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予知部と小さい共存者
予知部と弱気な新入生 35
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「とりあえず、精霊の正体についての話は置いておこう。姿なんてのは見つけたときにでも確認したらいい」
愛先輩がそういうので、私も今は考えるのをやめておこう。
「それよりも、奴の住処の方が大事だ。お前たちは奴を監視しようとしたが、住処までは見つけられなかったのだろ?」
「それは……そうだけど……。でも、仕方なかったんだ。ペンぐらいの大きさしか実体がないから、途中で撒かれるんだ」
「なるほどな。理由は分かった」
重要なことなのに、ネズミのミスで住処を特定できなかった。それなのに、愛先輩が落ち込んでいる様子はない。そもそも、そこまで根幹に関わる情報をネズミが見つけていないと最初から期待していなかったんだろう。
「それで、統計は?」
「統計? 何の?」
「精霊の出現場所だよ。住処は分からなくても、出現場所から大体の場所は予測できるだろ」
「それならそうと最初から言ってくれたらいいのに」
愛先輩は呆れていた。期待はしていないが、もう少し察しがいい会話をしたいのだろう。
「精霊は基本、この校舎と隣の校舎を行き来しているみたい。朝にこの校舎から出て行って、数回往復して、人間が少なくなったらこっちの校舎に帰ってくる感じ。基本、夜間は活動していない」
「やはり、この校舎で間違いないか……。ちなみに、この時間は精霊は戻っているのか?」
「うん。この時間は出歩いてないみたい」
「なるほど……。なら、しとめるなら今か……」
愛先輩は、なにやら物騒なことを呟いていた。私たちを敵とは言わないまでも仲間ではないと思っているネズ吉くんは、その言葉に震え上がっていた。
「お前たちが住み着いているのは一階と二階だろ? 三階と四階は誰も住んでいないのか?」
「そ、そんなの、答えられる訳ないだろ」
さっきまで質問には友好的に答えてくれていたのに、急に警戒しだした。おそらく、愛先輩のしとめるという物騒な言葉が猜疑心を呼び起こしてしまったのだろう。
「全く、面倒な奴だな。ただの確認だろ。一階二階に住んでいて、三階四階には住んでいない。それで合っているだろ?」
「お、教えられないって言ってるだろ。お前等、俺たちの住処を聞き出してしとめるつもりなんだろ! そうはいかないからな!」
やっぱり、愛先輩の失言が原因だったようだ。
「お前等を駆除するのに住処を聞き出すなんて無駄なことする訳ないだろ」
「な、なめやがって! 俺たちは誇り高き糸山のネズ一族だぞ! 殺チュウ剤で死ぬほど柔な化けネズミじゃないんだからな!」
「殺虫剤は虫を殺す薬だ。ネズミを殺す薬は殺鼠剤って言うんだ。覚えておけ」
愛先輩がそういうので、私も今は考えるのをやめておこう。
「それよりも、奴の住処の方が大事だ。お前たちは奴を監視しようとしたが、住処までは見つけられなかったのだろ?」
「それは……そうだけど……。でも、仕方なかったんだ。ペンぐらいの大きさしか実体がないから、途中で撒かれるんだ」
「なるほどな。理由は分かった」
重要なことなのに、ネズミのミスで住処を特定できなかった。それなのに、愛先輩が落ち込んでいる様子はない。そもそも、そこまで根幹に関わる情報をネズミが見つけていないと最初から期待していなかったんだろう。
「それで、統計は?」
「統計? 何の?」
「精霊の出現場所だよ。住処は分からなくても、出現場所から大体の場所は予測できるだろ」
「それならそうと最初から言ってくれたらいいのに」
愛先輩は呆れていた。期待はしていないが、もう少し察しがいい会話をしたいのだろう。
「精霊は基本、この校舎と隣の校舎を行き来しているみたい。朝にこの校舎から出て行って、数回往復して、人間が少なくなったらこっちの校舎に帰ってくる感じ。基本、夜間は活動していない」
「やはり、この校舎で間違いないか……。ちなみに、この時間は精霊は戻っているのか?」
「うん。この時間は出歩いてないみたい」
「なるほど……。なら、しとめるなら今か……」
愛先輩は、なにやら物騒なことを呟いていた。私たちを敵とは言わないまでも仲間ではないと思っているネズ吉くんは、その言葉に震え上がっていた。
「お前たちが住み着いているのは一階と二階だろ? 三階と四階は誰も住んでいないのか?」
「そ、そんなの、答えられる訳ないだろ」
さっきまで質問には友好的に答えてくれていたのに、急に警戒しだした。おそらく、愛先輩のしとめるという物騒な言葉が猜疑心を呼び起こしてしまったのだろう。
「全く、面倒な奴だな。ただの確認だろ。一階二階に住んでいて、三階四階には住んでいない。それで合っているだろ?」
「お、教えられないって言ってるだろ。お前等、俺たちの住処を聞き出してしとめるつもりなんだろ! そうはいかないからな!」
やっぱり、愛先輩の失言が原因だったようだ。
「お前等を駆除するのに住処を聞き出すなんて無駄なことする訳ないだろ」
「な、なめやがって! 俺たちは誇り高き糸山のネズ一族だぞ! 殺チュウ剤で死ぬほど柔な化けネズミじゃないんだからな!」
「殺虫剤は虫を殺す薬だ。ネズミを殺す薬は殺鼠剤って言うんだ。覚えておけ」
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