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ドタバタ温泉旅行♡
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◇◇◇◇◇
突然、火事で店が燃えてしまってから
2週間が過ぎようとしていた。南公園の側の
新しい店舗付き住宅の改装も、だいぶ進んで
予定通り4月からは、営業を始められそうなので
私は、ホッとしていた。そして、空き家になる
この家には、4月から市外に住んでる
私の甥っ子の誠二に、住んでもらうことに決まった。
誠二は、職場が市内やから
今までより便利になると、喜んでくれていて
安心して私らは、新しい家に引っ越せることに
なったというわけや。
◇◇
「オカン! 用意出来た?」
「バッチリやで! もういつでも出かけられるで!」
「ほな、出よか? きっとこうちゃんら、待ってるで!」
みんなで、温泉旅行へ行くという
私の提案に、店の常連のこうちゃん夫婦や
宗ちゃん夫婦に、健ちゃん父子も
日をあわせてくれて、オトンとは現地で
合流ということで、ちょうど私と比奈は
戸締りをして、家を出る所やった。
がんもとミケは、一泊だけの旅行やから
若先生の病院で、お泊りしてもらうことにした。
地元から、一番近い温泉やから
何かあっても、すぐに帰ってこれるしね。
がんもとミケのことやから、きっとどこででも
のんびりくつろいでると思うわ。フフフ。
「ママ~! だっこ~。だっこ~~」
「あー! 絵美里~。ちょっと待って。ママ、まだ靴履けてないねん」
「はいはい。ばあちゃんが抱っこしたる! おいで! 絵美里」
この3月で、3歳になった絵美里は、
だいぶ口が達者になって来たんやけど、
まだまだ甘えん坊さんで、今は何かあると
すぐに比奈に抱っこをせがむから、親の比奈は大変や。
泣いてる絵美里を、私が抱っこして
2人でバタバタしながら、なんとか
家を出て、急いで駅へ向かった。
◇◇
駅に着くと。やっぱり、
こうちゃんたちが、首を長くして待っていた。
予定を組んだ時にこうちゃんから、
レンタカーにしようと言われてんけど、
「たまには、電車もええやん」と、軽い気持ちで
言ってしまった私のわがままで、電車にしたけど。
やっぱり、絵美里や桃香ちゃんのことを考えると、
レンタカーのほうが良かったかもしれへん。
「おまたせー。ごめんなー! バタバタしてしもて
こんな時間になってしもたわー。桃ちゃんは? 大丈夫か?」
「かまへんかまへん。桃は大丈夫や! 結構、朝から
ご機嫌さんやで! 絵美里のほうが、大変ちゃうか?」
「へへへ。わかる? もう~うち…今からへとへとやー!」
私は待たせてしもたことを謝ってから
こうちゃんに、桃香ちゃんの様子を心配して
聞いたら、桃香ちゃんは愚図ることも無く
ご機嫌らしくて、比奈がうらやましいと言って
すでに疲れ果てて顔を引きつらせていた。
何度か電車を乗り継いで
目的の温泉街へ着いたのは、昼を過ぎた頃やった。
それでも、絵美里が電車の中から見える景色に
キャッキャと声をあげて喜ぶのを見れたから
私はやっぱり、電車にして良かったと思っていた。
「オカン! 帰りは土産とか買うから、荷物増えるし。
やっぱり、レンタカー二台予約しとくで! ええか?」
「うんうん! そうしてくれる? ごめんな。比奈が
もうすでにヘロヘロやから、そうしてもらえると助かるわ!」
「こうちゃん。ありがとう~♪」
こうなることを多分、予測していた
こうちゃんと健ちゃんが、一緒に帰りの
レンタカーを予約してくれていたので、
比奈が少しホッとした顔をしていた。
小さい幼児を連れての電車の乗り継ぎは
結構大変なんよね。私は、比奈を連れて
旅行に行ったことが無かったから、今回
絵美里を連れて来て、身にしみてよくわかった。
◇◇
部屋へ案内されて
私と比奈が部屋へ入ると、すでに
オトンが、部屋でくつろいでいた。
