転生したらBLゲーの負け犬ライバルでしたが現代社会に疲れ果てた陰キャオタクの俺はこの際男相手でもいいからとにかくチヤホヤされたいっ!

スイセイ

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8・宝石騎士は年齢別レーティング:12+のゲームです

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 複雑な気持ちになる俺をよそに、俺をすっぽり包み込むサイズの影が歩み出る。顔を上げれば、ルビーノが俺の眼前に仁王立ちしていた。右手にはトパシオから受け取ったカンテラが携えられている。なんだ、相手を選べるわけじゃないのか。まあチュートリアルならしょうがないか。

「始めるぜ。まずはオレの胸に手を当てるんだ」
「あ、えと、こう?」
「ああ。……んっ」
「……ん?」

 ルビーノの眉間にわずかにシワが寄り、微かな吐息が唇からこぼれる。なんかちょっと、ちょっとだけ違和感。きょろきょろとあたりを見回すと、残りの五人はなぜか各々、不自然に俺たちから目を逸らしているように見える。アメティスタなんかわざとらしく口笛まで吹いてるし。なんで?

「っは……見えるか、灯士様。これがオレたちのランプだ」
「え、ああ。……うわ、すげー」

 言われてルビーノの胸に向き直る。広い胸板と当てた手の間から、押し出されるようにランプが生まれてくる。透かし彫りのランプシェードに、真っ赤な炎を宿したそれは、やがて俺の手とルビーノの胸を繋ぐ位置にふわりと浮かび上がった。

「ほぇー……」

 目を凝らし、まじまじと観察してみる。錆びたような黄金色の、おそらく真鍮製っぽいアンティーク調のシェードには、大粒小粒いくつものルビーがひしめき合っている。中でも中心にあるクルミ大の一粒は、まるで噴き出たばかりの血のように鮮やかな深紅の色だ。現代だったらこんなもん、どこぞの美術館でしかお目にかかれないだろう。売ったらいくらになるんかな。ちょっと見当もつかない。

「シェードに触れてくれ。大丈夫、熱くはないはずだ」
「あ、ほんとだ」
「……っ、そう……そのまま、中央のルビーを擦り上げるんだ」

 ルビーノは息を詰め、わずかに眉を寄せている。なんかどうもさっきから微妙に反応が気になるが、言われた通りに手を動かしてみる。大粒のルビーがほんの少しだけ熱を持ち、カンテラに宿った炎が赤色に染まり始めた。

「っは……そう、もっとだ……っく、もっと……っ」
「お、おお? こう?」
「はぁ……っ!」
「……」

 上下にルビーを擦るたび、手の中の熱が脈打つように増していく。漏れ聞こえる喘ぎ。苦悶にも、それ以外の何かにも見えるルビーノの表情。なんの暗喩だ。俺なにさせられてんの? ひょっとしてこれサービスシーンなのか?

「……っ、灯……っ、灯士様ッ……もう少し、もう少しだっ……!」
「ハイ」
「はっ、あ……、……くっ、上手だ……いい子だ、灯士様……チュー太郎ッ……!」
「ハイ」
「くあっ……、……っはぁ……っ!!」

 ルビーの熱が頂点に達した瞬間、ルビーノが一際高い声を上げる。同時にカンテラの中からスキアが飛び出し、ポンッ! と音を立ててランプの中に収まった。ランプの炎がぼうっと燃え盛る。中央のルビーの輝きが、心なしかさらに増したように見えた。

「……っは……、よくやった、灯士様。……よかったぜ」
「ハイ」
「これが耀燈輝昇ランプ・アセンシアだ。理解してもらえたか?」
「ハイ……」

 何やら頬を染めているルビーノよりも、俺の方が賢者モードで粛々と答える。課金かあ、これが。……そっかあ。この手のゲームの魅力をだんだん理解できるようになってきた俺ではあったが、ごめん、これは俺、ちょっとわかんないです。
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