29 / 71
奏とスフィンクスと
しおりを挟む
うぅ痛い・・・
夜勤がピークとかマジないわぁ。本当に勘弁してほしい・・・
よく頑張りました私。よく耐え抜きました私。
電車の中で、激しい痛みに襲われ顔面は蒼白。お腹の中で何か瘡蓋みたいな大きい塊が、ベリッと剥がれる感覚。地獄・・・
私は、生理痛期間に突入した。
座りたい。座席が空いてるから座りたいけど、お尻は殺人事件だもの座るのが怖い。
自転車は、職場から駅まで終始立ち漕ぎ。やっぱり私にサドルはいらない。
景色を見て、少しでも痛みを紛らわせたい。それなのに、丁度目線の高さに貼ってある書籍の広告が邪魔をする。やたらと濃い顔のおじさん。ヅラっぽい知らないおじさんだった。
この広告、一年以上貼ってあるよね。そんなこと可能なんだね。なんか凄い・・・
ふーっ。
深く息を吐いた。
普段なら、ドラえもんの道具並みに便利な携帯を取り出し、興味を持ったものは即調べて知識に変えてしまう私。でも今は、駅に着くまでの間、このおじさんを朧気な表情で、見つめ続けることしか出来なかった。
むかつく顔・・・
むかつくことは、もう1つあった。
ようやく最寄り駅に着いたと安堵しかけていたのに、開いた扉の目の前に、でっかいキャリーケースを3つも持ったアジア系の観光客が3人。
両サイドへ動こうとしないどころか、降りようとする私が見えていないかのように、我先にと乗り込もうとしてきた。
なんだろうこの図々しさは・・・
あまり旅行に行かないから、こんな大きなキャリーケース見たことない。1メートル四方ある。売ってんのかこれマジで。
さすがに頭にきて、
『んんっ!』
と殺意の念を籠めて、鼻息を荒げて睨みつけてみる。本日の私はブラックなのだ。怒らせるなよ?
なんだ出来るじゃないか・・・
おそらく旦那さんだろうな。慌てたように奥さんに指示を出し、やっと荷物と一緒に左右へ別れてくれた。
最初からそうしろっ! キャリーケース蹴飛ばしてやろうかと思った。ちっ!
生理痛の数日前辺りから、私は毎回の如く精神的に闇に堕ち、本当に機嫌が悪くなる。
ああいう人たちがいるから、アジア系観光客のイメージも悪くなって総じて嫌われるんだ!
あ。てめぇもアジア人じゃねぇかってツッコミはなしで。などと考えながら、出血で気持ち悪いお尻を庇い、家路を急いでなんとか帰宅。
『ただいまぁ』
いつもと変わらない我が家の玄関。
ちょっと買い出しなんかに出掛ける時用の、サイズの違う黒色とライムグリーンのサンダルが2足。普段は邪魔にならないようにと壁側に並べられている。
リビングへの扉を開けると、部屋は少しだけひんやりしていた。背負っていたリュックを下ろし、すぐさまトイレに引き籠る。
人並み以上に重たいこの症状は、言葉では表現し切れないほどで、この痛みに襲われる度、私は自分が女性であることを恨む。
こんな痛み必要なのかよ!
なんで女だけなんだ神様おいっ!
どちらかと言えば男性に生まれたかった。
性格はボーイッシュだとよく言われてきたし、学生時代からの友人たちにも「お前は胸ばかりで色気がない」と言われ続けた。なんならその中にいる男の子のほうが、女性っぽいくらいだ。
でも、なるべく思わないように考えないようにしている。あぁ、過去に戻ってやり直せるならなぁと頭をよぎる考えも同じ。
たまに二人で話すんだ。
「高校生くらいから人生やり直せないかなぁ」
『そんなことしたら、出逢えなくなっちゃうよ?』
「うん・・・」
『今のひとさんの人生だったから、劇団であのタイミングで出逢えて、今こうして二人でいる。もし違うタイミングで出逢えたとしても、私は今の生活が幸せだし、その時、ひとさんを好きになるとは限らないよ?』
「それは嫌だ、困る」
『そうでしょー。私は今で幸せだから』
だいたい話をし出すのは、ひとさん。笑。
いつも私を大切にしてくれる、離れていても必ず側にいてくれる男性。
ひとさん。
保仁だから『ひとさん』
お父さんとお母さんは「ひとちゃん」と呼ぶ。
初めて実家に招いた時のお父さんは、上機嫌で機関銃が止まらなかったし、お母さんは、ひとさんが作ってくれた油淋鶏に、舌鼓を打った。
大切にしてるものランキングで、家族、姪っ子と甥っ子、ペット、友人に次いで第5位にいる私の大切な男性だ。
第5位・・・また怒られる。てへぺろって言っておけば許してくれるかな?
いや、きっとほっぺを抓ってくるな。むぅ・・・
夜勤がピークとかマジないわぁ。本当に勘弁してほしい・・・
よく頑張りました私。よく耐え抜きました私。
電車の中で、激しい痛みに襲われ顔面は蒼白。お腹の中で何か瘡蓋みたいな大きい塊が、ベリッと剥がれる感覚。地獄・・・
私は、生理痛期間に突入した。
座りたい。座席が空いてるから座りたいけど、お尻は殺人事件だもの座るのが怖い。
自転車は、職場から駅まで終始立ち漕ぎ。やっぱり私にサドルはいらない。
景色を見て、少しでも痛みを紛らわせたい。それなのに、丁度目線の高さに貼ってある書籍の広告が邪魔をする。やたらと濃い顔のおじさん。ヅラっぽい知らないおじさんだった。
この広告、一年以上貼ってあるよね。そんなこと可能なんだね。なんか凄い・・・
ふーっ。
深く息を吐いた。
普段なら、ドラえもんの道具並みに便利な携帯を取り出し、興味を持ったものは即調べて知識に変えてしまう私。でも今は、駅に着くまでの間、このおじさんを朧気な表情で、見つめ続けることしか出来なかった。
むかつく顔・・・
むかつくことは、もう1つあった。
ようやく最寄り駅に着いたと安堵しかけていたのに、開いた扉の目の前に、でっかいキャリーケースを3つも持ったアジア系の観光客が3人。
両サイドへ動こうとしないどころか、降りようとする私が見えていないかのように、我先にと乗り込もうとしてきた。
なんだろうこの図々しさは・・・
あまり旅行に行かないから、こんな大きなキャリーケース見たことない。1メートル四方ある。売ってんのかこれマジで。
さすがに頭にきて、
『んんっ!』
と殺意の念を籠めて、鼻息を荒げて睨みつけてみる。本日の私はブラックなのだ。怒らせるなよ?