部屋は、各自で別にしたけど
夕飯は、宴会場を借りてみんなで
ワイワイ楽しもうということになっている。
「遅かったな! やっぱりちいこいのがおると、なんやら
大変やったんちゃうか? 大丈夫か?」
「もう~! めっちゃ疲れたー。ちょっと横にならせて。
オトン! 絵美里たのむわ~!」
「ごめんなー! 私が、無理に電車でって言うたもんやから。
比奈がもう、絵美里に振り回されてヘロヘロやねん」
部屋へ荷物を置くと、比奈は
畳の上に、そのまま倒れこんでしまった。
「はははは。そやから、ワシも車にせえって言うたのに。
帰りは車にするんやろ?」
「うんうん。こうちゃんと健ちゃんが、予約してくれてたわ」
私は、仲居さんが入れてくれたお茶を
座って飲みながら、オトンに電車の中での
絵美里のはしゃぎっぷりを話してやった。
10分ほどして、みんなが浴衣に着替えて
部屋へ来て、さっそく温泉に入ろうと誘ってくれたので
みんなで、浴場へ向かった。絵美里にも小さい浴衣を
着せてやると、嬉しそうにクルクル回ってはしゃいでいた。
絵美里を子守りしてくれるもんが増えたから、
比奈もだいぶ楽になったみたいで、温泉に浸かって
疲れをゆっくり癒していた。絵美里のことは、
オトンと健ちゃんが、しっかり見ていてくれたから
私も、温泉にゆっくり浸かってのんびりさせてもらっていた。
「ええな~。ホッとするなぁー!」
「ほんまや。雅章さんもこれたら良かったのになぁー。
ほんま、仕事人間やからなぁー」
一応、比奈の旦那の雅章さんにも
声はかけてんけど。やっぱり仕事が忙しくて
予定が合わなかったので、またの機会にと断りを入れてきた。
「亭主元気で留守がいいっていうし、ええんちゃう?
私は、ゆっくり羽が伸ばせるから有難いわ。へへへ」
「わっるい嫁やなぁー! 亭主は一生懸命働いてるんやで!
ちゃんと、感謝せなアカンのやで!」
「おーい! あがるで! 絵美里がのぼせるわ!」
「「はーーーい!」」
のんびり温泉に入っていた私と比奈は
オトンにあがるで~と言われて、急いで
温泉から出て、オトンらと合流してから
部屋へ戻った。
そして
部屋へ戻った私とオトンは
夜の宴会までには、時間があったので
絵美里を連れてお土産を見て回ることにした。
比奈は少し部屋で休みたいというので
そのまま放置しておいた。好奇心旺盛な絵美里は
目を丸くして、土産品を見て回って可愛らしい
マスコットのキーホルダーを見つけて
動かんようになってしもてた。(笑)
「欲しいもんあったら、じいちゃんが買ったるで♪」
「ほんま? そしたら、これなんかどうやろ?」
オトンが絵美里に、なんでも買ったると言うてると
後ろからこうちゃんが、オトンに向かって
手に持っていた温泉饅頭を差し出していた。
「浩二は自分で買え! ワシは絵美里に言うたんや!」
「えええー! えーやん。温泉饅頭買うてえなぁ~!」
2人のやりとりは、ほんまに
ほんまの父子みたいで、微笑ましかった。
私がオトンとこうちゃんを見て、ケラケラ笑ってると
桃ちゃんを抱いた、麻由美ちゃんがこうちゃんの
後頭部を軽く叩いていた。
「絵美里ちゃんが、ポカーンとした顔で見てるで!
教育に悪いから、やめとき!」
「イテテ。冗談やん♪(笑)父子のコミュニケーションや!」
麻由美ちゃんに叱られて、頭を撫でながら
こうちゃんは、少し舌を出して笑っていた。
結局。オトンはその温泉饅頭もマスコットと
一緒に買ってたんやけどね。フフフ。
◇◇
辺りがすっかり暗くなって
そろそろ宴会の時間やと言って
みんなで旅館へ戻って宴会場へ行くと
ちょうど宴会の準備が整ったところやった。
部屋で休んでいた比奈も来て
みんながそろったところでやっぱり
乾杯の音頭は、こうちゃんの役目やった。
「えーーー。それでは、今回はいつも休まず頑張って
くれているオカンの慰労会ということで、オレたちまで
参加させてもらいました。オカン! ほんまにいつもありがとう!
