オレと猫と彼女の日常

柳乃奈緒

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相棒の健康管理とジュエリーショップ

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✡✡✡✡✡


そんなこんなで、彼女とオレが抱き合っていたら
お腹が空いて、我慢出来んようになった相棒が
オレの足元へ来て、抗議の声を上げていた。

「チビちゃん。お腹空いたんやね。ごめん、ごめん!」
「こいつは、きっちりこの時間に飯が出てこんかったら、
ずっとオレの耳元で、鳴いてるからな!」
「フフフ♪ 休みの日もゆっくり寝られへんね」
「そうなんや! まぁ、生き物と暮らしてる運命っちゅうやつやわ」

オレは膝から彼女を下ろして、部屋着を身につけて相棒の皿に缶詰を入れてやった。相棒は、かなりお腹が減ってたらしくて、凄い勢いで平らげてからもっとくれと催促していた。

「去勢手術の後は、気をつけてあげんと…太りすぎる子が
多いみたいやから、ご飯もやりすぎんようにせんとね」
「そうなん? そらあかんわ! チビ! 食い過ぎたら太るて、
今日から、お代わりは無しやで!」

『ミャーン! ミャーン!』

彼女に言われて、オレが缶詰にラップをかけて
冷蔵庫にしまおうとしたら、相棒が足元で
どうでもええからもっとくれと、鳴いて訴えていた。

「こんな時は、どうしたらええん?」
「缶詰やから、あと少しくらいはあげても良いと思うよ」
「後少しやったらええんやて! 良かったな♪」

『ミャーン♪ ミャーン♪』

しまいかけた缶詰を、少しだけ皿へ入れてやると、
相棒は、機嫌よく尻尾をゆらゆらさせながら、
今度は、ゆっくり味わって食べているように見えた。

「猫のご飯も色々あるから、カロリーコントロールが出来る
ご飯を、今のご飯がなくなったらあげてみたらいいと思う」
「そんなんもあるんやな! 昔はご飯の残りもんとかを平気で
あげててんけどなぁー! こいつらも贅沢になったんやなぁー」
「病気の猫用の処方食とかも、すっごい増えたんよ」

彼女のアドバイスにオレが感心していると、
缶詰を食べ終えた相棒が、オレと彼女の間に座って
満足そうに毛づくろいを始めた。

✡✡

相棒の腹が満たされて静かになったので、オレと彼女は
シャワーをあびて、少し遅めの朝食を食べていた。

「そや! 今日は病院は? 手伝わんで良かったんか?」
「うん。今日は、休みをもらってん。誠二さんとたまには
日曜日も1日一緒におりたかったから」
「そやったんや! ん? 最初から泊まる気やったんか!?」
「フフフ♪ それよりも、昨日の話を蒸し返すみたいであれやけど、ほんまに絶対待ちくたびれて他の人を好きになるなんてことは、無いよね?」

昨日にも増して彼女は真剣な眼差しで、オレの気持ちを確かめていた。

「わかった。わかった。そんなに不安やったら指輪買いに行こう!」
「えっ!? 指輪?」
「そうや! 婚約指輪や! いらんか?」
「いる! 欲しい!」

なんかなぁ、ことが済んだ後にすぐに婚約指輪って、
罪滅ぼしみたいに思えて、気が引ける気もしたんやけど。

あまりにも彼女が不安そうな顔をするもんやから、
オレは、婚約指輪を彼女と買いに行くことにした。

✡✡

急いで出かける用意をして、相棒には留守番してもらって
商店街にあるジュエリーショップへ彼女と向かった。
日曜日の商店街は、そこそこ賑わっていてお店へ入ると
何組かカップルがショーケースの前で、指輪やネックレスに
その他のジュエリーを吟味していた。

「ほんまにええん?」
「ええんや! 気にせんと選んでや!」

彼女は、何度もオレに確認してから何かを見つけたらしく
ジッと立ち止まって、動かなくなっていた。

「どうしたん?」
「あの…誠二さん、指輪じゃないとアカンかな?」
「なんで? どうしたんや?」
「あれ……あれがええなぁって思うんやけど」

彼女が指差したショーケースの中には、大小の猫が
2匹寄り添っている。シンプルやけど、可愛らしい
ペンダントトップが飾ってあった。

「あれにしよか?」
「ええの?」
「ええよ!」

オレがすぐに店員を呼んで包んでもらおうとしたら
彼女は、すぐに身につけたいと…小さいほうの猫の
ペンダントを手に取って、嬉しそうに身につけていた。

「チビちゃんのお陰で知り合えたから、なんかこれが
しっくりくると思ってん」
「そういうことか。確かにそうやな!」

彼女の言葉に深く納得させられて、少し恥ずかしかったけど
オレも大きいほうの猫のペンダントを、彼女につけてもらって
仲良く手をつないで、オレと彼女は店を出た。
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