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3 親友とその弟
悪役令嬢は見る専です 42
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「ふぅ……危ない危ない。危うく覗きに行って見つかるところだった」
またしても、本能のままに暴走して失敗をしてしまうところだった。私だっていつまでも学習しない生き物ではない。そもそも、学習できなければ、ここまでのし上がってくることも、魔王を倒すことだって無理だった。これぐらい、私だって自制ができる。
「素晴らしい心がけなのですが……」
セバスが言いたいことは、すぐに分かった。
「あれ……ちょっと、声が近づいてきてない?」
気のせいでなければ、徐々に声は大きくなってきている。つまり、話している二人も近づいてきているということ。
「そこに気づかれるとは。流石、お嬢様」
「流石、お嬢様、じゃないのよ! そんなこと、子供だって分かるわよ! いや、そうじゃなくて」
今、直面している問題は気づく気づかないではない。
「ど、どうしよう……か、隠れる場所は……」
と言っても、そんな都合よくいい場所なんて見つかるはずもない。
「や、やばい。どうしよう、セバス」
「私に聞かれましても……」
こういうときに限ってセバスは役に立たない。それがさらに私の不安を煽ってくる。ただ聞き耳を立てたぐらいで、別に疚しいことなんてしていないはずなのに、私の心には焦りだけが蔓延している。
どうにかしないといけないと言う漠然とした目的を抱きながら、何もできずにおろおろしている私の元へと、着実に声は近づいてきている。
そして、もうすぐそこまで、来ている。この曲がり角の向こう側。
今ならまだどうにかできると脳では理解できているのだが、それだけが脳の思考領域を支配していて解決策なんて考えられない。ふと、助けを求めてセバスの方を見ると、私とは違い落ち着いている。でも、何か策がある落ち着き方ではない。この落ち着きは、悟り。もう、諦めているのだ。
もうだめだと諦めた私の目の前に、声の主たちが私の目の前に現れた。
「あっ……。これは、ウェラベルグ女王、とセバス様……」
全く気づかなかったという様子で私の前に現れたのは、アルフくんの近侍であるヒューブさん。そして、その後ろにヒューブさんに引っ張られるようにしてアルフくんもいた。やはり、セバスの予想は当たっていたようだ。しかし、予想が当たっていたことが必ずしも良いことではない。
「お二人は、こんな時間に何を……?」
「あぁ……えっと……それは……」
別に夜遅くでもないし、出歩いていてもおかしくない時間帯なのだが、思考がうまく回らず、まるでいかがわしいことをしていて言い訳に困っているような返答になってしまった。
またしても、本能のままに暴走して失敗をしてしまうところだった。私だっていつまでも学習しない生き物ではない。そもそも、学習できなければ、ここまでのし上がってくることも、魔王を倒すことだって無理だった。これぐらい、私だって自制ができる。
「素晴らしい心がけなのですが……」
セバスが言いたいことは、すぐに分かった。
「あれ……ちょっと、声が近づいてきてない?」
気のせいでなければ、徐々に声は大きくなってきている。つまり、話している二人も近づいてきているということ。
「そこに気づかれるとは。流石、お嬢様」
「流石、お嬢様、じゃないのよ! そんなこと、子供だって分かるわよ! いや、そうじゃなくて」
今、直面している問題は気づく気づかないではない。
「ど、どうしよう……か、隠れる場所は……」
と言っても、そんな都合よくいい場所なんて見つかるはずもない。
「や、やばい。どうしよう、セバス」
「私に聞かれましても……」
こういうときに限ってセバスは役に立たない。それがさらに私の不安を煽ってくる。ただ聞き耳を立てたぐらいで、別に疚しいことなんてしていないはずなのに、私の心には焦りだけが蔓延している。
どうにかしないといけないと言う漠然とした目的を抱きながら、何もできずにおろおろしている私の元へと、着実に声は近づいてきている。
そして、もうすぐそこまで、来ている。この曲がり角の向こう側。
今ならまだどうにかできると脳では理解できているのだが、それだけが脳の思考領域を支配していて解決策なんて考えられない。ふと、助けを求めてセバスの方を見ると、私とは違い落ち着いている。でも、何か策がある落ち着き方ではない。この落ち着きは、悟り。もう、諦めているのだ。
もうだめだと諦めた私の目の前に、声の主たちが私の目の前に現れた。
「あっ……。これは、ウェラベルグ女王、とセバス様……」
全く気づかなかったという様子で私の前に現れたのは、アルフくんの近侍であるヒューブさん。そして、その後ろにヒューブさんに引っ張られるようにしてアルフくんもいた。やはり、セバスの予想は当たっていたようだ。しかし、予想が当たっていたことが必ずしも良いことではない。
「お二人は、こんな時間に何を……?」
「あぁ……えっと……それは……」
別に夜遅くでもないし、出歩いていてもおかしくない時間帯なのだが、思考がうまく回らず、まるでいかがわしいことをしていて言い訳に困っているような返答になってしまった。
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