スラッガー

小森 輝

文字の大きさ
上 下
7 / 31

スラッガー 7

しおりを挟む
 だが開始して、一分と保たずに飽きてしまった。
 頬杖をついて、だらけた姿勢になるが、それでも、手に持ったシャーペンだけは動かす。
 もう、字の形も文字の並びも気にしない。そんなことだから意味の無い物になってしまうのだろうが、とりあえず、点数を貰えればそれでいい。
 書くだけではつまらないと思っていると、いいことを思いついてしまった。
「そうだよ。お前がテストにでる問題を予測して、俺がそれを丸暗記すれば楽で確実じゃないか!」
 優秀なオカが、テストに出そうなところをピックアップしてくれれば、間違いないはずだ。我ながら、名案を思い付いてしまったようだ。
 そう思っていたのは自分だけで、オカは呆れた目をしていた。
「あのな。そんなことが出来たら、俺は100点を取っているぞ?」
「100点じゃなくてもいいんだよ。オカができる範囲でさ。70点代とかで十分だから」
 冗談ではなく、俺は本気で言っている。オカが本気でやってくれれば可能だと思っている。そのお零れを頂けるのであれば、ありがたく頂く所存だ。
「仕方ないな……。分かったよ。重要な箇所ぐらいは教えてやるから」
「よっし!」
 無理だと思っていたが、何でも言って見るものだ。
 オカが俺を甘やかすなんてことは、滅多にない。これは、とてつもないチャンスなのだ。一言も聞き逃さないように、今までにないほど集中して話を聞く。
「ここからここまでを全部暗記すれば100点だ」
 オカがテスト範囲に指定されている教科書のページを見せてきた。
「いや、そういうのじゃなくて……もっとピンポイントでさ……」
「そう言われてもな……。答えだけ教えても、使い方だったり、問題に適した回答なのかどうかだったり、その辺を理解しておかないと無理だろ」
「それは……」
「漢字だったり、英単語だったり、数式だったり、基本的には暗記なんだから。それが何なのか理解したほうが覚えやすいだろ。何事も積み重ねが……」
「分かった分かった。聞いた俺が悪かったよ」
 天才は一日にしてならず。コツコツと積み重ねた努力が、大きな才能として形を成す。
 かつての俺が信条にしていた言葉だ。まさか親友に言われるなんて思わなかったが。だが、テストまでは後1週間しかない。もう、積み重ねていく日にちも少ないわけで……。
「手っ取り早くいい点数が取れる方法があればな……」
「だったら、暗記するのが一番早い方法だぞ」
「それ以外で何かないか考えているんじゃないか」
「そんなものがあったら、とっくに見つかっていると思うんだけどな。あぁ、カンニングとか前日に問題用紙を盗むなんてことはしないでくれよ」
「中学の頃から不良みたいな見た目だってよく言われたし、今のクラスにも馴染むのに時間がかかったけど、本来の俺はそこまで悪じゃない。オカが一番よく知っているだろ」
 不正行為をするほど、俺は落ちぶれちゃいない。そんなハイリスクを犯すのなら、素直に赤点を取って補習を頑張る方がましだ。それに、オカに迷惑がかかることはしたくない。たった一人の親友なのだから、オカに借りは作りたくない。まあ、ノートを借りたり、勉強を教えて貰ったり、そういった借りは作りっぱなしなのだし、これからも借り続けようと思っている。
「効率的な勉強方法を考えるのは勝手だけどな、口だけじゃなくて、ちゃんと手も動かせよ」
「……やってるよ」
「今シャーペン持ったくせに」
 一回だけ呆れた顔を見せただけで、それ以外はノートと教科書を往復しながら英単語の書き取りをしていて、俺の方は見ていなかったはずだ。それなのに、俺の手が全く動いてなかったことを見破っていた。親友と言う物は恐ろしいものだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

エロ・ファンタジー

フルーツパフェ
大衆娯楽
 物事は上手くいかない。  それは異世界でも同じこと。  夢と好奇心に溢れる異世界の少女達は、恥辱に塗れた現実を味わうことになる。

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

妻がヌードモデルになる日

矢木羽研
大衆娯楽
男性画家のヌードモデルになりたい。妻にそう切り出された夫の動揺と受容を書いてみました。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

処理中です...