まさか魔王が異世界で

小森 輝

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5 魔王、戦う

まさか魔王が異世界で 14

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 武器屋を後にした俺たちは、上機嫌で町を歩いていた。
「剣というものを初めて持った……。なんというか、こう……感慨深いものがあるな!」
 剣は勇者の武器という固定観念があったせいで、かなり新鮮味がある。
 これで人間は戦っていたのか。リーチは短いし、強度も強い感じはしない。そう言えば、勇者は魔法の他にスキルを使っていた。おそらく、それが剣との相性がいいのだろう。俺は勇者ではないが、勇者を上回る魔王。勇者が使えるものは魔王の俺だって使えるはずだ。どうすれば使えるのだろうか。やはり、かっこよく振り回したりしたら使えるのだろうか。
「こら! あんまり振り回さないで! 誰かに当たったら危ないでしょ!」
「あ、あぁ、分かった……」
 俺は素直に小娘に謝った。
「全く……何が魔王よ。魔力はないし、子供の体だし、おまけにお金も持っていないじゃない」
「…………」
 すべて小娘の言うとおりだ。魔力もないし、子供の体だし、お金もない。というか、お金はあるのだが、魔力が一切ないので宝物庫から出し入れする事ができない。そもそも魔力があったところで、異なる世界から物を持って来ることができるのかは不明だが。まあ、小娘ができたのだから俺にもできるだろう。
「これからは私の言うことをちゃんと聞くんだよ、アペ君」
 完全に上下関係が決まってしまったような気がする。
「おのれ小娘……力を取り戻したら覚悟して」
「小娘じゃなくてミラお姉ちゃんでしょ?」
「調子に乗りおって……」
「ん? なに? 聞こえないんだけど? そんな態度だと、その剣、返して貰うよ? それに、夜ご飯もどうするんだろうね?」
 金がない以上、この小娘に頼るしか道はない。
「ミラ……お、お姉ちゃん……」
 なんたる屈辱! 生まれてこの方、こんな屈辱を味わったのは初めてだ。
「よくできたね、アペ君。よしよししてあげよう」
 俺の頭を撫でたいのだろう。だが、俺には憑依影装がある。学ばぬ小娘だ。俺に触れることはできないと言うのに。
「ねえ、アペ君。この黒い影、どうにかできないの?」
「これは俺の影だからな。影を切り離すことなどできるはずもないだろ」
「そこをなんとか……」
 自前の腕力で憑依影装を押し返そうとしているが、できるはずもない。
「くだらん。早く飯を食って宿に向かうぞ」
「あっ。私を置いていったらご飯も宿もないんだからね?」
「だから早く来いと言っているんだ!」
 全く、人間というものは、自分が上の立場だと知るとすぐつけあがる。悪い習性だ。この小娘もいずれは矯正せねばならない。
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