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12・運命の出逢い
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『お知らせ』
掲示板の上部には、ただ一語、そう彫り込まれていた。板面にはいくつかの文章が表示されている。内容はいわゆる「運営からのお知らせ」ってやつだ。イベント開催のお知らせ。不具合のお詫び。コラボのお知らせ。不具合のお詫び。不具合の補填について。不具合のお詫び。不具合多すぎだろってのはもはやここのデフォだからいいとして、問題はその中に混じったひとつ。
『宝石騎士×ジュエぷりコラボ記念・リツイートキャンペーン開催! 詳細はこちらから→https://www...』
「いや……ま、まさか、そんな……なあ?」
信じたい気持ちと疑心のはざまで半笑いを浮かべつつ、だが視線は文面に張りついて剥がれない。常識的に考えてありえない。ありえないけれど、もし、もしも、そうだとしたら、俺は。
しばらく躊躇してから、アドレスの書いてある部分に手を伸ばす。白塗りの板に触れた手は、自覚できるくらいに震えていた。
瞬間。掲示板に書かれていた文字が、溶けるようにかき消えた。上部の『お知らせ』が、カリカリと音を立てながら姿を変えてゆく。https://www...、要は、さっき表示されていたアドレスだ。
「……っ、まさか……っ!!」
真っ白になった板面に、じんわりと文字が浮かび上がる。コラボのお知らせ、from 宝石騎士公式ホームページ。ホームページ、つまり。
「Internetッッ!!!!」
「うわっ」
両こぶしを掲げて叫ぶと、隣にいたミマがびくりと肩を震わせた。構わず掲示板に飛びついて頬をすりつける。俺の頬が上下するのに合わせて、掲示板の文字もスクロールするように上下した。つまり、ブラウザだ。つまりこれは、This is、インターネットだ。
「ああ、マジで、マッジで夢じゃないんだな、こんなところでお前に会えるなんてぇっ」
「あの……チュー君?」
「あれ、俺泣いてる? ヘヘッ、おかしいな、嬉しいのにな、こんなときはちゃんと笑わなきゃな、ふへっ、ふへへへへっ」
「……」
ミマが壊れたおもちゃを見るような視線で俺を見ているが、構っちゃいられない。ああ、インターネット。俺の生命線のひとつであり、世界との数少ない窓口だったインターネット。こんな中世風異世界でお前と再会できるなんて、まさに奇跡としか言いようがない。生き別れになった家族と再会したような気分だ。いや、正直リアルに母ちゃんと再会してもここまで嬉しくはならないかもしれない。ごめん母ちゃん。
「ああ、持って帰りてえ、部屋に持って帰りてえー! 誰か俺にバールのようなものをくれ、この掲示板を剥がさせろ!!」
「入寮初手で備品を破壊するのはご遠慮ください、灯士様」
「うるさい! お前なんかに俺の気持ちが、……ん?」
反射で吠え返したのち、声の主がミマではないことに気がついた。掲示板から頬を引き剥がして声の元を辿る。いつの間にか、って言うかいつも何も俺がインターネットに狂喜してる間しかないだろうけど、とにかく寮入り口の玄関ポーチに、背の高い男性が立っている。
「案内板は灯士様方の個室にも備え付けてあります。入り口の掲示板と同等の機能が用意されておりますよ」
「マジで!? やったー!! ……あっ」
とりあえず一回喜びを表現してから、俺はその男性に目を奪われる。涼やかで少し低い声。真っ白な軍服に身を包み、胸に片手を当てたスマートな立ち姿、そして。
「初めまして。私は灯士様方のコンシェルジュを務めます、ジルコンと申します」
さっき塔の上で見たのと同じ、プリズムをまとった髪の毛が、丘の上を渡る風にふわりとなびいた。
掲示板の上部には、ただ一語、そう彫り込まれていた。板面にはいくつかの文章が表示されている。内容はいわゆる「運営からのお知らせ」ってやつだ。イベント開催のお知らせ。不具合のお詫び。コラボのお知らせ。不具合のお詫び。不具合の補填について。不具合のお詫び。不具合多すぎだろってのはもはやここのデフォだからいいとして、問題はその中に混じったひとつ。
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「いや……ま、まさか、そんな……なあ?」
信じたい気持ちと疑心のはざまで半笑いを浮かべつつ、だが視線は文面に張りついて剥がれない。常識的に考えてありえない。ありえないけれど、もし、もしも、そうだとしたら、俺は。
しばらく躊躇してから、アドレスの書いてある部分に手を伸ばす。白塗りの板に触れた手は、自覚できるくらいに震えていた。
瞬間。掲示板に書かれていた文字が、溶けるようにかき消えた。上部の『お知らせ』が、カリカリと音を立てながら姿を変えてゆく。https://www...、要は、さっき表示されていたアドレスだ。
「……っ、まさか……っ!!」
真っ白になった板面に、じんわりと文字が浮かび上がる。コラボのお知らせ、from 宝石騎士公式ホームページ。ホームページ、つまり。
「Internetッッ!!!!」
「うわっ」
両こぶしを掲げて叫ぶと、隣にいたミマがびくりと肩を震わせた。構わず掲示板に飛びついて頬をすりつける。俺の頬が上下するのに合わせて、掲示板の文字もスクロールするように上下した。つまり、ブラウザだ。つまりこれは、This is、インターネットだ。
「ああ、マジで、マッジで夢じゃないんだな、こんなところでお前に会えるなんてぇっ」
「あの……チュー君?」
「あれ、俺泣いてる? ヘヘッ、おかしいな、嬉しいのにな、こんなときはちゃんと笑わなきゃな、ふへっ、ふへへへへっ」
「……」
ミマが壊れたおもちゃを見るような視線で俺を見ているが、構っちゃいられない。ああ、インターネット。俺の生命線のひとつであり、世界との数少ない窓口だったインターネット。こんな中世風異世界でお前と再会できるなんて、まさに奇跡としか言いようがない。生き別れになった家族と再会したような気分だ。いや、正直リアルに母ちゃんと再会してもここまで嬉しくはならないかもしれない。ごめん母ちゃん。
「ああ、持って帰りてえ、部屋に持って帰りてえー! 誰か俺にバールのようなものをくれ、この掲示板を剥がさせろ!!」
「入寮初手で備品を破壊するのはご遠慮ください、灯士様」
「うるさい! お前なんかに俺の気持ちが、……ん?」
反射で吠え返したのち、声の主がミマではないことに気がついた。掲示板から頬を引き剥がして声の元を辿る。いつの間にか、って言うかいつも何も俺がインターネットに狂喜してる間しかないだろうけど、とにかく寮入り口の玄関ポーチに、背の高い男性が立っている。
「案内板は灯士様方の個室にも備え付けてあります。入り口の掲示板と同等の機能が用意されておりますよ」
「マジで!? やったー!! ……あっ」
とりあえず一回喜びを表現してから、俺はその男性に目を奪われる。涼やかで少し低い声。真っ白な軍服に身を包み、胸に片手を当てたスマートな立ち姿、そして。
「初めまして。私は灯士様方のコンシェルジュを務めます、ジルコンと申します」
さっき塔の上で見たのと同じ、プリズムをまとった髪の毛が、丘の上を渡る風にふわりとなびいた。
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