炎と風の反逆者

小森 輝

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疾走する紅蓮の導き

炎と風の反逆者 19

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 そんな顔に一時、見とれてしまっていたが、すぐに意識を切り替えた。
「全員ってどういうことだよ。お前、1人じゃないのか?」
「それは当たり前だろ。私たちは反乱組織なのだから。1人であるはずがないだろ」
「それも、そうだな」
 そう言われれば、確かにそうだ。灰塚が1人で乗り込んできたため、変な錯覚を起こしていたようだ。
「質問はそれだけか?」
「いや、たくさんある。あるんだが……」
 ありすぎて、何を聞けばいいのか分からなくなるレベルだ。
「混乱しているのだろう。それも仕方のないことだ。さて、それでは何から話すべきかな」
 灰塚は顎に手を当て考え始めた。
「とりあえず、なぜ君をさらってきたのか、ということについて話しておくか」
 灰塚はそう言いながら、俺の目の前に歩いてきた。
「君には私と共に戦ってもらいたいのだよ」
「はい?」
 思わず煽り文句を言ってしまった。そのため、灰塚の肩が少し動いただけで殺されると思い、瞼を強く閉じた。
 しかし、あの鮮烈な灼熱を浴びることはない。
「何をビクついている。そんなに私が怖いか?」
「そ、そりゃあ、あんな無茶苦茶な力を見せつけられたんだ。怖いに決まっているだろ」
「そうか……それは女性として不名誉だな」
「そ、そうか……軽率だった。すまない」
 今にも泣きだしてしまいそうな彼女の顔を見て、敵だというのに誤ってしまった。
 俺の言葉が意外だったのか、灰塚の表情は驚きへと変わり、そして、口元を手で覆いながら声を殺して笑った。
「こんな状況だというのに謝るなんて。クレイドルでの取引といい、君は本当に面白いな。ますます欲しくなったよ」
 灰塚は怖いほどの不敵な笑みを浮かべていた。
「それで、お前たちと一緒に戦えって言うのは正気なのか?」
「もちろん正気だ。私にはお前が必要不可欠だからな」
 あんな強力な力があれば、1人でクレイドルなど潰せるだろう。俺の力なんてあってもなくても変わらないと思うが、奇襲のためにでも使う気なのだろうか。奇襲だけだとしても、あそこには大切な人たちがいる。脅されたって協力する気なんてない。
「協力しないって言ったらどうなる?」
「そうだな……」
 殺すと即答されると思ったが、考え込むなんて予想外だ。
「俺を殺すだとか、俺が逃がした3人を殺すだとか、そういう脅しはしないのか?」
「脅したりして高圧的に従わせるのは趣味じゃないんだよ」
 どの口が言っている。初めて会ったときは力を見せつけ、逃げ道を塞ぎ、人質を取ったのはどこのどいつだ。
 そう思ったが、声には出さず心の中だけに留めておく。俺だって命が惜しくないわけではない。
「それじゃあ、俺が協力する理由はないんじゃないか?」
「そうか。君は戦う理由がほしいのか。それなら申し分ないだろう」
 灰塚は再び不敵な笑みを浮かべた。しかし、先ほどとは違い、笑みは俺ではない所に向いている。
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