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三十路男の苦悩 その②
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✡✡✡✡✡
今日は仕事が忙しくて
オレは、いつの間にか
彼女の告白のことをスッカリ忘れていた。
それでも
相棒のことは気がかりやったから
仕事を終えてすぐに「おつかれ!」と言って
オレは、フロアを飛び出て
エレベーターに飛び乗っていた。
「藤田さん。最近、仕事が終ったら
急いで帰ってしまうけど? 彼女でも出来たんですか?」
「え!? あ。ちゃうちゃう! ちょっとな。
子猫を飼うことになってしもてな…」
「ああ。そうなんや! それで、毎日急いで
帰ってるんですね。フフフ」
同じフロアの派遣の女の子に
エレベーターの中で、ちょっと
ドキッとする質問をされて
オレは、正直に相棒のことを話して
あとは笑って誤魔化した。
会社を出て、オレはちょっと小走りで
駅へ向かって、電車に乗って
窓の外の景色をボーっと眺めながら
少し彼女のことを思い出していた。
(やっぱり、返事せんとアカンよな~?)
そう思いながら
あの告白メールをもう一度
スマホの画面に呼び出して
男としてのオレと、大人としてのオレが
頭の中で葛藤を続けていた。
✡✡
伯母の店の戸を開けて入ると
伯母が、ニコニコ笑って
オレを出迎えてくれていて
真っ直ぐ帰って来たオレのことを笑っていた。
「おかえりー! 今日も真っ直ぐ急いで
帰って来たやろ? せいちゃん。ほんま、
チビが可愛くてしゃーないねんな〰!」
「ただいまー! へへへ。朝もちょっとな
元気なかったから、気になってしもて。それで? どうでした?」
「大丈夫やで! 夕方からいつもと変わらんくらいに
ご飯食べて、走り回ってるわ。今は、疲れて
こうちゃんらのとこで、寝てるみたいやけど」
伯母の話を聞いて
オレが、座敷におる
こうちゃんの方を見ると
相棒は、こうちゃんとこうちゃんの
嫁さんの間で、丸くなって寝ているようやった。
「せいちゃん、おかえりー! こいつ。
めっちゃ可愛いな! せいちゃんが、拾ってきたんやて?」
「そうなんやー。酒飲んだ帰りに公園でな
オレの懐に入り込んでて、そのまま家まで連れて
帰ってきてしもたんや!」
「こいつらって、人間のことようわかってるから
せいちゃんのことええカモやと思って、懐に入りこんだんやで!」
こうちゃんは、寝てる相棒の頭を
撫でながら、ニィッと笑って
たまには一緒に飲もうと言って
オレを座敷へ座らせた。
久しぶりに、こうちゃんと酒を飲みながら
家での相棒のやんちゃぶりをオレが話していると
こうちゃんの嫁さんの麻由美ちゃんが
オレのことをジッと見て、何か言いたそうにしていた。
「どないしたん? オレの顔に何かついてるか?」
「せいちゃん。ユイちゃんのことどう思ってるん?」
「え!? 何? 何で?」
麻由美ちゃんの一言で
和やかやった空気が、一瞬で
張り詰めてしまっていた。
「うち、ユイちゃんに相談されてしもてん。
せいちゃんのこと、ユイちゃんマジで好きに
なってしもたみたいでな……」
「それ、ほんま? マジ? お前、そんなん何時相談されてん!」
「今日の夕方。買い物の帰りにユイちゃんに会って
何か元気無いからどうしたんか聞いたら、
失恋しそうやーって泣きそうな顔してたから、
くわしく聞いたら。せいちゃんに本気で
ユイちゃん恋してるみたいで……」
麻由美ちゃんの話を聞きながら
オレは気が遠くなりそうやった。
マジか? もう、こんなに早く
身近な人間に知られてしまうなんて最悪や。
オレはおしぼりで顔を拭きながら、
ここはどう答えるべきなんかを悩んでいた。
「せいちゃんって、彼女いてるん?」
「いや。おらん。3年前に別れてからは、ずっと1人や」
「ユイちゃん。ええ子やで? どう?」
おいおい。こいつら、
こんな三十路のおっさんに
女子高生を勧めてるで。ええんか?
もう少し彼女の将来を考えたれよ…。
そんなことをオレは考えながら、
とりあえず浩二には、正直に
今の気持ちを話しておくことにした。
「正直に言うとやな。めっちゃ嬉しい。
ありがたい。あんなに可愛い、しかも優しくて
ええ子に好きって言われたら、すぐにでも
お付き合いしたい。そう思うんが、正常な男やろ?
そやけど。彼女は、女子高生やで! しかも今年、受験や!
将来のこと考えるとやな。ふたつ返事で
付き合うわけにはいかんやろ!」
「……すごい。せいちゃんって大人なんや!」
「そんなん! 男と女なんやから、
好きか嫌いかでええんちがうん?」
オレの気持ちを聞いて、
浩二は納得出来ん顔をしたけど。
麻由美ちゃんは確かに。と言って複雑な顔をしていた。
オレは、2人に少し彼女とは
様子を見たいから、しばらくの間は
そっとしておいてくれと頼んで
オレは、相棒を連れて店を出た。
今日は仕事が忙しくて
オレは、いつの間にか
彼女の告白のことをスッカリ忘れていた。
それでも
相棒のことは気がかりやったから
仕事を終えてすぐに「おつかれ!」と言って
オレは、フロアを飛び出て
エレベーターに飛び乗っていた。
「藤田さん。最近、仕事が終ったら
急いで帰ってしまうけど? 彼女でも出来たんですか?」
「え!? あ。ちゃうちゃう! ちょっとな。
子猫を飼うことになってしもてな…」
「ああ。そうなんや! それで、毎日急いで
帰ってるんですね。フフフ」
同じフロアの派遣の女の子に
エレベーターの中で、ちょっと
ドキッとする質問をされて
オレは、正直に相棒のことを話して
あとは笑って誤魔化した。
会社を出て、オレはちょっと小走りで
駅へ向かって、電車に乗って
窓の外の景色をボーっと眺めながら
少し彼女のことを思い出していた。
(やっぱり、返事せんとアカンよな~?)
そう思いながら
あの告白メールをもう一度
スマホの画面に呼び出して
男としてのオレと、大人としてのオレが
頭の中で葛藤を続けていた。
✡✡
伯母の店の戸を開けて入ると
伯母が、ニコニコ笑って
オレを出迎えてくれていて
真っ直ぐ帰って来たオレのことを笑っていた。
「おかえりー! 今日も真っ直ぐ急いで
帰って来たやろ? せいちゃん。ほんま、
チビが可愛くてしゃーないねんな〰!」
「ただいまー! へへへ。朝もちょっとな
元気なかったから、気になってしもて。それで? どうでした?」
「大丈夫やで! 夕方からいつもと変わらんくらいに
ご飯食べて、走り回ってるわ。今は、疲れて
こうちゃんらのとこで、寝てるみたいやけど」
伯母の話を聞いて
オレが、座敷におる
こうちゃんの方を見ると
相棒は、こうちゃんとこうちゃんの
嫁さんの間で、丸くなって寝ているようやった。
「せいちゃん、おかえりー! こいつ。
めっちゃ可愛いな! せいちゃんが、拾ってきたんやて?」
「そうなんやー。酒飲んだ帰りに公園でな
オレの懐に入り込んでて、そのまま家まで連れて
帰ってきてしもたんや!」
「こいつらって、人間のことようわかってるから
せいちゃんのことええカモやと思って、懐に入りこんだんやで!」
こうちゃんは、寝てる相棒の頭を
撫でながら、ニィッと笑って
たまには一緒に飲もうと言って
オレを座敷へ座らせた。
久しぶりに、こうちゃんと酒を飲みながら
家での相棒のやんちゃぶりをオレが話していると
こうちゃんの嫁さんの麻由美ちゃんが
オレのことをジッと見て、何か言いたそうにしていた。
「どないしたん? オレの顔に何かついてるか?」
「せいちゃん。ユイちゃんのことどう思ってるん?」
「え!? 何? 何で?」
麻由美ちゃんの一言で
和やかやった空気が、一瞬で
張り詰めてしまっていた。
「うち、ユイちゃんに相談されてしもてん。
せいちゃんのこと、ユイちゃんマジで好きに
なってしもたみたいでな……」
「それ、ほんま? マジ? お前、そんなん何時相談されてん!」
「今日の夕方。買い物の帰りにユイちゃんに会って
何か元気無いからどうしたんか聞いたら、
失恋しそうやーって泣きそうな顔してたから、
くわしく聞いたら。せいちゃんに本気で
ユイちゃん恋してるみたいで……」
麻由美ちゃんの話を聞きながら
オレは気が遠くなりそうやった。
マジか? もう、こんなに早く
身近な人間に知られてしまうなんて最悪や。
オレはおしぼりで顔を拭きながら、
ここはどう答えるべきなんかを悩んでいた。
「せいちゃんって、彼女いてるん?」
「いや。おらん。3年前に別れてからは、ずっと1人や」
「ユイちゃん。ええ子やで? どう?」
おいおい。こいつら、
こんな三十路のおっさんに
女子高生を勧めてるで。ええんか?
もう少し彼女の将来を考えたれよ…。
そんなことをオレは考えながら、
とりあえず浩二には、正直に
今の気持ちを話しておくことにした。
「正直に言うとやな。めっちゃ嬉しい。
ありがたい。あんなに可愛い、しかも優しくて
ええ子に好きって言われたら、すぐにでも
お付き合いしたい。そう思うんが、正常な男やろ?
そやけど。彼女は、女子高生やで! しかも今年、受験や!
将来のこと考えるとやな。ふたつ返事で
付き合うわけにはいかんやろ!」
「……すごい。せいちゃんって大人なんや!」
「そんなん! 男と女なんやから、
好きか嫌いかでええんちがうん?」
オレの気持ちを聞いて、
浩二は納得出来ん顔をしたけど。
麻由美ちゃんは確かに。と言って複雑な顔をしていた。
オレは、2人に少し彼女とは
様子を見たいから、しばらくの間は
そっとしておいてくれと頼んで
オレは、相棒を連れて店を出た。
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