リニューアルしても、頑張ってや~♪ それでは、カンパーイ!」
「「「カンパーーーーーイ」」」
「みんな、ありがとうな! ほんまにありがとう。絶対
また、頑張るからな♪ ほんまありがとう!」
こうちゃんの言葉に、私が少し感極まって
涙してると、オトンが私の背中を優しく擦って
ニィッと笑って頷いていた。
私は人に作ってもらった料理と言えば
『黒猫』のマスターに、モーニングセットで
サンドイッチを作ってもらうくらいやったから、
次から次に運ばれてくる料理が、これまた
どれも美味しくて。私は、来年もまた来たいと、
こうちゃんらに声を大にして言うてた。
「ええんちゃう? 年に一回慰安旅行っちゅうのも」
「そやなぁー! ええかも知れへんな! ここなら近いし」
「ほんまに? また、みんなが付きおうてくれるんやったら、
来年もまた、温泉旅行を考えよう~。うれしいなぁ~」
こうちゃんたちも賛成してくれたので、
私はオトンにも、比奈にも
また、来年も来ようなと笑って約束していた。
◇◇
宴会の途中で、美花ちゃんが具合悪そうに
抜け出して化粧室へ駆け込んでいた。
私が気になって追いかけて行くと
美花ちゃんは、つらそうに食べたものを
もどしてしまっていた。私は、慌てて
美花ちゃんの背中をさすってやって
もしかしてと思って聞いてみた。
「もしかして? おめでたか?」
「そうかもしれへん。先々月から月の物が来てなかったし」
「あかんやん! 病院は? 行ったんか?」
心配したとおりで、どうも美花ちゃんは
妊娠しているようやった。私は、宗ちゃんを呼んで
美花ちゃんを、部屋で休ませるように頼んだ。
妊娠初期に無理したら、流産とかの可能性があるからね。
「ほんまですか? 赤ちゃん出来たんや!」
「まだわからんで! 病院へ行ってへんし」
「それでも、用心するに越したことないからな!
お酒はアカンで! ゆっくり、部屋で休んどき」
美花ちゃんは渋々やったけど、宗ちゃんと
部屋で、休むことにしてくれた。私は仲居さんに
事情を話して、口当たりの良さそうなものを
後で部屋へ届けてやってくれと頼んでおいた。
「いよいよ美花ちゃんもお母さんかぁー。凄いなー」
「結婚してもうすぐ1年やからな。ええ感じやん」
「桜絵ちゃんとこが、もうそろそろ生まれる頃やからな!」
店がリニューアルしたら、赤ちゃん連れが増えるねと
比奈と麻由美ちゃんが、顔を見合わせて笑っていた。
その後は、小さい幼児も連れてることやしと
宴会は早めに切り上げて
みんな部屋へ戻って、ゆっくり休むことにした。
翌朝。少しだけ、土産屋をまわってから
予約していたレンタカーで、無事にみんなで帰路へ着いた。
車の中からの景色を見ても
絵美里は、キャッキャと嬉しそうにはしゃいでいた。
突然、火事で店が燃えてしまってから
2週間が過ぎようとしていた。南公園の側の
新しい店舗付き住宅の改装も、だいぶ進んで
予定通り4月からは、営業を始められそうなので
私は、ホッとしていた。そして、空き家になる
この家には、4月から市外に住んでる
私の甥っ子の誠二に、住んでもらうことに決まった。
誠二は、職場が市内やから
今までより便利になると、喜んでくれていて
安心して私らは、新しい家に引っ越せることに
なったというわけや。
◇◇
「オカン! 用意出来た?」
「バッチリやで! もういつでも出かけられるで!」
「ほな、出よか? きっとこうちゃんら、待ってるで!」
みんなで、温泉旅行へ行くという
私の提案に、店の常連のこうちゃん夫婦や
宗ちゃん夫婦に、健ちゃん父子も
日をあわせてくれて、オトンとは現地で
合流ということで、ちょうど私と比奈は
戸締りをして、家を出る所やった。
がんもとミケは、一泊だけの旅行やから
若先生の病院で、お泊りしてもらうことにした。
地元から、一番近い温泉やから
何かあっても、すぐに帰ってこれるしね。
がんもとミケのことやから、きっとどこででも
のんびりくつろいでると思うわ。フフフ。
「ママ~! だっこ~。だっこ~~」
「あー! 絵美里~。ちょっと待って。ママ、まだ靴履けてないねん」
「はいはい。ばあちゃんが抱っこしたる! おいで! 絵美里」
この3月で、3歳になった絵美里は、
だいぶ口が達者になって来たんやけど、
まだまだ甘えん坊さんで、今は何かあると
すぐに比奈に抱っこをせがむから、親の比奈は大変や。
泣いてる絵美里を、私が抱っこして
2人でバタバタしながら、なんとか
家を出て、急いで駅へ向かった。
◇◇
駅に着くと。やっぱり、
こうちゃんたちが、首を長くして待っていた。
予定を組んだ時にこうちゃんから、
レンタカーにしようと言われてんけど、
「たまには、電車もええやん」と、軽い気持ちで
言ってしまった私のわがままで、電車にしたけど。
やっぱり、絵美里や桃香ちゃんのことを考えると、
