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スラッガー 10
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その後、二人だけの勉強会は、最終下校時刻まで続いた。しかし、だからといって、何かが起こることはなかった。
下校時に寄り道をすることもなく、結局、違和感の正体は分からなかった。だが、そんなことも一晩寝たら記憶からなくなっていた。
「おはよう、母さん」
いつもより遅い起床。いつもより遅い朝食。
「今日は遅いのね。夜更かしでもしたの?」
「今はテスト期間だからだよ。ていうか、心配するなら、夜更かしじゃなくて遅刻の方だろ」
少し間が抜けた母親に呆れながらも、バターを塗っただけのパンに噛り付く。
「あら、テスト期間なら、なおさら夜更かしの方が心配じゃない。一夜漬けなんて体に悪いことしちゃダメよ?」
「心配しなくても、オカと毎日勉強しているから、夜更かしなんてしなくても大丈夫だよ」
朝から勉強の話をさせられたからだろうか。寝起きは食欲が湧かない。
食パンの半分だけで満足して、学校へ行く支度を始めた。
「半分しか食べてないじゃない。そう言えば、お弁当も残しているみたいだし……」
「ご飯の量は減らしていいって言っているのに減らさないからだろ」
「そうかしら。高校生の男の子って言ったら、これぐらい食べても足りないぐらいだと思うのに……」
「それは運動しているときの話。今はテストに向けて勉強で忙しいんだから」
「嘘ばっかり。今日は遊びに行くくせに」
「たまには息抜きも……って、なんで知っているんだよ」
「スマートフォンって便利よね。ちょっとしたことでも連絡できるんだから」
親友と母親が携帯電話で連絡を取り合っているなんて、正直、気持ち悪い。だが、そんなことを言ってしまうと拗ねてしまいそうだ。そうなると、機嫌がなおるまで、家事をストライキしてしまうので、口には出さないでおこう。
「オカに変なこと言うなよ?」
「大丈夫よ」
「本当かよ……」
とても不安なのだが、連絡しないように説得するだけ無駄だろう。それに、話し込んでいては学校に遅刻しかねない。早朝の課外授業がないテスト期間なのに、遅刻をするなんて笑い話にもならない。
「とりあえず、弁当の量は減らしておいてよ」
「覚えていたらね」
この様子では、明日も減っていないのだろう。この話題も話しているだけ無駄なのかもしれない。
いつも通り、ずっしりと重い弁当箱をバッグに入れて、玄関へと向かう。
「忘れ物はない?」
「遠足じゃないんだから……。いってきます」
「いってらっしゃい」
玄関を抜けて朝の空気を吸い込む。心地よい空気が体を目覚めさてくれる。季節のせいか、それとも時間帯のせいなのかは分からないが、日差しが暖かい。
少しだけ物足りなさを感じながらも、自転車に跨り、学校へと向かった。
いつも通りの風景。だが、この道は最短距離とは少し逸れている。別に、刺激が欲しくて違う道を通ったわけではない。日課となった寄り道があるのだ。
「おはよう。今日もいつも通り遅刻だな」
「数分ぐらい許してくれよ。それに、別に学校に遅刻するわけじゃないんだから、このぐらいは誤差の範囲内だ」
「まあ、そうだな。それに、迎えに来てくれている手前、文句はあんまり言えないし」
そこは親友であるオカの家だ。
下校時に寄り道をすることもなく、結局、違和感の正体は分からなかった。だが、そんなことも一晩寝たら記憶からなくなっていた。
「おはよう、母さん」
いつもより遅い起床。いつもより遅い朝食。
「今日は遅いのね。夜更かしでもしたの?」
「今はテスト期間だからだよ。ていうか、心配するなら、夜更かしじゃなくて遅刻の方だろ」
少し間が抜けた母親に呆れながらも、バターを塗っただけのパンに噛り付く。
「あら、テスト期間なら、なおさら夜更かしの方が心配じゃない。一夜漬けなんて体に悪いことしちゃダメよ?」
「心配しなくても、オカと毎日勉強しているから、夜更かしなんてしなくても大丈夫だよ」
朝から勉強の話をさせられたからだろうか。寝起きは食欲が湧かない。
食パンの半分だけで満足して、学校へ行く支度を始めた。
「半分しか食べてないじゃない。そう言えば、お弁当も残しているみたいだし……」
「ご飯の量は減らしていいって言っているのに減らさないからだろ」
「そうかしら。高校生の男の子って言ったら、これぐらい食べても足りないぐらいだと思うのに……」
「それは運動しているときの話。今はテストに向けて勉強で忙しいんだから」
「嘘ばっかり。今日は遊びに行くくせに」
「たまには息抜きも……って、なんで知っているんだよ」
「スマートフォンって便利よね。ちょっとしたことでも連絡できるんだから」
親友と母親が携帯電話で連絡を取り合っているなんて、正直、気持ち悪い。だが、そんなことを言ってしまうと拗ねてしまいそうだ。そうなると、機嫌がなおるまで、家事をストライキしてしまうので、口には出さないでおこう。
「オカに変なこと言うなよ?」
「大丈夫よ」
「本当かよ……」
とても不安なのだが、連絡しないように説得するだけ無駄だろう。それに、話し込んでいては学校に遅刻しかねない。早朝の課外授業がないテスト期間なのに、遅刻をするなんて笑い話にもならない。
「とりあえず、弁当の量は減らしておいてよ」
「覚えていたらね」
この様子では、明日も減っていないのだろう。この話題も話しているだけ無駄なのかもしれない。
いつも通り、ずっしりと重い弁当箱をバッグに入れて、玄関へと向かう。
「忘れ物はない?」
「遠足じゃないんだから……。いってきます」
「いってらっしゃい」
玄関を抜けて朝の空気を吸い込む。心地よい空気が体を目覚めさてくれる。季節のせいか、それとも時間帯のせいなのかは分からないが、日差しが暖かい。
少しだけ物足りなさを感じながらも、自転車に跨り、学校へと向かった。
いつも通りの風景。だが、この道は最短距離とは少し逸れている。別に、刺激が欲しくて違う道を通ったわけではない。日課となった寄り道があるのだ。
「おはよう。今日もいつも通り遅刻だな」
「数分ぐらい許してくれよ。それに、別に学校に遅刻するわけじゃないんだから、このぐらいは誤差の範囲内だ」
「まあ、そうだな。それに、迎えに来てくれている手前、文句はあんまり言えないし」
そこは親友であるオカの家だ。
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