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失恋=運命の出逢い
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◇◇◇◇◇
「俺と別れてくれへんか? 他に好きな人が、出来たんや」
久し振りに…付き合っていた
彼から呼び出されて、私はデートやと
勘違いして、気合を入れてお洒落して
浮かれて会いに行ったら、会って
5分も経たんうちに、バッサリと私の
彼への想いは、切り捨てられてしまっていた。
「ごめん。ごめんな!!」
その後は、私に謝って
彼は逃げるように会計を済まして
店を出て行ってしまった。
私はあまりの突然の出来事に
唖然としてしまって、彼を
引き止めることなんか出来ひんかった。
それからすぐに店を出て…
私がただフラフラと歩いてると
後ろから知った声で名前を呼ばれて
振り返ったら、私が良く行く飲み屋の
『オカンの店』のオカンが
心配そうな顔をして立っていた。
「亜紀ちゃん、どないしたん?
なんか魂が、抜けてしもたみたいな顔してるで。
なんかあったんか? 具合悪いんやったら、
うちに来て少し休んで行くか?」
私は、オカンに優しく
声をかけてもらって、気が抜けてしまったのか?
目から涙が一気に溢れてきて、止まらなくなってしまった。
オカンは、泣いている私の肩を抱いて
優しく宥めてくれて、とりあえず店へおいでと
オカンは、私を店まで連れていってくれた。
「おかえり~。オカン遅いやん! あれ? 亜紀ちゃん?」
留守番してた比奈ちゃんが
泣いてボロボロの私に驚いて
すぐにカウンターの中から飛んで来た。
私の顔は、朝早くから起きて
気合入れて頑張ったメイクが涙で流れて
グチャグチャになってしまって
見るも無残な状態になっていた。
「取り敢えず顔を洗ったほうがええな。
メイク落とし持って来てるから貸したるわ!」
比奈ちゃんが、おしぼりで
私の顔を拭きつつ、自分の荷物から
コットンとメイク落としを出して
グチャグチャになった私の顔を綺麗にしてくれた。
洗顔石鹸を借りて、洗面所で
自分で顔を洗って顔を拭いたら、
気持ちは不思議と落ち着いていた。
私が座敷に戻ったら
そこには何時もおるメンバーがほぼ揃っていた。
カウンターに、男性陣が皆移っていたから
女性陣に座敷から追い出されてしまったようやね。
「別にみんな一緒でもええのに…。
ごめん。何か気~使わせてしまって」
私はちょっと恥ずかしくなってしもて
顔を半分タオルで隠しながら、こうちゃんと
宗ちゃんにも会釈して座敷に座った。
私は、泣くだけ泣いたから
凄くお腹が空いてしまった。
とりあえず、オカンに夜定食を頼んで
ご飯も味噌汁もおかわりして
お腹いっぱい食べた後で、深呼吸したら
頭の中はすっかり現実に戻っていた。
「私な、振られてん。3年…付き合ってた人が
おったんやけど、最近…忙しいとか、何とか理由つけて
会われへんかって、私も丁度今の仕事が面白くなって
来た所やったから、彼も忙しいんやな~程度にしか
思ってなかってん。そやけど…久し振りに会いたいって
言われて、彼に会ったら。別れてくれって言われてしもて」
私が彼に恨み言を言う前に
彼は、とっとと私の前から消えてたわ~と
目に涙を浮かべて笑ったら
美花ちゃんが優しく頭を撫でてくれていた。
「亜紀ちゃんは、まだ22歳や!まだまだ
ええ人に出会える! そんな男はこっちから
捨ててやったらええねん。他にええ男はなんぼでもおる!」
目に少し涙を浮かべて麻由美ちゃんが
これは私の奢りやでと、私にカシスソーダを手渡した。
「ちょっとマンネリ化してきてるなぁ~とは、
自分でも感じててんけど、まさか他に好きな人が出来て
別れるとか…全く考えてなかったから、ショックというか
びっくりしてしもて、何も言い返せんかったわ」
よくよく考えると、仕事の方が面白くて
つい彼のことは後回しだったことに
美花ちゃんたちに話しながら、
私は、改めて気付かされていた。
「亜紀ちゃんは、最近仕事に夢中やったから
彼が他の人に気が行ってしもたんやろな
まだまだ彼も若いから、そういうことってあると思うわ」
オカンがあっけらかんとした感じで
言うたことに、美花ちゃんがそんなん男の勝手やん!
とえらい剣幕で怒っていた。
「美花ちゃんありがとう。でもな、ほんま
オカンの言うとおりなんやで。私な、彼と会うよりも
仕事の方が今は、ほんまに楽しかったもんやから、
ついつい彼の気持ち考えてなかってん。好きな人が
出来たって、正直に言うてくれただけマシやと思う」
自分のことのように
怒ってくれている美花ちゃんに、
私はお礼を言って、正直な気持ちを
お酒の力を借りて吐き出していた。
すると美花ちゃんが、何かを思い付いたようで
パッと私の顔を、真剣な顔で見つめていた。
「そや! 新しい恋をまたすればええねん!
早く嫌なことは忘れて、新しい恋を見つけたらええねん!」
美花ちゃんが、私の背中をバシバシ叩いて言った。
「お見合いしよう! なっ♪ お見合いしよ♪
とにかく、新しい出会いが必要やで!」
美花ちゃんの意見に賛同した
麻由美ちゃんも、私の顔を覗き込んで笑っていた。
それを聞いてた宗ちゃんが
声を上げてカウンターから座敷まで来て
身を乗り出していた。
「その話。乗らせて! 丁度な、誰かええ子を
紹介して欲しいって、会社の先輩に頼まれてて
困っててんけど、亜紀ちゃんさえ良かったら、
週末に会ってみてくれへんかな? そんな変な人違うし、
結構真面目でおもろい人なんやで。僕が保証する」
宗ちゃんはそう言って
手を合わせて頭を私に下げていた。
正直、振られたばっかりで
どうしたら良いのかわからなくて
私は返事に困ってしまった。
「会うだけ会ってみたら? 気に入らんかったら
気に入らんかったでええやん!」
美花ちゃんは、また
私の背中をバシバシ叩いて笑っていた。
「わかった、わかった。会ってみる。会ってみる。
しんみりしてても仕方ないし、これも何かの縁って
ことなんかもしれへんから、会ってみるわ」
美花ちゃんの勢いに負けた私は
宗ちゃんの会社の先輩と
お見合いする事を承諾していた。
3年も付き合った彼に
振られたその日の内に
お見合いが決まってしまうやなんて…
少し私は複雑やったけど、これはこれで
何かの縁かもしれないと思って、
週末を楽しみに
その夜は1人になっても泣かずにグッスリ眠れた。
◇◇◇
お見合いの当日になって
私は、コンパとか合コンに
縁が無かったこともあって凄く
緊張していた。着ていく服を選ぶのに
2時間もかかって、メイクして
髪をセットするのにも
2時間近くかかってしまった。
緊張して眠りも浅かったから、
朝早く起きていたので
用意する時間はたっぷりあったけど
こんなに気合を入れて
お洒落したことなんて
前の彼の時でも、無かった気がする。
約束の時間が夕方だったので
お見合いする前に、美花ちゃんが
買い物に付き合って欲しいと言っていたので
私は、バタバタと待ち合わせの場所へ向かっていた。
土曜日の繁華街は凄い人混みで
普段あまり繁華街に縁がない私は
駅から待ち合わせの地下の広場へ
行くまでの間に、頭がくらくらしていた。
地下の広場へ着くと
少し時間が早かったみたいで…
美花ちゃんは、まだ来ていなかった。
私は人混みに酔ったみたいで
少しめまいがして立っていられなくなって
私はその場にしゃがみ込んでしまった。
「大丈夫ですか?」
すると、
すぐ側におった30代位の
健康的な小麦色の肌をしたイケメンの
やたらデカイお兄さんが、しゃがみ込んでいる
私の顔を覗き込んで来て
心配そうに声を掛けてくれていた。
「ちょっと…久し振りにこんな場所へ来たから、
人に酔ってしまったみたいで、多分大丈夫です。ありがとう」
私が彼に愛想笑いをして
お礼を言ったと同時くらいに、
お兄さんは私をひょいと軽々と抱えて
傍にあったベンチに私を座らせてくれていた。
正直、前の彼にこんな扱いを
されたことが無かったので、私は
ちょっと驚いて、ドキドキしていた。
「ちょっと、待ってて下さいね!」
お兄さんは、私にそう言って
にっこり笑うと、近くにあった自動販売機で
ペットボトルのお茶を買って来てくれた。
「ありがとうございます」
素直に私は、お茶を受け取って
改めてお兄さんを見た。
冷たいお茶を飲んで、ホッと一息
ついている私の横で、彼は保護者のように
私に寄り添っていてくれている。
それにしても…やっぱデカイな
この人、身長190㎝位はあるよな。
なんて、私がジーっと彼を観察していると
少し離れた場所から、美花ちゃんが叫んでいた。
美花ちゃんに名前を呼ばれて
私が我に返ったら、お兄さんは
またにっこり笑って「もう大丈夫やね」と
言って立ち上がって手を振ると、人混みへ消えてしまった。
「どないしたん? 今の人? 知り合い?」
美花ちゃんが、心配そうに聞いてきたので
私は首を横に降って、通りすがりの人で
気分が悪くてしゃがみ込んでいた
私を介抱してくれた奇特な人だと説明して
イケメンやったから、連絡先の交換くらい
すれば良かったと悔しがっていたら
すぐに美花ちゃんのツッコミが入った。
「これから見合いする子が、言うことかいな!」
私の背中をバシバシ叩いてから
やっぱイケメンに女は弱いねんな!
と言って笑っていた。
2人で遅めのランチを済ませて
いろいろ買い物をしてまわっていたら
時間は、あっという間に過ぎていた。
美花ちゃんが、私に
相手がええ人やったらみんなで
一緒にデートしよなと言って笑っていた。
店の戸を開けて
私と美花ちゃんがただいま~!
と言って中へ入ると、何時もにも増して
オカンは笑顔で私を迎えてくれていた。
「おかえり~! 宗ちゃんら、もう来てるで~」
待ちきれなくなっていたのか?
のんびりしてる私の手を引いて
オカンが早く早くと座敷に引っ張っていった。
「すみません、どうもお待たせしました」
時間に少し遅れた私は
先に頭を下げて謝ってから
顔を上げてそのまま固まってしまった。
なんで固まってしもたかって?
それは、昼間のあの広場で
私を介抱してくれたデカイイケメンが
私の目の前におったんやもん。
それに向こうも驚いて、同じように固まっていた。
「亜紀ちゃん? 真斗さんも? 2人ともどうしたん?」
訳を知らない宗ちゃんは、
私と彼の顔を見てオロオロしていた。
「昼間は、本当にありがとうございました」
取り敢えず私は、お礼は言わなアカンよね…
と思い、深々と頭を下げてお礼を言った。
「あれから、大丈夫やった? もう大丈夫?
立ってないで早く座ってゆっくりして」
彼は心配そうにまた、私の体を気遣ってくれていた。
「これは、運命やな♪」
クスクスと笑いながら
後ろから美花ちゃんが囁いたので
私は急に恥ずかしくなってしまって
顔が多分、真っ赤になっていた。
「美花は、いらん事言わんでええで!
亜紀ちゃんが困ってるやろ?」
宗ちゃんが、美花ちゃんの頭を軽く小突いてから
顔見知りなら大丈夫やな?と真斗さんに言って笑った。
真斗さんは宗ちゃんの
会社の先輩で32歳、私より
10歳も歳が上だった。
童顔だから若く見えるけど
物腰は落ち着いてるので、歳相応に感じる。
がっちりしてるのは
学生時代にラグビーをやっていたそうで
身長がデカイのは、遺伝だと言って笑っていた。
その後は、なんか
その日に出会ったばかりとは
思えないくらい、気さくに話が出来て
自然にまた次に会う日を約束していた。
「運命って本当にあるのかもな~」
真斗さんは、そう言うと
私をじーっと見つめていた。
「具合悪そうな亜紀ちゃんを広場で見かけて、
普段やったら、見て見ぬ振りしてまうんやけど
なんか今日は、放っておけんかったんや! だから
亜紀ちゃんが、店に入って来たのを見た時は
ほんまにびっくりしたんやで!」
「私もです。あの後…連絡先を聞けば良かったって
後悔してたから…まさか会えるやなんてビックリしました(笑)」
私は、真斗さんと店に居る間
ずっと会話も途切れることもなく
楽しい時間を過ごすことが出来たことに満足していた。
帰りも真斗さんは
私が住んでいるマンションまで
送ってくれて、今日は初日やからと言って
軽くハグしてから名残惜しそうに帰って行った。
運命ね。確かに
あの日、彼にふられて
オカンに会っていなかったら
真斗さんには会ってないもんね。
…なんてことを思いながら、次に
彼と会う日を思うと、ワクワクしたり
ドキドキして、私はいつの間にか
恋する乙女になっていた。
「俺と別れてくれへんか? 他に好きな人が、出来たんや」
久し振りに…付き合っていた
彼から呼び出されて、私はデートやと
勘違いして、気合を入れてお洒落して
浮かれて会いに行ったら、会って
5分も経たんうちに、バッサリと私の
彼への想いは、切り捨てられてしまっていた。
「ごめん。ごめんな!!」
その後は、私に謝って
彼は逃げるように会計を済まして
店を出て行ってしまった。
私はあまりの突然の出来事に
唖然としてしまって、彼を
引き止めることなんか出来ひんかった。
それからすぐに店を出て…
私がただフラフラと歩いてると
後ろから知った声で名前を呼ばれて
振り返ったら、私が良く行く飲み屋の
『オカンの店』のオカンが
心配そうな顔をして立っていた。
「亜紀ちゃん、どないしたん?
なんか魂が、抜けてしもたみたいな顔してるで。
なんかあったんか? 具合悪いんやったら、
うちに来て少し休んで行くか?」
私は、オカンに優しく
声をかけてもらって、気が抜けてしまったのか?
目から涙が一気に溢れてきて、止まらなくなってしまった。
オカンは、泣いている私の肩を抱いて
優しく宥めてくれて、とりあえず店へおいでと
オカンは、私を店まで連れていってくれた。
「おかえり~。オカン遅いやん! あれ? 亜紀ちゃん?」
留守番してた比奈ちゃんが
泣いてボロボロの私に驚いて
すぐにカウンターの中から飛んで来た。
私の顔は、朝早くから起きて
気合入れて頑張ったメイクが涙で流れて
グチャグチャになってしまって
見るも無残な状態になっていた。
「取り敢えず顔を洗ったほうがええな。
メイク落とし持って来てるから貸したるわ!」
比奈ちゃんが、おしぼりで
私の顔を拭きつつ、自分の荷物から
コットンとメイク落としを出して
グチャグチャになった私の顔を綺麗にしてくれた。
洗顔石鹸を借りて、洗面所で
自分で顔を洗って顔を拭いたら、
気持ちは不思議と落ち着いていた。
私が座敷に戻ったら
そこには何時もおるメンバーがほぼ揃っていた。
カウンターに、男性陣が皆移っていたから
女性陣に座敷から追い出されてしまったようやね。
「別にみんな一緒でもええのに…。
ごめん。何か気~使わせてしまって」
私はちょっと恥ずかしくなってしもて
顔を半分タオルで隠しながら、こうちゃんと
宗ちゃんにも会釈して座敷に座った。
私は、泣くだけ泣いたから
凄くお腹が空いてしまった。
とりあえず、オカンに夜定食を頼んで
ご飯も味噌汁もおかわりして
お腹いっぱい食べた後で、深呼吸したら
頭の中はすっかり現実に戻っていた。
「私な、振られてん。3年…付き合ってた人が
おったんやけど、最近…忙しいとか、何とか理由つけて
会われへんかって、私も丁度今の仕事が面白くなって
来た所やったから、彼も忙しいんやな~程度にしか
思ってなかってん。そやけど…久し振りに会いたいって
言われて、彼に会ったら。別れてくれって言われてしもて」
私が彼に恨み言を言う前に
彼は、とっとと私の前から消えてたわ~と
目に涙を浮かべて笑ったら
美花ちゃんが優しく頭を撫でてくれていた。
「亜紀ちゃんは、まだ22歳や!まだまだ
ええ人に出会える! そんな男はこっちから
捨ててやったらええねん。他にええ男はなんぼでもおる!」
目に少し涙を浮かべて麻由美ちゃんが
これは私の奢りやでと、私にカシスソーダを手渡した。
「ちょっとマンネリ化してきてるなぁ~とは、
自分でも感じててんけど、まさか他に好きな人が出来て
別れるとか…全く考えてなかったから、ショックというか
びっくりしてしもて、何も言い返せんかったわ」
よくよく考えると、仕事の方が面白くて
つい彼のことは後回しだったことに
美花ちゃんたちに話しながら、
私は、改めて気付かされていた。
「亜紀ちゃんは、最近仕事に夢中やったから
彼が他の人に気が行ってしもたんやろな
まだまだ彼も若いから、そういうことってあると思うわ」
オカンがあっけらかんとした感じで
言うたことに、美花ちゃんがそんなん男の勝手やん!
とえらい剣幕で怒っていた。
「美花ちゃんありがとう。でもな、ほんま
オカンの言うとおりなんやで。私な、彼と会うよりも
仕事の方が今は、ほんまに楽しかったもんやから、
ついつい彼の気持ち考えてなかってん。好きな人が
出来たって、正直に言うてくれただけマシやと思う」
自分のことのように
怒ってくれている美花ちゃんに、
私はお礼を言って、正直な気持ちを
お酒の力を借りて吐き出していた。
すると美花ちゃんが、何かを思い付いたようで
パッと私の顔を、真剣な顔で見つめていた。
「そや! 新しい恋をまたすればええねん!
早く嫌なことは忘れて、新しい恋を見つけたらええねん!」
美花ちゃんが、私の背中をバシバシ叩いて言った。
「お見合いしよう! なっ♪ お見合いしよ♪
とにかく、新しい出会いが必要やで!」
美花ちゃんの意見に賛同した
麻由美ちゃんも、私の顔を覗き込んで笑っていた。
それを聞いてた宗ちゃんが
声を上げてカウンターから座敷まで来て
身を乗り出していた。
「その話。乗らせて! 丁度な、誰かええ子を
紹介して欲しいって、会社の先輩に頼まれてて
困っててんけど、亜紀ちゃんさえ良かったら、
週末に会ってみてくれへんかな? そんな変な人違うし、
結構真面目でおもろい人なんやで。僕が保証する」
宗ちゃんはそう言って
手を合わせて頭を私に下げていた。
正直、振られたばっかりで
どうしたら良いのかわからなくて
私は返事に困ってしまった。
「会うだけ会ってみたら? 気に入らんかったら
気に入らんかったでええやん!」
美花ちゃんは、また
私の背中をバシバシ叩いて笑っていた。
「わかった、わかった。会ってみる。会ってみる。
しんみりしてても仕方ないし、これも何かの縁って
ことなんかもしれへんから、会ってみるわ」
美花ちゃんの勢いに負けた私は
宗ちゃんの会社の先輩と
お見合いする事を承諾していた。
3年も付き合った彼に
振られたその日の内に
お見合いが決まってしまうやなんて…
少し私は複雑やったけど、これはこれで
何かの縁かもしれないと思って、
週末を楽しみに
その夜は1人になっても泣かずにグッスリ眠れた。
◇◇◇
お見合いの当日になって
私は、コンパとか合コンに
縁が無かったこともあって凄く
緊張していた。着ていく服を選ぶのに
2時間もかかって、メイクして
髪をセットするのにも
2時間近くかかってしまった。
緊張して眠りも浅かったから、
朝早く起きていたので
用意する時間はたっぷりあったけど
こんなに気合を入れて
お洒落したことなんて
前の彼の時でも、無かった気がする。
約束の時間が夕方だったので
お見合いする前に、美花ちゃんが
買い物に付き合って欲しいと言っていたので
私は、バタバタと待ち合わせの場所へ向かっていた。
土曜日の繁華街は凄い人混みで
普段あまり繁華街に縁がない私は
駅から待ち合わせの地下の広場へ
行くまでの間に、頭がくらくらしていた。
地下の広場へ着くと
少し時間が早かったみたいで…
美花ちゃんは、まだ来ていなかった。
私は人混みに酔ったみたいで
少しめまいがして立っていられなくなって
私はその場にしゃがみ込んでしまった。
「大丈夫ですか?」
すると、
すぐ側におった30代位の
健康的な小麦色の肌をしたイケメンの
やたらデカイお兄さんが、しゃがみ込んでいる
私の顔を覗き込んで来て
心配そうに声を掛けてくれていた。
「ちょっと…久し振りにこんな場所へ来たから、
人に酔ってしまったみたいで、多分大丈夫です。ありがとう」
私が彼に愛想笑いをして
お礼を言ったと同時くらいに、
お兄さんは私をひょいと軽々と抱えて
傍にあったベンチに私を座らせてくれていた。
正直、前の彼にこんな扱いを
されたことが無かったので、私は
ちょっと驚いて、ドキドキしていた。
「ちょっと、待ってて下さいね!」
お兄さんは、私にそう言って
にっこり笑うと、近くにあった自動販売機で
ペットボトルのお茶を買って来てくれた。
「ありがとうございます」
素直に私は、お茶を受け取って
改めてお兄さんを見た。
冷たいお茶を飲んで、ホッと一息
ついている私の横で、彼は保護者のように
私に寄り添っていてくれている。
それにしても…やっぱデカイな
この人、身長190㎝位はあるよな。
なんて、私がジーっと彼を観察していると
少し離れた場所から、美花ちゃんが叫んでいた。
美花ちゃんに名前を呼ばれて
私が我に返ったら、お兄さんは
またにっこり笑って「もう大丈夫やね」と
言って立ち上がって手を振ると、人混みへ消えてしまった。
「どないしたん? 今の人? 知り合い?」
美花ちゃんが、心配そうに聞いてきたので
私は首を横に降って、通りすがりの人で
気分が悪くてしゃがみ込んでいた
私を介抱してくれた奇特な人だと説明して
イケメンやったから、連絡先の交換くらい
すれば良かったと悔しがっていたら
すぐに美花ちゃんのツッコミが入った。
「これから見合いする子が、言うことかいな!」
私の背中をバシバシ叩いてから
やっぱイケメンに女は弱いねんな!
と言って笑っていた。
2人で遅めのランチを済ませて
いろいろ買い物をしてまわっていたら
時間は、あっという間に過ぎていた。
美花ちゃんが、私に
相手がええ人やったらみんなで
一緒にデートしよなと言って笑っていた。
店の戸を開けて
私と美花ちゃんがただいま~!
と言って中へ入ると、何時もにも増して
オカンは笑顔で私を迎えてくれていた。
「おかえり~! 宗ちゃんら、もう来てるで~」
待ちきれなくなっていたのか?
のんびりしてる私の手を引いて
オカンが早く早くと座敷に引っ張っていった。
「すみません、どうもお待たせしました」
時間に少し遅れた私は
先に頭を下げて謝ってから
顔を上げてそのまま固まってしまった。
なんで固まってしもたかって?
それは、昼間のあの広場で
私を介抱してくれたデカイイケメンが
私の目の前におったんやもん。
それに向こうも驚いて、同じように固まっていた。
「亜紀ちゃん? 真斗さんも? 2人ともどうしたん?」
訳を知らない宗ちゃんは、
私と彼の顔を見てオロオロしていた。
「昼間は、本当にありがとうございました」
取り敢えず私は、お礼は言わなアカンよね…
と思い、深々と頭を下げてお礼を言った。
「あれから、大丈夫やった? もう大丈夫?
立ってないで早く座ってゆっくりして」
彼は心配そうにまた、私の体を気遣ってくれていた。
「これは、運命やな♪」
クスクスと笑いながら
後ろから美花ちゃんが囁いたので
私は急に恥ずかしくなってしまって
顔が多分、真っ赤になっていた。
「美花は、いらん事言わんでええで!
亜紀ちゃんが困ってるやろ?」
宗ちゃんが、美花ちゃんの頭を軽く小突いてから
顔見知りなら大丈夫やな?と真斗さんに言って笑った。
真斗さんは宗ちゃんの
会社の先輩で32歳、私より
10歳も歳が上だった。
童顔だから若く見えるけど
物腰は落ち着いてるので、歳相応に感じる。
がっちりしてるのは
学生時代にラグビーをやっていたそうで
身長がデカイのは、遺伝だと言って笑っていた。
その後は、なんか
その日に出会ったばかりとは
思えないくらい、気さくに話が出来て
自然にまた次に会う日を約束していた。
「運命って本当にあるのかもな~」
真斗さんは、そう言うと
私をじーっと見つめていた。
「具合悪そうな亜紀ちゃんを広場で見かけて、
普段やったら、見て見ぬ振りしてまうんやけど
なんか今日は、放っておけんかったんや! だから
亜紀ちゃんが、店に入って来たのを見た時は
ほんまにびっくりしたんやで!」
「私もです。あの後…連絡先を聞けば良かったって
後悔してたから…まさか会えるやなんてビックリしました(笑)」
私は、真斗さんと店に居る間
ずっと会話も途切れることもなく
楽しい時間を過ごすことが出来たことに満足していた。
帰りも真斗さんは
私が住んでいるマンションまで
送ってくれて、今日は初日やからと言って
軽くハグしてから名残惜しそうに帰って行った。
運命ね。確かに
あの日、彼にふられて
オカンに会っていなかったら
真斗さんには会ってないもんね。
…なんてことを思いながら、次に
彼と会う日を思うと、ワクワクしたり
ドキドキして、私はいつの間にか
恋する乙女になっていた。
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