なんだ出来るじゃないか・・・
おそらく旦那さんだろうな。慌てたように奥さんに指示を出し、やっと荷物と一緒に左右へ別れてくれた。
最初からそうしろっ! キャリーケース蹴飛ばしてやろうかと思った。ちっ!
生理痛の数日前辺りから、私は毎回の如く精神的に闇に堕ち、本当に機嫌が悪くなる。
ああいう人たちがいるから、アジア系観光客のイメージも悪くなって総じて嫌われるんだ!
あ。てめぇもアジア人じゃねぇかってツッコミはなしで。などと考えながら、出血で気持ち悪いお尻を庇い、家路を急いでなんとか帰宅。
『ただいまぁ』
いつもと変わらない我が家の玄関。
ちょっと買い出しなんかに出掛ける時用の、サイズの違う黒色とライムグリーンのサンダルが2足。普段は邪魔にならないようにと壁側に並べられている。
リビングへの扉を開けると、部屋は少しだけひんやりしていた。背負っていたリュックを下ろし、すぐさまトイレに引き籠る。
人並み以上に重たいこの症状は、言葉では表現し切れないほどで、この痛みに襲われる度、私は自分が女性であることを恨む。
こんな痛み必要なのかよ!
なんで女だけなんだ神様おいっ!
どちらかと言えば男性に生まれたかった。
性格はボーイッシュだとよく言われてきたし、学生時代からの友人たちにも「お前は胸ばかりで色気がない」と言われ続けた。なんならその中にいる男の子のほうが、女性っぽいくらいだ。
でも、なるべく思わないように考えないようにしている。あぁ、過去に戻ってやり直せるならなぁと頭をよぎる考えも同じ。
たまに二人で話すんだ。
「高校生くらいから人生やり直せないかなぁ」
『そんなことしたら、出逢えなくなっちゃうよ?』
「うん・・・」
『今のひとさんの人生だったから、劇団であのタイミングで出逢えて、今こうして二人でいる。もし違うタイミングで出逢えたとしても、私は今の生活が幸せだし、その時、ひとさんを好きになるとは限らないよ?』
「それは嫌だ、困る」
『そうでしょー。私は今で幸せだから』
だいたい話をし出すのは、ひとさん。笑。
いつも私を大切にしてくれる、離れていても必ず側にいてくれる男性。
ひとさん。
保仁だから『ひとさん』
お父さんとお母さんは「ひとちゃん」と呼ぶ。
初めて実家に招いた時のお父さんは、上機嫌で機関銃が止まらなかったし、お母さんは、ひとさんが作ってくれた油淋鶏に、舌鼓を打った。
大切にしてるものランキングで、家族、姪っ子と甥っ子、ペット、友人に次いで第5位にいる私の大切な男性だ。
第5位・・・また怒られる。てへぺろって言っておけば許してくれるかな?
いや、きっとほっぺを抓ってくるな。むぅ・・・
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
わたしを捨てた騎士様の末路
夜桜
恋愛
令嬢エレナは、騎士フレンと婚約を交わしていた。
ある日、フレンはエレナに婚約破棄を言い渡す。その意外な理由にエレナは冷静に対処した。フレンの行動は全て筒抜けだったのだ。
※連載
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
妻のち愛人。
ひろか
恋愛
五つ下のエンリは、幼馴染から夫になった。
「ねーねー、ロナぁー」
甘えん坊なエンリは子供の頃から私の後をついてまわり、結婚してからも後をついてまわり、無いはずの尻尾をブンブン振るワンコのような夫。
そんな結婚生活が四ヶ月たった私の誕生日、目の前に突きつけられたのは離縁書だった。
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
私をもう愛していないなら。
水垣するめ
恋愛
その衝撃的な場面を見たのは、何気ない日の夕方だった。
空は赤く染まって、街の建物を照らしていた。
私は実家の伯爵家からの呼び出しを受けて、その帰路についている時だった。
街中を、私の夫であるアイクが歩いていた。
見知った女性と一緒に。
私の友人である、男爵家ジェーン・バーカーと。
「え?」
思わず私は声をあげた。
なぜ二人が一緒に歩いているのだろう。
二人に接点は無いはずだ。
会ったのだって、私がジェーンをお茶会で家に呼んだ時に、一度顔を合わせただけだ。
それが、何故?
ジェーンと歩くアイクは、どこかいつもよりも楽しげな表情を浮かべてながら、ジェーンと言葉を交わしていた。
結婚してから一年経って、次第に見なくなった顔だ。
私の胸の内に不安が湧いてくる。
(駄目よ。簡単に夫を疑うなんて。きっと二人はいつの間にか友人になっただけ──)
その瞬間。
二人は手を繋いで。
キスをした。
「──」
言葉にならない声が漏れた。
胸の中の不安は確かな形となって、目の前に現れた。
──アイクは浮気していた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる