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「いいですけど、まだダンジョンに行くかどうかは決めてませんよ?」
「そうですか。実は、そのことについてご相談がありまして……」
「何ですか?」
「ここではなんですんで、奥でお話します」
 どうやら、他には聞かれたくない話らしい。おそらく、昨日の社長室のような部屋に案内されるのだろう。
「分かりました」
 判断に困っていたからなのか、カナはすぐに返事をし立ち上がった。
「あぁ、できれば全員来ていただきたいのですが……」
 当然、闘技場にあるダンジョン以外には行くことを禁止されているので、やることはない。
 俺たちは、一瞬、全員で顔を見合わせて立ち上がった。それだけでギルドマスターは俺たちの意志を察した。
「ありがとうございます。ではこちらへ」
 ギルドにいる冒険者たちの視線を集めながらギルドマスターについて行くと、やはり、昨日の部屋に案内された。
「とりあえず、座ってくれ」
 そう言われたので、とりあえず、全員、ソファに座った。
「今回の闘技場ダンジョンの件についてなんだが、その攻略を君たちのパーティーに依頼したい」
 その言葉を聞いて、全員が渋い顔をした。
「すいません。それについてはこちらもまだ検討中で……」
「気持ちは分かるんですが……。今回、あるパーティーに同行してダンジョン攻略に向かってほしいんです」
「そのあるパーティーって言うのは?」
「Sクラスの冒険者です。ただ人数が少ないので、その補助をあなた方のパーティーにやっていただきたいのです」
「Sクラス!? そんなパーティーがこの町に?」
「はい。緊急事態なので呼びました」
 ダンジョンの難易度が低いとは言っても町中に出現しているので、ちまちま時間をかけずに早急に攻略して無力化したいのだろう。
「でも、そんなパーティーが何で私たちと一緒に? もっと強いパーティーなら他にいくらでも……」
「その……。こう言っては何ですが、戦力は必要ないんです。今回、呼んでいるSクラスの冒険者は3人で、数多のダンジョンを攻略してきています。おそらく、今回のダンジョンもクリアできるでしょう」
「じゃあ、私たちなんて足手まといになるんじゃ……」
「あなた方は、先日、地竜の渓谷で不測の事態に陥りながらも生還したという実績があるます。その経験を借りたいのです。彼女らは3人でダンジョンをクリアしているとは言っても、初見のダンジョンはクリアしていません。未知のダンジョンには適正がないのです。なので、あなた方にサポートしてほしいのです。最悪な結果はSクラスの冒険者が闘技場ダンジョンで行方不明になってしまうことなので」
 それならダンジョンに同行するのも仕方ないのだろうかと悩み始めた時だった。大きな音を立てながら勢いよく扉が開いた。
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