レンタカーのほうが良かったかもしれへん。
「おまたせー。ごめんなー! バタバタしてしもて
こんな時間になってしもたわー。桃ちゃんは? 大丈夫か?」
「かまへんかまへん。桃は大丈夫や! 結構、朝から
ご機嫌さんやで! 絵美里のほうが、大変ちゃうか?」
「へへへ。わかる? もう~うち…今からへとへとやー!」
私は待たせてしもたことを謝ってから
こうちゃんに、桃香ちゃんの様子を心配して
聞いたら、桃香ちゃんは愚図ることも無く
ご機嫌らしくて、比奈がうらやましいと言って
すでに疲れ果てて顔を引きつらせていた。
何度か電車を乗り継いで
目的の温泉街へ着いたのは、昼を過ぎた頃やった。
それでも、絵美里が電車の中から見える景色に
キャッキャと声をあげて喜ぶのを見れたから
私はやっぱり、電車にして良かったと思っていた。
「オカン! 帰りは土産とか買うから、荷物増えるし。
やっぱり、レンタカー二台予約しとくで! ええか?」
「うんうん! そうしてくれる? ごめんな。比奈が
もうすでにヘロヘロやから、そうしてもらえると助かるわ!」
「こうちゃん。ありがとう~♪」
こうなることを多分、予測していた
こうちゃんと健ちゃんが、一緒に帰りの
レンタカーを予約してくれていたので、
比奈が少しホッとした顔をしていた。
小さい幼児を連れての電車の乗り継ぎは
結構大変なんよね。私は、比奈を連れて
旅行に行ったことが無かったから、今回
絵美里を連れて来て、身にしみてよくわかった。
◇◇
部屋へ案内されて
私と比奈が部屋へ入ると、すでに
オトンが、部屋でくつろいでいた。
部屋は、各自で別にしたけど
夕飯は、宴会場を借りてみんなで
ワイワイ楽しもうということになっている。
「遅かったな! やっぱりちいこいのがおると、なんやら
大変やったんちゃうか? 大丈夫か?」
「もう~! めっちゃ疲れたー。ちょっと横にならせて。
オトン! 絵美里たのむわ~!」
「ごめんなー! 私が、無理に電車でって言うたもんやから。
比奈がもう、絵美里に振り回されてヘロヘロやねん」
部屋へ荷物を置くと、比奈は
畳の上に、そのまま倒れこんでしまった。
「はははは。そやから、ワシも車にせえって言うたのに。
帰りは車にするんやろ?」
「うんうん。こうちゃんと健ちゃんが、予約してくれてたわ」
私は、仲居さんが入れてくれたお茶を
座って飲みながら、オトンに電車の中での
絵美里のはしゃぎっぷりを話してやった。
10分ほどして、みんなが浴衣に着替えて
部屋へ来て、さっそく温泉に入ろうと誘ってくれたので
みんなで、浴場へ向かった。絵美里にも小さい浴衣を
着せてやると、嬉しそうにクルクル回ってはしゃいでいた。
絵美里を子守りしてくれるもんが増えたから、
比奈もだいぶ楽になったみたいで、温泉に浸かって
疲れをゆっくり癒していた。絵美里のことは、
オトンと健ちゃんが、しっかり見ていてくれたから
私も、温泉にゆっくり浸かってのんびりさせてもらっていた。
「ええな~。ホッとするなぁー!」
「ほんまや。雅章さんもこれたら良かったのになぁー。
ほんま、仕事人間やからなぁー」
一応、比奈の旦那の雅章さんにも
声はかけてんけど。やっぱり仕事が忙しくて
予定が合わなかったので、またの機会にと断りを入れてきた。
「亭主元気で留守がいいっていうし、ええんちゃう?
私は、ゆっくり羽が伸ばせるから有難いわ。へへへ」
「わっるい嫁やなぁー! 亭主は一生懸命働いてるんやで!
ちゃんと、感謝せなアカンのやで!」
「おーい! あがるで! 絵美里がのぼせるわ!」
「「はーーーい!」」
のんびり温泉に入っていた私と比奈は
オトンにあがるで~と言われて、急いで
温泉から出て、オトンらと合流してから
部屋へ戻った。
そして
部屋へ戻った私とオトンは
夜の宴会までには、時間があったので
絵美里を連れてお土産を見て回ることにした。
比奈は少し部屋で休みたいというので
そのまま放置しておいた。好奇心旺盛な絵美里は
目を丸くして、土産品を見て回って可愛らしい
マスコットのキーホルダーを見つけて
動かんようになってしもてた。(笑)
「欲しいもんあったら、じいちゃんが買ったるで♪」
「ほんま? そしたら、これなんかどうやろ?」
オトンが絵美里に、なんでも買ったると言うてると
後ろからこうちゃんが、オトンに向かって
手に持っていた温泉饅頭を差し出していた。
「浩二は自分で買え! ワシは絵美里に言うたんや!」
「えええー! えーやん。温泉饅頭買うてえなぁ~!」
2人のやりとりは、ほんまに
ほんまの父子みたいで、微笑ましかった。
私がオトンとこうちゃんを見て、ケラケラ笑ってると
桃ちゃんを抱いた、麻由美ちゃんがこうちゃんの
後頭部を軽く叩いていた。
「絵美里ちゃんが、ポカーンとした顔で見てるで!
