悪役令嬢は見る専です

小森 輝

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3 親友とその弟

悪役令嬢は見る専です 22

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 今までの経験を経て、私は改心した。
 そう、私は間違っていたんだ。BLを他者に強要させると言うことが。そもそも、BLに限らず愛というものを強要させることが間違っていた。
「そう、間違っていたのよ、私の愛は。BLというのはもっと神聖なもの。性別という高い壁を乗り越えた者だけがたどり着ける楽園。それはまさに、ヴァルハラ。そんな神聖なものを腐女子の身でありながら意図的に作り出そうなんてBLを冒涜しているようなもの。そもそも、愛とは育むもの。無理強いなんて無粋なことだった」
「お嬢様……何を言っているんですか……」
 自室だというのに、私の後ろにはセバスがいた。
「一応、ここは乙女の部屋よ? 例え執事のセバスとはいえ許可なく入ってくるのはどうかと思うのだけれど」
「申し訳ございません。しかし、何度もノックはしたんですが、お嬢様からの返事がありませんでしたので……。万が一のことも考えまして、無礼を承知で入らせていただきました」
「そ、そう……」
 ノックなんて全く聞こえていなかった。また私は自分の世界に入り込んで周りが見えていなかったのか。BLBL言っているけど、まずはこれを治さなければ人としてだめだと思う。でも、すぐに治る問題でもない。BL教育と一緒にゆっくりと自制できる心を身につけていこう。
 それはそうと、セバスが私の下に来たということは何か用があるということ。
「ご飯ならさっき昼食を食べたばかりだし、ティータイムにはまだまだ早いと思うのだけれど、私に何の用なの?」
「使者がお見えになっていまして……」
「使者? 誰の」
「ウェラベルグの隣国であるグリゼーラの女王、アルシュ・グリゼーラ様からの使者でございます」
「アルシュからの!? 何の用事かしら」
 BLとは全く関係ないのに、思わず笑みがこぼれた。それも当然だ。なんたって、アルシュはこの世界でたった一人の親友と言ってもいい人物なのだから。
「アルシュの頼みなら何だって聞いてあげるんだから!」
 アルシュとは魔王討伐時代に何かとお世話になった。その恩返しができるなら何だってしよう。
「それですが、使者からは映像魔法を内蔵した魔石を預かっています。これを」
「ありがとう」
 紫色の水晶をセバスから受け取った。これが魔石だ。地脈からあふれる魔力が結晶化したもので、これが生活の至る所で役に立つ。冷蔵庫なんかはこの魔石の力で中を冷やしている。まあ、電池のようなものだ。魔石に基礎的な魔法を組み込むと、魔石が内包している魔力の分だけ魔法を使い続けてくれる。もちろん、将来的には車もできるだろうが、残念ながら今の技術では馬車を動かす為に馬車以上の大きさの魔石が必要になる。魔力の効率化を進めばいいのだが、なかなか、そんなことを研究する物好きが現れない。
 とまあ、そんな魔石なのだが、この世界の技術では考えられないようなことも可能にしてしまう。その一つが、この映像の記憶だ。
 私が魔石に発動の命令をすると、魔石からSF映画に出てきそうなホログラム映像が現れた。
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