上 下
7 / 19

7話 復讐の連鎖

しおりを挟む

 「達也くん!!聞きたい事があります!!」

 家帰り早々に瑠衣からの質問攻めに合っていた。

 「は、はい!なんでしょうか!」

 達也も瑠衣の気迫に押され背筋が伸びている。

 「何であんなに歌えて踊れるの!?本当に知らなかったの!?それとも、私に嘘をついていたの!?」

 瑠衣の目は血走っていた。
 それを見た達也は、これは冗談じゃないな。と思い、真面目に答えることにした。

 「その、本当に何も覚えてなくて。あの時、できたのが自分でも怖いぐらいで……」

 瑠衣は、達也の言葉に嘘を感じられなかった。
 そもそも、嘘ではなく本当だからなのだが。

 「なにそれ……まるで、生まれ変わったみたいな言い方するのね。まぁ、ここで何を言っても変わらないことわ、分かってるわ。だから、約束して!!そんなに嘘はつかないって!」

 ーーん?いま、そんなにって言わなかった?この流れで、そんなに嘘をつかないでって言うか?

 「えっと……そんなに?」

 「えぇ、そうよ。だって、絶対に!って言葉が、そもそも嘘みたいなもんでしょ?絶対にできることなんて、限りなくないし、その場を乗り切るための都合のいい言葉だと思うのよね。それなら、絶対って言うよりそんなにって言った方が、現実味があると思うのよね。あ、でも嘘をついて良いとは言ってないから。どうしても隠したい事があって、それを伝えられない時の嘘は必要だからね。嘘も方便って言うでしょ?」

 ーーいつも、思考を読まれてるんじゃないか?って思うほど、痛いところをついてくるな……もしかして、心を読むスキルを持ってたりしてね。ま、そんなことないか。
 
 「うふふ」

 「ん?何で急に笑ったんですか」

 「んん、困ってる君を見てたら何故か笑えてきてね。さぁ、これで約束もしたし、今日はご飯食べて明日に備えよう!」

 「え?明日もどこか行くんですか?」

 「当たり前でしょ!明日は、実際にうちで働いてるアイドルグループに会いに行くわよ!先輩たちの動きや、裏側も観れるから結構面白いと思うわよ?」

 「あはは、それは……すごく、楽しみですね……」

 達也は、瑠衣に見えないようにニヤリと笑っていた。


 次の日。
 達也は瑠衣の会社である『プリンス・ロード』に訪れていた。
 中には、最近有名になった『テラリック』と呼ばれている、女性アイドルグループがいた。

 「どう達也くん!ここが私の職場よ!!」

 「す、すごいです……可愛い人ばかりだ」

 「でしょ~って、私も可愛いでしょうが!!そお言うところ、まだまだね」

 瑠衣は、ぷりぷりしながらアイドルグループの中へ入っていった。
 すると、その中から1人の女性を連れてきた。

 「達也くん、彼女がリーダーの『ネム』よ」

 達也の前には、これがアイドルだ。と、納得できる女の子が来た。
 髪は、明るい茶色のツインテールを下げ、瞳は吸い込まれそうになる程、大きく薄い青色をしていた。
 その全てのパーツが黄金比で作られた顔は可愛いと言わざるを得なかった。


 「可愛い……あ、あ、初めまして!!あ、あ、天野 達也っていいます。ね、ネムさん!」

 達也は緊張しすぎて、本音がポロリと出て、さらにカチカチになっていた。
 そんな達也を少し面白そうにネムが見ていた。

 「あはは。初めまして、私がテラリックのリーダー ネムよ。よろしくね。本名を使ってるってことは、まだ入ったばかりなのね。一応私達は先輩だから、何かあったら相談してね?瑠衣さんの悪口とか大歓迎だよ?」

 「な、ネム!!何言ってるのよあなた!」

 瑠衣は、顔を真っ赤にしながらネムを捕まえようとしている。
 しかし、歳の差か運動神経の差があるのか、ネムを捕まえることができず、達也の前をグルグルと空回りしながら走りっている。

 「あはは。冗談よ!じゃ、私レッスン行くから、またね達也くん!」

 「あ、はい!また……」

 達也は、まるでファンのように去っていくネムを寂しそうに見つめていた。
 
 「た!つ!や!くん!」

 見とれていた達也の前に、急に瑠衣が割り込んできた。

 「あ、瑠衣さん!その、アイドルって凄いですね!」

 「えぇ、そうね……凄いと思うわ。なんせ達也くんが、一瞬で落ちたからね。いい?初めに言っておくわよ?同じ事務所の女の子に手を出したらどうなるかわかっているわね?」

 瑠衣の目は全く笑っておらず、こめかみには青筋が浮かんでいた。
 
 ーーこ、怖い……母親以外で初めて女性のことを怖いって思ったかも。ただ、同じ事務所ってとこが気になら。他の事務所だったら良いってことなのかな。でも、ここで聞き返すとダメ!って言われそうだから、聞くのはやめておこう。

 「はい!もちろんです!手を出したりはしないです!