教育に悪いから、やめとき!」
「イテテ。冗談やん♪(笑)父子のコミュニケーションや!」
麻由美ちゃんに叱られて、頭を撫でながら
こうちゃんは、少し舌を出して笑っていた。
結局。オトンはその温泉饅頭もマスコットと
一緒に買ってたんやけどね。フフフ。
◇◇
辺りがすっかり暗くなって
そろそろ宴会の時間やと言って
みんなで旅館へ戻って宴会場へ行くと
ちょうど宴会の準備が整ったところやった。
部屋で休んでいた比奈も来て
みんながそろったところでやっぱり
乾杯の音頭は、こうちゃんの役目やった。
「えーーー。それでは、今回はいつも休まず頑張って
くれているオカンの慰労会ということで、オレたちまで
参加させてもらいました。オカン! ほんまにいつもありがとう!
リニューアルしても、頑張ってや~♪ それでは、カンパーイ!」
「「「カンパーーーーーイ」」」
「みんな、ありがとうな! ほんまにありがとう。絶対
また、頑張るからな♪ ほんまありがとう!」
こうちゃんの言葉に、私が少し感極まって
涙してると、オトンが私の背中を優しく擦って
ニィッと笑って頷いていた。
私は人に作ってもらった料理と言えば
『黒猫』のマスターに、モーニングセットで
サンドイッチを作ってもらうくらいやったから、
次から次に運ばれてくる料理が、これまた
どれも美味しくて。私は、来年もまた来たいと、
こうちゃんらに声を大にして言うてた。
「ええんちゃう? 年に一回慰安旅行っちゅうのも」
「そやなぁー! ええかも知れへんな! ここなら近いし」
「ほんまに? また、みんなが付きおうてくれるんやったら、
来年もまた、温泉旅行を考えよう~。うれしいなぁ~」
こうちゃんたちも賛成してくれたので、
私はオトンにも、比奈にも
また、来年も来ようなと笑って約束していた。
◇◇
宴会の途中で、美花ちゃんが具合悪そうに
抜け出して化粧室へ駆け込んでいた。
私が気になって追いかけて行くと
美花ちゃんは、つらそうに食べたものを
もどしてしまっていた。私は、慌てて
美花ちゃんの背中をさすってやって
もしかしてと思って聞いてみた。
「もしかして? おめでたか?」
「そうかもしれへん。先々月から月の物が来てなかったし」
「あかんやん! 病院は? 行ったんか?」
心配したとおりで、どうも美花ちゃんは
妊娠しているようやった。私は、宗ちゃんを呼んで
美花ちゃんを、部屋で休ませるように頼んだ。
妊娠初期に無理したら、流産とかの可能性があるからね。
「ほんまですか? 赤ちゃん出来たんや!」
「まだわからんで! 病院へ行ってへんし」
「それでも、用心するに越したことないからな!
お酒はアカンで! ゆっくり、部屋で休んどき」
美花ちゃんは渋々やったけど、宗ちゃんと
部屋で、休むことにしてくれた。私は仲居さんに
事情を話して、口当たりの良さそうなものを
後で部屋へ届けてやってくれと頼んでおいた。
「いよいよ美花ちゃんもお母さんかぁー。凄いなー」
「結婚してもうすぐ1年やからな。ええ感じやん」
「桜絵ちゃんとこが、もうそろそろ生まれる頃やからな!」
店がリニューアルしたら、赤ちゃん連れが増えるねと
比奈と麻由美ちゃんが、顔を見合わせて笑っていた。
その後は、小さい幼児も連れてることやしと
宴会は早めに切り上げて
みんな部屋へ戻って、ゆっくり休むことにした。
翌朝。少しだけ、土産屋をまわってから
予約していたレンタカーで、無事にみんなで帰路へ着いた。
車の中からの景色を見ても
絵美里は、キャッキャと嬉しそうにはしゃいでいた。
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