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「よしっ! 腕も治ったな。じゃあ、男がいつまでも地べたに座り込んでいるんじゃない。ほら、立て」
女騎士は治ったばかりの腕を掴むと、力ずくで僕を引っ張り上げた。
「助かってよかったな。私はレビィ。そんでこっちがメイだ。お前は?」
「僕は……フラットラッシュ」
一応、まだドッキリを疑っているので、本名ではなくカードゲームで使っているプレイヤーネームを名乗っておくことにした。
「フラットラッシュか……。長い名前だな。フラットって呼ばせてもらうな」
馴れ馴れしい、というより、どちらかというと面倒くさがり屋な雰囲気がある。
「それにしても、珍しい名前だな。見た感じ、武器も持っていないみたいだし……それに、その奇妙な服装も……」
僕は今、ジャージを着ていた。
カードゲーム大会の決勝とはいえ、一番リラックスできる服装はジャージだったのでそれを着ていたのだが、この状況を考えると背伸びをして慣れないスーツを着ていなくてよかったと思える。ただ、どちらにしろ、全身鎧の女騎士を前にしては、どちらも異色な服装になってしまう。
「お前、どこの町から来たんだ?」
「東京……いや、日本! 日本から!」
「日本……。メイ、聞いたことがあるか?」
フードの美少女は首を振った。
どうやら東京や日本を知らないようだ。二人とも日本人っぽい顔ではないので外国人なのだろう。だとしたら、日本と言っても伝わらない。
「そっか! ジャパン! ジャパンだよ!」
「なんだ? パンが有名な町なのか?」
残念ながら、全く伝わらなかった。そもそも日本語を喋っているので、わざわざ日本をジャパンと言い直す必要はなかったかもしれない。
「しっかし、珍妙な男だな。どこともしれない町から、武器も持たずにこんなところに」
「もしかしたら……転移魔術……」
「転移魔術って、一瞬で移動できるあれのことか?」
「都市内での運用はすでに実現しているし、もしかしたら、長距離の転移魔術でここに飛ばされたのかも」
「飛ばされたって……。つまり、失敗したってことか?」
「おそらく。その影響で記憶が混濁しているのかもしれない」
「なるほど。お前もとんだ災難だったな」
同情するなら金をくれ! と叫びたい気持ちだ。
「ひとまず、町に戻りましょう。今後のことも考えなければいけませんし」
「少し暴れたりないけど、仕方ない」
女騎士は治ったばかりの腕を掴むと、力ずくで僕を引っ張り上げた。
「助かってよかったな。私はレビィ。そんでこっちがメイだ。お前は?」
「僕は……フラットラッシュ」
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僕は今、ジャージを着ていた。
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「そっか! ジャパン! ジャパンだよ!」
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残念ながら、全く伝わらなかった。そもそも日本語を喋っているので、わざわざ日本をジャパンと言い直す必要はなかったかもしれない。
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「もしかしたら……転移魔術……」
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「飛ばされたって……。つまり、失敗したってことか?」
「おそらく。その影響で記憶が混濁しているのかもしれない」
「なるほど。お前もとんだ災難だったな」
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