悪役令嬢は見る専です

小森 輝

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3 親友とその弟

悪役令嬢は見る専です 36

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 食堂へ行くと、アルシュの家族が勢揃いしていた。
 煌びやかなシャンデリアに、豪華な額縁に飾られた絵画。無駄に長い食卓に広がっている白いテーブルクロスは清潔で染み一つない。
 どこを見ても、どこへ行っても、格の違いを見せられるばかりだ。生まれや育ちも違うけれど、そもそも国の大きさから違うので格どころの違いではないのだけれど。
「やっときた。ヤヨイ、こっちらへどうぞ」
 すでに座っているアルシュが手招きしながら呼んでいる。こんな長いテーブルにわざわざ隣同士で座る必要はないのだろうが、アルシュが隣に座れと言っているのでそこに座らせてもらおう。
 本来ならグリゼーラ家の使用人が椅子を引いてくれるのだが、私の場合はセバスが椅子を引いてくれた。
 こういう場に執事が同伴しているというのは少し珍しいのだが、なんせ私は日本の庶民生まれ。粗相があってはいけないので、セバスが見張りをしているというわけだ。もちろん、私が食事の作法を心得てないということではない。その辺は女王としてウェラベルグという名を襲名してから、これでもかと叩き込まれた。なので、大方、大丈夫だろうとは思うのだが、私も完璧ではないので、それを補填するためにセバスがついている。
 とは言っても、私の側で立っているセバスを合わせても、ここには6人しかいない。私とアルシュ以外の人は疎らに座っているので、30人ぐらい座れる長テーブルでは互いの距離がとても離れている。
「ヤヨイ、そのドレス、すごく似合ってるわね。なんだか男にも負けない強さを感じるわ」
「……ありがとう」
 その誉め方では、まるでこのドレスが返り血で赤く染まっているようなニュアンスを感じ取れるのだが、本当にそんなことを考えていそうなので聞かないでおこう。
 それよりも、私もアルシュのドレスを誉めておかなければ。
 そう思ったのだが、私が口を開く前に横から会話を奪われてしまった。
「アルシュ、無駄なお喋りで困らせてはいけませんよ。そのお方は我らが大国、グリゼーラ国の隣国に位置するウェラベルグの女王なのだから」
 棘のある口調で話しかけてきたのは、長テーブルの一番端、おそらく上座に位置する場所に座っている男の人。アルシュのお父さんにして前グリゼーラ国王のアレストス・グリゼーラ。私とアルシュが仲良くしているのを隠すこともなく嫌な顔をしていることからも、私への印象は悪いのだろう。
 そして、アレストス前王から左に何席か空けて座っているのが、アルシュのお母さん、ルシュフィーナ前王妃。なんでも高貴な貴族の出身なんだとか。そんな彼女は嫌そうな顔はしていないが、私とは一切顔を合わせようとしていない。
 これらから分かる通り、私はこの王族から歓迎されていない。
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