 達也は、背筋を伸ばし軽快に答えた。
 それを、ジト目で瑠衣は見ていた。
 
 「ふ~ん。まぁいいわ。それだけ約束してくれるなら、後は迷惑さえかけなければ問題ないわ。じゃあ、私は少し外すから他の子達もいるし、回って話でもしてみたら?良い情報が聞けるかもよ?」

 「はい!そうします!」

 瑠衣は、そう言って小走りでどこかへ行った。
 
 ーーさぁ、どうしようかな。

 周りを見渡すと、ダンスの練習をしている人達に、歌を歌っている人など…必死に練習をしているアイドルがいた。
 
 ーーこんなに必死に練習しているのに、話しかけるなんてことできないでしょ。

 そんなことを思いながら、ふらふら歩いていると休憩を始めた1人の女の子がいた。
 肩にかかりそうになっている金色の髪は汗で濡れたせいか、髪先にカールがかかっていた。
 見た目は、喜怒哀楽がハッキリしてるネムと違いジト目で表情が分かりにくい顔だった。
 だが、可愛い顔をしたネムと違い、目鼻がしっかり整った綺麗な顔立ちだった。 
 あまりに整いすぎて、少し怖く見える。

 「あ、あの……初めまして」

 「はぁ…はぁ……」

 汗だくで息が切れている女の子は、息を落ち着かせながら達也のことを、マジマジと見ている。  
 
 「あ、あの、達也って言います。その、忙しい?ですよね!ごめんなさい!」

 達也は、これはウザがられてると思い、その場を離れようとすると、服の袖を優しく引っ張られていた。

 「はぁ…はぁ…どこへ行くつもりなの。息を切らした女の子に話しかけといて。あせって逃げるつもり?」

 女の子は、目を細めながら達也を睨んでいる。

 「あ、あの、その。ごめんなさい。今日が初めてで」
 
 「ふ~ん。それで?私に何を聞きたかったの?まさか、疲れ切っている女の子に適当に声をかけたってわけじゃないよね?」

 もちろん、達也に聞きたい事はなく、本当に適当に声をかけてしまっていたので、返答ができず固まっていた。
 
 「はぁ……最低ね」

 女の子は、呆れた顔をしながらも、溢れ出る汗を拭いていた。
 その汗は、不快な感じはせず触りたくなる程、綺麗だった。
 が、そんなことをすれば、殺されてしまう。と、理性を保ちながら、女の子を見ていた。

 「なによ……見てないで、何か言ったらどうなのよ」

 「あ、すみません!僕、本当に何をしたら良いかわかんなくて。困っていたら、君がその……目の前に見えたから。自然と声をかけてしまって……」

 達也は、どんな言い訳をすれば、許されるのか分からなかった為、オブラートに包みながら素直に話した。

 「そう、やっぱり適当だったのね。まぁ、いいわ。それも何かの縁って思うようにするわ。私の名前は、本田 まゆ あなたと一緒で、まだ入ったばかりよ。それで、あなたの名前は?」

 「あ、はい! 天野 達也 って言います!よろしくお願いします」

 「そう、達也って言うのね。あなたも、アイドルになるの?」

 「うん、一応そう見たい」

 「はぁ?一応ですって?そんな軽い気持ちでここに来たって言いたいの?」

 まゆは、眉間に皺を寄せ達也を睨んでいた。
 それもそのはず、この場では全員が上を目指し日々努力してるのだ。
 その場に、何となくできたと言った達也に、怒りを隠せないのも無理がなかった。

 「いや、そう言う事じゃなくて」

 「じゃあ、なんなの!」

 まゆの口調は少し強くなり、もう少しで爆発しそうに見えた。
 そんな様子を見た達也は、必死に弁解をした。

 「実は僕、弥生 実に勝ちたいんです!その為に、アイドルをやるのかまだ決まっていなくて。それで、一応って言っちゃったんだ。ごめんなさい」

 達也は、素直に過ちを認め頭を下げた。
 もちろん、まゆもそれ以上怒るつもりはなかった。むしろ、笑っていた。

 「あはは。あの弥生くんに勝ちたいって凄い目標ね」

 「な、そんなに笑わないでよ!本当に、思ってるんだから!」

 笑われたせいか、少しムキになっていた。

 「あはは。ごめんごめん、私と似たような目標を掲げていたからさ。嬉しくてね。まぁ、私の場合は弥生くんじゃなくてこの人だけどね」

 まゆが携帯を開き、何かを調べていた。

 「ここで名前を上げると、笑われるから写真だけ見せるわね」

 まゆの画面には、見覚えある女が写っていた。
 それは達也が死ぬ日にいた助けを求めてきた女にそっくりだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について

ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに…… しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。 NTRは始まりでしか、なかったのだ……

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

俺、貞操逆転世界へイケメン転生

やまいし
ファンタジー
俺はモテなかった…。 勉強や運動は人並み以上に出来るのに…。じゃあ何故かって?――――顔が悪かったからだ。 ――そんなのどうしようも無いだろう。そう思ってた。 ――しかし俺は、男女比1:30の貞操が逆転した世界にイケメンとなって転生した。 これは、そんな俺が今度こそモテるために頑張る。そんな話。 ######## この作品は「小説家になろう様 カクヨム様」にも掲載しています。

ハーレム学園に勇者として召喚されたけど、Eランク判定で見事にボッチです~なんか色々絡まれるけど、揉め事は全て暴力で解決~

榊与一
ファンタジー
墓地無双(ぼちむそう)16歳。 神の手違いによる両親の死亡事故の補填としてチート能力を貰った彼は、それとは完全に別件で異世界へと召喚される。 召喚された先は、優秀な能力を次世代に取り込む事を目的とされた女性だらけの学園だった。 そこで一緒に呼び出された他の6人の勇者達と共にハーレムを築く様求められたが、能力判定はE、しかも他の勇者と比べて顔の造りがあまり良くなかった墓地無双(ぼちむそう)は、女生徒に全く相手にされない状態に。 こいつはダメだ。 そう学園の理事長に判断された彼は、言いがかりで終身刑を言い放たれる。 「喧嘩売ってんの?なら買うよ」 これは異世界の勇者を種馬とするハーレムを目的とされたピンク色の学園で、墓地無双が1人赤色のバイオレンスを繰り広げる物語。

〜転生したら私は魔女で、退魔師《エクソシスト》になったのだが、どうか祓わないで頂きたい〜(略:転エク)

結城 白
ファンタジー
「願えば何でも叶う力だなんてチートでしょ?」スカッとするくらいかっこいい強さを持つ主人公が売りです。 「あ、これ死んだわ」二言目に私は「オギャー」と泣いた。 〜転生したら私は魔女で、退魔師《エクソシスト》になったのだが、どうか祓わないで頂きたい〜  「耳を傾けろ」  凛とした声が辺りに響く。 少女の薄紫色の鋭い瞳と交わると同時に放たれる言葉は  「くたばれ」  瞬間、ある者は吐血し、ある者は発狂し全身を掻きむしり出す。人それぞれ反応は違うが結末は皆、同じだった。  生き絶え、モノと化す。  言霊を操る娘が異世界に転生し、愛を知り、大切な仲間を見つけ、悪を滅ぼすために立ち上がるお話。 ※この物語はフィクションです※  とってもクールで優しい主人公と、クールで優しい魔王と、エクソシスト達と、ツンデレで可愛い魔女と胸糞悪い魔女がいます。 【あらすじ】  2xxx年。未来化が加速する先に待っていたのは暴走したAIの崩壊だった。その後、一昔前の流行が再来。刀を腰に装備し、衣食住の全てが和モチーフ。妖怪や陰陽師等がいたりいなかったりする、殺らねば殺られるという時代で生きていた言霊の力を持つ主人公、理瀬(リセ)は殺されてしまう。  次に目が捉えたのは洋風の天井と家具、そして小さな己の手だった。  「おぎゃー!」  いやまて、おい、こりゃどうなってるんだ。魔女がいるなんて、エクソシストがいるだなんて聞いてない!! -------------  悪い魔物も悪い魔女も悪い人間も、バッサバサ斬り倒していくので祓わないで欲しい。切実に。 (魔王と1匹と主人公で街に討伐屋《ギルド》作っちゃったりカフェ作っちゃったり、恋愛にバトルに大っ変、忙しーい物語) 【追記。時間が無い人に向ける、あらすじのようなアレ】  力を隠しながら16歳まで生きるが、侍女を助けるために使い、恐れられ、通報されてしまう。色々あって、出会った魔王と悪魔と日本から転移してきた退魔師《エクソシスト》と世界一の討伐屋《ギルド》を目指す冒険が始まった。  進むにつれ主人公は、悪から守る筈の退魔師が悪事を働いていたり、心優しい魔女もいる事を知っていく。本作は自分の中に眠る黒い感情に気づき、戦いながら、何が敵か味方かを見極め、世界を変えていこうと立ち上がる1人の転生者の伝記である。 【第二章完結】※毎日更新(最低三日に一度)男性でも女性でも楽しめる物語を目指しています。後半バトル描写多め。ガッツリ恋愛物ではなくガッツリ冒険ファンタジー物。ソフトな恋模様。 【表紙絵】 水月せな ※この物語はフィクションです以下略※ ※他サイトにも投稿されてます※ ※横読み推奨※

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

処理中です...