

「Internetッッ!!!!」
「うわっ」

 両こぶしを掲げて叫ぶと、隣にいたミマがびくりと肩を震わせた。構わず掲示板に飛びついて頬をすりつける。俺の頬が上下するのに合わせて、掲示板の文字もスクロールするように上下した。つまり、ブラウザだ。つまりこれは、This is、インターネットだ。

「ああ、マジで、マッジで夢じゃないんだな、こんなところでお前に会えるなんてぇっ」
「あの……チュー君?」
「あれ、俺泣いてる? ヘヘッ、おかしいな、嬉しいのにな、こんなときはちゃんと笑わなきゃな、ふへっ、ふへへへへっ」
「……」

 ミマが壊れたおもちゃを見るような視線で俺を見ているが、構っちゃいられない。ああ、インターネット。俺の生命線のひとつであり、世界との数少ない窓口だったインターネット。こんな中世風異世界でお前と再会できるなんて、まさに奇跡としか言いようがない。生き別れになった家族と再会したような気分だ。いや、正直リアルに母ちゃんと再会してもここまで嬉しくはならないかもしれない。ごめん母ちゃん。

「ああ、持って帰りてえ、部屋に持って帰りてえー! 誰か俺にバールのようなものをくれ、この掲示板を剥がさせろ!!」
「入寮初手で備品を破壊するのはご遠慮ください、灯士様」
「うるさい! お前なんかに俺の気持ちが、……ん?」

 反射で吠え返したのち、声の主がミマではないことに気がついた。掲示板から頬を引き剥がして声の元を辿る。いつの間にか、って言うかいつも何も俺がインターネットに狂喜してる間しかないだろうけど、とにかく寮入り口の玄関ポーチに、背の高い男性が立っている。

「案内板は灯士様方の個室にも備え付けてあります。入り口の掲示板と同等の機能が用意されておりますよ」
「マジで!? やったー!! ……あっ」

 とりあえず一回喜びを表現してから、俺はその男性に目を奪われる。涼やかで少し低い声。真っ白な軍服に身を包み、胸に片手を当てたスマートな立ち姿、そして。

「初めまして。わたくしは灯士様方のコンシェルジュを務めます、ジルコンと申します」

 さっき塔の上で見たのと同じ、プリズムをまとった髪の毛が、丘の上を渡る風にふわりとなびいた。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~

シキ
BL
全寮制学園モノBL。 倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。 倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……? 真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。 一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。 こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。 今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。 当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

処理中です...