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 そんな暑苦しい男と話しているうちに、3人の準備は整ったらしい。
「お待たせ……。薄着になったっていうのに涼しくなった気がしないわ」
 俺はバッグの中を減らすとか装備を外すとか、そう言ったことを考えていたのだが、全く違った。暑いから服を脱いだのだ。それも、かなり大胆に。
「ちょちょ。何してるのさ、カナ、それにコウランまで!」
「暑いから服を脱いだだけですけど……」
 冷静そうなコウランですらさも当然だと言ったような顔をしている。しかし、この服装は些か過激がすぎる。カナはまだ控えめなので目の保養レベルでいいのだが、コウランに関しては、もはやはみ出している。こんな状態で戦闘を行い激しい動きをしたら確実にポロリする。こんな我が儘ボディのポロリだ。目の保養どころか目に毒だ。
「ほ、ほら、男もいるんだし、そんな格好になったら……」
「大丈夫大丈夫。暑いときは毎回こんな感じだし」
 暑くなると毎回こんな服装になっているなんて、とんだ淫乱サークルだ。
「ほら、ジンも恥ずかしがってないで脱ぎなよ。少しは涼しくなるよぉ」
「い、いや、私は……」
「ほらほら、遠慮せず」
「そこまでにしておかないか」
 そう言って現れたのはエドムだ。しかし、いつもの服装ではない。エドムも服を脱いでいる。ただ、薄着なんて生ぬるいものではない。
 エルドはふんどし一丁に防具を装備しただけだった。
「早く行こう。時間を無駄にするべきではない」
 エドムは颯爽と進み、それにみんなもついて行く。誰も突っ込みはしない。
「あいつ、あんな自虐キャラだったのか……」
 パーティーメンバーの新たな一面を見つつ、俺も後を追った。

 この渓谷に来るまではそれほど暑くなかったし、そもそも、渓谷は川も流れていて涼しいはずなのに、ここまで暑いなんて異常だ。これもこの地竜の渓谷というダンジョンの特性なのだろうか。
「それにしても暑いな……。いっそ、川の中に入った方が涼しいんじゃないのか?」
「やっぱり? そう思って水着も用意してきたんだよね。あっ、もちろん、ジンの分もあるから」
「い、いや、俺は……」
 この世界の水着なんて間違いなく過激に決まっている。誰かの目がある場所でそんな布地の少ないものを着るなんてごめんだ。
 カナが無理矢理着せてくる可能性もあったのだが、予想外のところから否定が入った。
「それはやめておいた方がいい」
「なんでさ!」
「この暑さの理由は、そこの川が原因なんだからな」
 そう言ってエルビーは川の方を指さした。
「川から湯気が出ているだろ? 川が熱くて気温が上がってるんだ。おそらく、川自体が天然の温泉になってるんだと思う。ここは山が真っ二つになった感じだからな。真ん中で火口がむき出しになって、そこに川が流れて熱されてるんだろうさ」
 脳筋タンクだと思っていたが、案外、まともなことを言うやつだ。おかげで、俺の過激な水着姿を晒さずにすんだ。
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