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 しかし、ここまで完璧な壁尻ができるとは思わなかった。せっかくなので、記念にじっくり観察することにした。もちろん、後ろもだ。
「いやぁ。眼福眼福」
 お尻がつきだしているだけだというのに、壁尻というものはなぜこうも芸術的なのだろうか。
「お、おい! なのをしておる! ぐぬぅ……抜け出せぬ……」
 一通り、鑑賞も済ませたので、交渉するとしよう。
「さて、俺の勝ちなわけだし、一つ、お願い事を聞いてもらおうかな」
「何じゃと? ジン、お主程度の人間があまり頭に乗るなよ」
「あれ? いいのかなぁ? ダンジョンが消滅するのは時間の問題なわけだし、このままだと闘技場の真ん中でこの状態のままになっちゃうよ?」
「ふん。それがどうした」
「そっかぁ。レイは付いてるっていっても、美人だしなぁ。このままだと、何をされても抵抗できないねぇ。闘技場にはいっぱい人も入れるし、たくさんの人にも見られちゃう。そっかぁ。レイはそれが望みだったのかぁ」
「おのれジン……。何が望みじゃ」
「俺の望みはそんな難しいことじゃないよ。ダンジョンが消滅して、レイを解放した後は俺たちを見逃してほしい。それだけだ」
「よかろう。ただし、今回だけじゃぞ」
 契約成立、と言いたいところだが、こんな口約束、なんの制約にもならない。
「一応、裏切ったときのため、念には念を……」
 俺は、念のため、レイの下腹部、そして、頭へと能力を使った。
「な、何をした」
「そうだな……。説明もかねて、ちゃんと発動するかのテストをやっておくか」
 というわけで、俺はレイにかけた能力を発動させた。
 感度3000倍強制絶頂。
「んぐぉあごほおぉおおああぁぁ!」
 聞いたこともない喘ぎ声とともに、壁の向こう側でバケツをひっくり返したような水の音がした。
「ヤバッ……」
 慌てて、俺は能力を止めた。
「あがぁ……ッヒ……」
 使った本人ではあるが、流石にこれは限度を飛び越していた。あのレイでさえ、1秒と耐えれず、涙を流しながら気が触れたしまったのだ。こんなもの、自分自身に使ったら、とんでもないことになっていた。せめて、感度は2倍あたりから使うべきだ。
「だ、大丈夫か……?」
 心配になり、体を揺すろうと肩に触れた。
「うぐぅ……」
 体が小刻みに震え、壁の向こうでは、水が弾ける音がした。もう能力は使っていないというのに、肩に手が触れただけでこの有様だ。絶対に感度3000倍はやりすぎた。
 ただ、先ほど絶頂を迎えたおかげで、理性が戻ってきたようだ。
「わ、わひゃひの、ひゃらたに、ひゃにをひた」
 呂律が回っていないが、私の体に何をしたと言いたいのだろう。
「その……俺の命令で強制的に絶頂するようにした。あと感度3000倍」
 最後の言葉は聞こえないように小声で早口に言った。
「にゃ、にゃんらひょれは……」
 何だそれはと言われても、これ以上の説明はできない。
「まあ、この状態なら攻撃なんてする気も起きないだろ」
 俺は壁尻の拘束を解くことにした。
 体の支えがなくなったことにより、レイは床に倒れ、その瞬間、ビクンと体が跳ねてから落ち着いた。
「しっかし、やりすぎたな……」
 壁尻を解いたことにより、壁の向こう側がどうなっているのかも目の当たりにした。レイの足下には、いろんな体液によってできた水たまりができていて、押し寄せてきた快感のレベルが伺える。
「とりあえず、埋めとくか……」
 壁尻の能力を応用し、床を巧みに動かしてレイの体液を埋めておいた。
 襲われたのは俺の方だが、レイには申し訳なさしか感じない。完全に過剰防衛だった。
 そうやって反省しているときだった。地面がぐらぐらと揺れ始めた。
「これは……みんながやってくれたんだな」
 おそらく、みんながボスを倒してくれて、ダンジョンが消滅しようとしているのだろう。
 揺れはどんどん大きくなり、外を見ると、徐々に下へと沈んでいっているのが分かる。
 これで終わったと安心したが、一人だけ、この状況で窮地に立たされている人物がいた。
「はぁああぁぁぁっ!」
 レイは地面の揺れで盛大に感じていた。そして、もう辛抱できなくなったのだろう。
「お、覚えていろよ、ジン! この借りは必ず!」
 そう言って、レイは高くジャンプすると、デストロイと呼んでいた機械の腕が今度は翼へと変形して、レイは飛び去って行った。
 これでどうにか自分でまいてしまった種は回収できたようだ。
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