悪役令嬢は見る専です

小森 輝

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4 若き次期王の悩み

悪役令嬢は見る専です 49

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 着替えるといってもドレスに着替えるわけではない。結婚式は明日なのだから、今日は城も準備に追われ、催し物をする暇なんてないだろう。でも、部屋着ではない。今日は外出する予定があるので、それなりの服装を心がける。
「やっぱり準備がいいわね……」
 部屋でくつろぐ用の服。会食用のドレス。そして、ちょっとした外出用の派手すぎずそれでいて上品な洋服に結婚式の来賓でも着れるような少し抑えめのドレスと、それぞれの状況にあわせた私好みの服が準備されている。ただ行って帰ってくるだけの予定だったのに、こんな風に宿泊する事になっても問題ない品揃えには流石の一言だ。
 私がいい感じの洋服に着替えると、ちょうどセバスも戻ってきた。
「着替えはお済みのようですね。それでは、紅茶を淹れますので」
 そう言って、セバスが手早く準備していると、忽ちいい香りが部屋中に広がった。
「どうぞ。きっと目が覚めますよ」
「ありがとう」
 昨日の夜にヒューズさんが淹れてくれた紅茶とはまた違う。高級感はないものの、いつものこの香りは脳に残った睡魔を洗い流してくれるようだ。私にとっては、これが寝覚めの最高の一杯に違いない。
「それで、今日はどうなさいますか」
「そうね……。まあ、言われた通り、外に出ましょうか」
 昨日、私はアルフくんに頼まれたことがある。
 それは、ある人に魔石を渡して欲しいと言うもの。
 おそらく、渡された魔石には何かのメッセージが録画されているのだろう。それを代わりに渡してきて欲しいと言うものだ。もちろん、アルフくん自信が渡してきた方がいいのだろうが、今日は結婚前日。主役であるアルフくんがフラフラと外出なんて出来ないだろう。それに、昨日、逃げることにあまり乗り気ではなかったのももしかしたらこの魔石が関係しているのかもしれない。本当なら魔石に記録された映像を見たいのだが、そこまで無粋なことを私はしない。
「外出されるのですね。分かりました。それでは、後でベートにも話をしておきましょう」
「そういえば、ベートさんは何しているの?」
 一緒に来たはずのベートさんとは馬車から降りた時以来、会っていない。
「ベートなら馬の世話をしに行きましたよ。動物の世話は朝が早いらしいので、私より早く起きて行ってしまわれました」
 そんなに朝早くからご苦労なことだ。
「じゃあ、一緒に行きましょう。そして、ベートさんに声をかけたらそのまま馬車っていう感じで」
「かしこまりました。それでは、その紅茶を飲み終えたら行きましょうか」
「そうね」
 ゆったりとしたティータイムを楽しんだ後に行動へと移した。
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