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「それで、何で僕と契約なんてしたんだよ。才能があるみたいなこと言ってたけど、僕は特別なにかができるわけでもないし、親がお金持ちってわけでもない。一般的な高校生なんだけど。そんな僕と契約して、お前にメリットがあるの?」
「別に、君が私に何か与えてほしいから契約したわけじゃないんだ。私は、君を通して、世界のあり方を変えたいだけなんだ。それに、君は自分が特別じゃないって思っているみたいだけど、君は特別だよ。この世界に特別ではない人間なんて存在しない。みんなが主人公で、みんながこの世界を作っているんだ。重要なのは、自分のことを特別だと思っているかどうかのなんだよ」
 しかし、僕は自分のことを主人公だなんて思えない。主人公って言うのは、もっと明るくて、何でもできて、人望もあって、クラスの中心にいるような人。そう、例えば、菊臣のような人が主人公なんだ。そして、僕はせいぜい、菊臣の物語に登場する友達。その友達かどうかも怪しいところだけど……。
「それで、契約するのは誰でもよかったとして」
「誰でもではないよ。君が選ばれたんだ」
「分かった。僕が選ばれた。それで、お前の目的ってのは何なんだ? そう言えば、サキュバスの男版とか言ってたし、精気を吸い取るとかなのか?」
「ん? あぁ、精気ね。まあ、私はこう見えても階級的には結構上の悪魔だから、こそこそ精気を搾り取る必要はないんだ。それに、君は見込みがあるから、自分から吸い取りにいかなくても、そちらから精気が舞い込んできそうだしね」
「そちらからって……」
 つまり、僕が奴に精気を渡す、つまり性行為をするといいたいのだろうか。そんなの天地がひっくり返ったってありはしない。
 しかし、そこで疑問に感じることがあった。
「あれ? でもさ、お前って、サキュバスの男版なんだろ?」
「簡単に説明すると、そうだね」
「じゃあ、サキュバスが男の精気を吸うんなら、その反対のお前は女の精気を吸うんじゃないのか? だったら、僕と契約したのって失敗じゃ……」
 奴の言うとおり、サキュバスの反対なら
「インキュバスの本来の姿はそうだね。でも、私はそこらのインキュバスとは違う! 私は女性の精気を必要としない! 私自ら精気を搾取する必要もない特別なインキュバスなのさ!」
 そう誇っているが、悪魔の事情なんて僕にはよく分からない。
「でも、精気の変わりになるものは必要なんだろ? お前は何を必要としてるんだ?」
「それは、愛さ! それも特上の愛! 特上の愛とは、両者の間にある壁が高ければ高いほど極上のものへと変わっていく。そして、その壁が最も高い愛とはなにか。それが男性同士の愛! つまり、BLさ!」
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