炎と風の反逆者

苦悩する疾風の担い手

炎と風の反逆者 ５０

　そんなことを考えていたら建物についてしまい、ゆっくりと地面に着地した。
　部屋に戻り、昼食を命と一緒にとったのだが、当然のように冷凍食品だった。おいしくない訳ではないが、手料理が食べてみたいという気持ちがあるせいで少し不服だ。
　それでも、午前中の模擬戦中に椅子を１つ追加されたことは感謝すべきことなのだろう。変にギクシャクしなくて済む。
　食事が終わった後は特にやることが無くなった。
　命は「私にはやることがあるから誘はゆっくり休んでくれ」と言って部屋を出て行ってしまった。俺よりも命の方が疲れているようにも見えたが、組織のリーダーと言うものは、結構、多忙なのだろうな。
　そんな経緯で俺は誰もいない部屋で１人きりになってしまい、暇を持て余すことになったわけだ。
「暇だ……」
　建物の中を探検でもしてみようか。だが、この部屋に戻ってこれる自信が俺にはないので部屋を出るのはやめておく。
　この部屋には娯楽と言うものが少ない。今時、テレビもないなんて、節電でもしているのだろうか。
　そう言えば、本棚があった。適当な物でも読んで暇を潰そう。
　立ち上がり、本棚を物色する。
　当然のように漫画なんてものはない。並んでいる者はすべて文庫本だ。
「うわぁ……」
　見ているだけで頭が痛くなってくる。俺には似合いそうにない。
　読書は挫折し、再び椅子に戻り、暇を弄ぶ。
　気になるものは押入れなのだが、あれは見たのがばれれば殺されかねない類の物だろう。そこまで死にたいとは思っていないので、ここはやめておく。
　あまりにも暇すぎたので、意味もなく椅子からベッドに移動してみる。意味もなく枕を抱え込みモフモフしてみる。
「暇すぎる……」
　昨日は激動の一日を送ったせいで暇なのは逆に落ち着かない。まるで嵐の前の静けさだ。そんなことを思っていると、現実に嵐は起こってくれるんだろうが、その様子は息をひそめている。
「寝るかな」
　ちょうどベッドに座っていることだし、省エネのためにも寝てしまうか。
　ベッドに寝そべって目を閉じる。
　だめだ、全く眠気が襲ってこない。授業中とかだったら襲ってくるのに、こういう時に限って襲ってこないなんて使えないな。
　眠気は襲ってこないが、そのままベッドの上をごろごろ転がる。
　そのまま何事もなく、ただただ、時間だけが過ぎて行った。