炎と風の反逆者

小森 輝

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小さすぎる世界への抵抗

炎と風の反逆者 57

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 作戦決行まで残り10分。
 俺と命は2人で山の麓まで下りて来ていた。
 目に見える距離に、俺が一昨日まで居たクレイドルが何も変わらず建っている。
 周りは木々に囲まれていて人の姿は見えないが、おそらく、あのクレイドルを囲むように仲間の班が囲んで開始の合図を待っているのだろう。
「緊張しているのか?」
「そりゃあ、少しはな」
「心配するな。ちょっと行ってちょっとぶっ壊す程度だ。難しいことは1つもない」
 そ、そりゃあ物騒で何よりだ。
『各班、異常の有無を連絡してください』
 伝宝さんの声が頭に響いてきた。あの人も今は真面目に仕事しているんだな。
「灰塚別動隊、異常なし」
 命は嬉しそうに告げた。おそらく、こういうことをやってみたかったのだろう。
 今、伝宝さんはいろんなところから連絡を受けている。おそらく、伝宝さんが一番大変で一番重要なポジションなのだろう。それでストレスが溜まり、命や俺にちょっかいを出しているのか。だとしたら、少しは許してやるべきなのだろうか。
『灰塚さん、私が聞いているからって、黙るのはいいですけど、そんなだと、つまらない女だと思って嫌われちゃいますよ』
 前言撤回。彼女は確実に楽しんでいる。絶対、自分が重要なポジションだなんて思っていない。
「……絶対、殺す」
 命の背後から赤いオーラが見える……
『まあまあ、緊張をほぐすための軽いジョークだって、まあ、誘くんがどう思っていたのかは私の知るところじゃないけどね』
 命が恐る恐る俺を見てきた。
「い、誘は私と一緒に居るのはつまらなくないよな?」
「も、もちろん。つまらないなんてことはないぞ」
 まさか、俺に飛び火してくるとは思っていなかった。やっぱり標的は命だけでなく、俺も含めていじっているのだろう。
「それより伝宝さん、こんな無駄話していて大丈夫なんですか?」
 せめてもの反撃を切り返してやる。
『ん? もうすぐ、全部の班から返事が集まるから、まあ、もうすぐ無駄話は出来なくなるだろうね』
 平気でそんなことを言う。
 つまり、俺たちと無駄話をしながらも報告を聞いていたということなのか。報告が来る班は一つや二つじゃないはずだ。この伝宝さんも命と負けず劣らずのとんでも人間なのだということか。
『誘くん、今、絶対、失礼なこと思ってたよね?』
「そ、そんなこと考えてないですよ」
 顔も見えてないだろうし、声も聞いていないはずなのに、なんて超直感だ。
『各班に告ぐ。これより、作戦を開始します。各班、報告を怠らないように。急遽、灰塚さんが参戦することになりましたが、作戦は当初と変わりません。なお、灰塚さんは苦戦を強いられているところに向かわせるつもりですので、善戦してください。それでは、ご武運を』
 なんか、最後のほうに脅迫めいたことを言っていたような気がするが、突っ込まないでおこう。
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