51 / 70
苦悩する疾風の担い手
炎と風の反逆者 51
しおりを挟む
午後7時、暇が充満した部屋にやっと新しい風が入ってきた。
「ど、どうしたんだ?」
開いた扉の先では、命が入るのを躊躇っている。
それも理解できる。俺の顔はかなりひどい顔をしているだろう。頬を膨らませ唇を3の字のように付きだし、目は半眼になっていると自覚はある。
「この部屋、何もないんだけど……」
あの後、ベッドで寝ようにも寝むれず、冷凍食品では味気ないと思い料理をしようと冷蔵庫を開けるも、食材は一切なかった。そもそも、調理器具がやかんと小さな鍋が一つしかない時点でおかしい。
本当にすることが無くなってしまい、部屋を無駄に周回したり、読むこともしない本を手に取って戻したり、そして最終的には、ベッドで枕を抱きかかえながら命の帰りをじっと待っていたのだ。
「な、何もないことはないだろ……」
「命はいつもこの部屋で何をやってるんだ?」
「そこのつまらない本を読んだり、クマの……いや、なんでもない」
クマのぬいぐるみで遊んでいるのか。意外とかわいいところもあるんだな。
それはともあれ、彼女も本棚に並んでいる本をつまらないと思っているのか。まあ、彼女はばりばりの体育会系ってイメージだから仕方ないか。
「なあ、せめてテレビぐらいあってもいいんじゃないか?」
「テレビは電波がな……」
よく考えれば、こんなところに、しかも反乱組織の拠点に、電波が受信されることはまずないだろう。
「とりあえず、入ってきなよ」
「それも、そうだな」
命は部屋に入ってきて椅子に座った。今は隣に座らないんだな。
「そんなにこの部屋、つまらないかな……」
命がちょっと落ち込んでいる。
「そ、そんなことないぞ。ほら……あの……そんなことないって!」
フォローしようにも、何一つ娯楽と言うものがないこの部屋では何も言えない。
「はぁ……テレビのほかに何が必要だろうか」
ため息交じりに命は呟いた。
何が必要かと聞かれても、いざとなると困ってしまう。
「ぱ、パソコンとかは?」
「電波がな……」
そ、そうか。テレビと同じように、パソコンも無理か。
「じゃ、じゃあ……」
やばい。早くも手詰まり気味だ。諦めるな、絞り出すんだ。
「漫画とかは?」
「情報がないから、何が面白いのか分からないからな……」
何事もテレビなどで情報を得ないと無駄使いになってしまってもったいないということか。
「料理とかはどうだろう」
「できないからな……」
冷凍食品を嬉々として俺に出している辺り、できないのだろうとは思っていたが……まあ、想像通りではあるのだけれど。
「やっぱり、女性として料理は出来た方がいいのだろうか?」
「ど、どうだろう。そりゃあ、手料理を食べたいって気持ちはあるけどさ……無理にしなくてもいいんじゃないかな。女性の魅力って言うのは料理だけじゃないだろうし」
可もなく不可もなく。これは俺なりのベストアンサーだろ。
「そうか、料理ぐらい、頑張ればできるかな……」
「いざとなれば、料理上手な友人を紹介するよ」
幸いにも、和洋中なんでもレシピさえ分かれば作ってしまえる猛者が一人いる。
「誘にはそういう友人もいるのか……」
悔しそうに歯を食いしばっている。俺はなにか間違ったのだろうか。
「ま、まあ、今日は命も疲れただろうし休むといいよ」
「そうだな。明日に備えて休むとするか」
そう言って、命は浴室へ歩いて行った。
「ど、どうしたんだ?」
開いた扉の先では、命が入るのを躊躇っている。
それも理解できる。俺の顔はかなりひどい顔をしているだろう。頬を膨らませ唇を3の字のように付きだし、目は半眼になっていると自覚はある。
「この部屋、何もないんだけど……」
あの後、ベッドで寝ようにも寝むれず、冷凍食品では味気ないと思い料理をしようと冷蔵庫を開けるも、食材は一切なかった。そもそも、調理器具がやかんと小さな鍋が一つしかない時点でおかしい。
本当にすることが無くなってしまい、部屋を無駄に周回したり、読むこともしない本を手に取って戻したり、そして最終的には、ベッドで枕を抱きかかえながら命の帰りをじっと待っていたのだ。
「な、何もないことはないだろ……」
「命はいつもこの部屋で何をやってるんだ?」
「そこのつまらない本を読んだり、クマの……いや、なんでもない」
クマのぬいぐるみで遊んでいるのか。意外とかわいいところもあるんだな。
それはともあれ、彼女も本棚に並んでいる本をつまらないと思っているのか。まあ、彼女はばりばりの体育会系ってイメージだから仕方ないか。
「なあ、せめてテレビぐらいあってもいいんじゃないか?」
「テレビは電波がな……」
よく考えれば、こんなところに、しかも反乱組織の拠点に、電波が受信されることはまずないだろう。
「とりあえず、入ってきなよ」
「それも、そうだな」
命は部屋に入ってきて椅子に座った。今は隣に座らないんだな。
「そんなにこの部屋、つまらないかな……」
命がちょっと落ち込んでいる。
「そ、そんなことないぞ。ほら……あの……そんなことないって!」
フォローしようにも、何一つ娯楽と言うものがないこの部屋では何も言えない。
「はぁ……テレビのほかに何が必要だろうか」
ため息交じりに命は呟いた。
何が必要かと聞かれても、いざとなると困ってしまう。
「ぱ、パソコンとかは?」
「電波がな……」
そ、そうか。テレビと同じように、パソコンも無理か。
「じゃ、じゃあ……」
やばい。早くも手詰まり気味だ。諦めるな、絞り出すんだ。
「漫画とかは?」
「情報がないから、何が面白いのか分からないからな……」
何事もテレビなどで情報を得ないと無駄使いになってしまってもったいないということか。
「料理とかはどうだろう」
「できないからな……」
冷凍食品を嬉々として俺に出している辺り、できないのだろうとは思っていたが……まあ、想像通りではあるのだけれど。
「やっぱり、女性として料理は出来た方がいいのだろうか?」
「ど、どうだろう。そりゃあ、手料理を食べたいって気持ちはあるけどさ……無理にしなくてもいいんじゃないかな。女性の魅力って言うのは料理だけじゃないだろうし」
可もなく不可もなく。これは俺なりのベストアンサーだろ。
「そうか、料理ぐらい、頑張ればできるかな……」
「いざとなれば、料理上手な友人を紹介するよ」
幸いにも、和洋中なんでもレシピさえ分かれば作ってしまえる猛者が一人いる。
「誘にはそういう友人もいるのか……」
