悪役令嬢は見る専です

小森 輝

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悪役令嬢は見る専です 66

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「まったく、酷い人ですわ!」
 結婚式も終え、いろんな事が一段落した後、私はイーラをオリジナル空間魔法「××しないと出られない部屋」から出してあげた。
「強硬手段とはいえ、ごめんね」
「まったくですわ! あんなことやこんなことを要求しておいて……」
 性悪女で嫌いな人物なのだが、今回ばかりは申し訳ないと思っている。何せ、ウェディングドレスを着てあれだけ私に自慢していたのだから。
「政略結婚とはいえ、楽しみにしてたもんね。私もあなたのドレス姿を見ることができなかったし」
「残念だったわね、ヤヨイ・フジシオ。私の可憐なドレス姿を見ることができなくて。でも、安心しなさい。いつかまた結婚するときはあなたも呼んであげますから! その時は悔しそうに指を加えて見る事ね!」
「う、うん。そうする」
 なんだか思っているほどショックを受けていなさそうだ。でも、ダメージを受ける部分は確かにある。
「結婚がおじゃんになって、モルソイエ家の陸運の話とかは大丈夫なの?」
「何を言ってるの。結婚を蹴ったことでグリゼーラ国には可能な限りの譲歩をして貰う予定よ。お父様も非常に喜んでいたわ」
「そ、そう。よかったわね」
 だからモルソイエ家はあんな簡単に結婚の話を白紙にしたのか。これはグリゼーラ家、主にヒューブが苦労しそうだ。でも、それ以上の見返りは確かにあっただろう。
「それよりも、あなたに弟がいたなんて知らなかったわ! 初耳よ!」
「あぁ、昨日、養子に貰って弟にしたばかりだったから」
「昨日!? またあなたもクレイジーなことをするわね。でも、おかげでいいものも見れたわ。男性同士で愛を誓い合う。最上級の愛の形を見た気がしますわ」
「でしょ! 性別を越えた愛。これ以上の愛なんて、この世に存在しない!」
「同性愛……悪くないかもしれませんね……」
 うっとりと私を見つめてくるイーラの目にぞわっとする悪寒がした。
「そうでした! ここの女王様ともお話ししようと思っていたんでした! 意志の強いすばらしい女王……。私もお友達になってきますわよ!」
 そう言って、イーラは行ってしまった。イーラに付きまとわれ、陸運についても譲歩し、今後のアルシュが心配だ。
 しかし、愛し合うアルフとクラストが一緒にいることができ、そして、ヒューブもアルフと離れ離れになることもなくなった。ここから泥沼の三角関係になるのかと思うと、今後の三人の関係性が楽しみになってくる。
 ただ、私も色々動いて疲れた。
「さて、帰りましょうか」
「分かりました。ベートが馬車の準備もしています。荷物も纏まっていますので、すぐにでも出れます」
 いつもいつも優秀な執事だ。
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