転生したらBLゲーの負け犬ライバルでしたが現代社会に疲れ果てた陰キャオタクの俺はこの際男相手でもいいからとにかくチヤホヤされたいっ!

スイセイ

文字の大きさ
上 下
11 / 200

9・乗ってなんぼの車と調子

しおりを挟む
 ま、需要不明のサービスシーンはともかく。なんのかんの言っても、初めてにしてはかなりいい感じでやれたんじゃない、俺? やっぱ音ゲーの経験が生きてた説あるな。現代ゲームスキルで異世界無双も夢じゃない、ってか? やー、これから俺の人生楽しくなりそう!

「ふふふ~ふきーせきを、僕に~ふふふ~ん、っと……」

 うっかり鼻歌なんかも飛び出てしまう。辺りを見回せば視界の隅に、みんなから少し外れた位置に立っているミマが見えた。なんだなんだ、今度はそっちが壁の花か~? 俺ばっかいいとこ持ってっちゃった~? うふふ。
 しょうがねえ、今度は俺が手を差し伸べてやるとするか。ミマには色々教えてもらった恩もあるしな。軽く手を上げながら歩み寄る。

「よっ、見てたー? どうだった俺? なかなかだったっしょ?」
「見てたよ。すごいね、初めてなのに、前半はともかく後半はしっかりついていけてた」
「でっしょー!? 騎士サマ方も優しくしてくれたし、このゲーム案外チョロいんじゃね? なんつって舐めたこと言ってみたりして!!」
「……そうだね。騎士の皆様はお優しいから」
「いやーでも、思いのほか悪くないもんだね! BLゲームってのもね! このままハーレム? 逆ハー? 目指しちゃおっかなーなんつって! なははははは!」
「……」

 調子に乗りまくって胸を張る俺とは対照的に、ミマはあからさまに口数が少ない。伏せた長いまつ毛の下で、淡いクリーム色の瞳が揺れている。

「あれーミマ、もしかして不安なってる? だいじょーぶだいじょーぶ、これからは俺がサポートしてやっから!」
「……そうだね。次は僕の演習だから、不安と言えば不安なのかもね」
「あ、そっか、ミマもやるんだっけ? 頑張ってこいよ! 最初だしどんどんミスってけ!」
「……うん、ありがとう。ねえ、チュー君、ひとつお願いがあるんだけど」
「うん?」
「僕の演習、あんまり見ないで欲しいんだ。チュー君にダメなとこ見られるの、恥ずかしいから」
「えー? まあでも、そうね、わかったよ」

 そんなん気にしなくていいのに、と言いかけたけどやめておく。最初はみんな下手で当たり前だけど、失敗を直視されるのもそれはそれで辛いもんだ。特に俺くらいの、そこそこできちゃう人が相手だと、余計にな。

「じゃあ俺、そのへんウロウロしてっから。終わるころにまた戻ってくるわ」
「うん。それじゃ、またあとで」

 手を振るミマに別れを告げ、回廊の方へと歩き出す。勝手にうろついたらまずいだろうか。でも中庭を出るなとは言われてないし、見える範囲をぶらつくぐらいはいいだろう。ヒマだし。
 中庭の周辺に沿うように、あてもなくうろつき始める。刈り込まれた生垣に阻まれて、ミマたちの様子は見えない。時折剣や魔法っぽい音と、騎士サマたちの声がうっすらと聞こえる。ミマもさっきの俺みたいに優しくされてんのかな。いいなー。

「しかし……改めて見るとなんか、豪華絢爛な大宮殿、って感じではないんだな」

 誰もいないのをいいことに、失礼な感想をひとりごちる。謁見の広間の豪華さとは裏腹に、中庭から見渡す城の様子は、正直な話そこまできらびやかには感じられない。石造りの城にはもちろんそれなりの風格はあるけれど、宝石で飾り立てられているわけでも、見上げるばかりの大きさってわけでもない。どちらかと言えば堅牢そうな、実用に徹したつくりのようにすら見える。そう言えばオープニングで百年戦争がどうとか言ってたっけ。今は終結してるはずだけど、そのへんの歴史が関係してるのかもしれない。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

「頭をなでてほしい」と、部下に要求された騎士団長の苦悩

ゆらり
BL
「頭をなでてほしい」と、人外レベルに強い無表情な新人騎士に要求されて、断り切れずに頭を撫で回したあげくに、深淵にはまり込んでしまう騎士団長のお話。リハビリ自家発電小説。一話完結です。 ※現在、加筆修正中です。投稿当日と比較して内容に改変がありますが、ご了承ください。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

処理中です...