悔しそうに歯を食いしばっている。俺はなにか間違ったのだろうか。
「ま、まあ、今日は命も疲れただろうし休むといいよ」
「そうだな。明日に備えて休むとするか」
そう言って、命は浴室へ歩いて行った。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
【書籍化進行中】魔法のトランクと異世界暮らし
猫野美羽
ファンタジー
※書籍化進行中です。
曾祖母の遺産を相続した海堂凛々(かいどうりり)は原因不明の虚弱体質に苦しめられていることもあり、しばらくは遺産として譲り受けた別荘で療養することに。
おとぎ話に出てくる魔女の家のような可愛らしい洋館で、凛々は曾祖母からの秘密の遺産を受け取った。
それは異世界への扉の鍵と魔法のトランク。
異世界の住人だった曾祖母の血を濃く引いた彼女だけが、魔法の道具の相続人だった。
異世界、たまに日本暮らしの楽しい二拠点生活が始まる──
◆◆◆
ほのぼのスローライフなお話です。
のんびりと生活拠点を整えたり、美味しいご飯を食べたり、お金を稼いでみたり、異世界旅を楽しむ物語。
※カクヨムでも掲載予定です。
私との婚約は政略ですか?恋人とどうぞ仲良くしてください
稲垣桜
恋愛
リンデン伯爵家はこの王国でも有数な貿易港を領地内に持つ、王家からの信頼も厚い家門で、その娘の私、エリザベスはコゼルス侯爵家の二男のルカ様との婚約が10歳の時に決まっていました。
王都で暮らすルカ様は私より4歳年上で、その時にはレイフォール学園の2年に在籍中。
そして『学園でルカには親密な令嬢がいる』と兄から聞かされた私。
学園に入学した私は仲良さそうな二人の姿を見て、自分との婚約は政略だったんだって。
私はサラサラの黒髪に海のような濃紺の瞳を持つルカ様に一目惚れをしたけれど、よく言っても中の上の容姿の私が婚約者に選ばれたことが不思議だったのよね。
でも、リンデン伯爵家の領地には交易港があるから、侯爵家の家業から考えて、領地内の港の使用料を抑える為の政略結婚だったのかな。
でも、実際にはルカ様にはルカ様の悩みがあるみたい……なんだけどね。
※ 誤字・脱字が多いと思います。ごめんなさい。
※ あくまでもフィクションです。
※ ゆるふわ設定のご都合主義です。
※ 実在の人物や団体とは一切関係はありません。
転生チートは家族のために~ユニークスキルで、快適な異世界生活を送りたい!~
りーさん
ファンタジー
ある日、異世界に転生したルイ。
前世では、両親が共働きの鍵っ子だったため、寂しい思いをしていたが、今世は優しい家族に囲まれた。
そんな家族と異世界でも楽しく過ごすために、ユニークスキルをいろいろと便利に使っていたら、様々なトラブルに巻き込まれていく。
「家族といたいからほっといてよ!」
※スキルを本格的に使い出すのは二章からです。
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。
八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。
パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。
攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。
ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。
一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。
これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。
※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。
※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。
※表紙はAIイラストを使用。
ご存知ないようですが、父ではなく私が当主です。
藍川みいな
恋愛
旧題:ご存知ないようですが、父ではなく私が侯爵です。
タイトル変更しました。
「モニカ、すまない。俺は、本物の愛を知ってしまったんだ! だから、君とは結婚出来ない!」
十七歳の誕生日、七年間婚約をしていたルーファス様に婚約を破棄されてしまった。本物の愛の相手とは、義姉のサンドラ。サンドラは、私の全てを奪っていった。
父は私を見ようともせず、義母には理不尽に殴られる。
食事は日が経って固くなったパン一つ。そんな生活が、三年間続いていた。
父はただの侯爵代理だということを、義母もサンドラも気付いていない。あと一年で、私は正式な侯爵となる。
その時、あなた達は後悔することになる。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~
胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。
時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。
王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。
処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。
これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。
婚約者を交換ですか?いいですよ。ただし返品はできませんので悪しからず…
ゆずこしょう
恋愛
「メーティア!私にあなたの婚約者を譲ってちょうだい!!」
国王主催のパーティーの最中、すごい足音で近寄ってきたのはアーテリア・ジュアン侯爵令嬢(20)だ。
皆突然の声に唖然としている。勿論、私もだ。
「アーテリア様には婚約者いらっしゃるじゃないですか…」
20歳を超えて婚約者が居ない方がおかしいものだ…
「ではこうしましょう?私と婚約者を交換してちょうだい!」
「交換ですか…?」
果たしてメーティアはどうするのか…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる