悪役令嬢は見る専です

小森 輝

文字の大きさ
上 下
19 / 67
2 boys loveを求めて……

悪役令嬢は見る専です 19

しおりを挟む
 今のところ、ルーデンくんに変わった動きはない。立ち寄った場所も花や苗が店頭に並ぶ園芸店のような場所だけで、今はもう城の方へと足を向けている。それに、園芸店で買ったあの大きな袋。あれではもう他にお店を回って買い物をすることも出来ないだろう。私の予想は外れてしまったようだ。いつもいつも、私は少し空回りが過ぎるのかもしれない。興奮しすぎて暴走したのを反省した後だというのに、また私は暴走してしまったようだ。その証拠に、ルーデンくんは特に何も怪しい行動はしなかった。そして、もう一つ……。
「少し寒くなってきた……」
 部屋着で来てしまったのに加え、慣れない運動で汗をかき、それによって体が冷え、今はとても寒い。これも私が考えなしに行動してしまった結果。
「お嬢様、お体が冷えます。これを」
 ちょうど冷えていた体に後ろから暖かな布をかけてくれた。
「……ありがとう」
 私の体は無意識に動いて、かけられた布の袖に腕を通していた。
「あれ……」
 肌触りがよく上質な生地。それに、控えめながら品のある装飾。よく見れば、これは私の上着……。
「って、セバス!?」
 後ろを見ると、そこにいたのは私の執事、セバスだ。つまり、私に上着をかけてくれたのは執事のセバスということになる。
 そんな誰が私に上着をくれたのかなんて、今はどうでもいい。
「どうしてセバスがここにいるのよ!」
 いつもならセバスは城の掃除や洗濯をしているはず。町にいるというのなら、ルーデンくんのように買い物が用事なのだろうが、しかし、セバスは買い物を他の人に頼んでいる。例えば、茶葉ならザックさんに、掃除道具ならルーデンくんにと。ただでさえ広い城を一人で掃除しているのだ。時間は誰よりも足りないだろう。それなのに、何でこんなところに……。まさか、ルーデンくんの逢い引き相手はセバスだったのか! それで、私を見つけたセバスが忠告の為に私の下に……。やはり、隠密魔法を習得するべきだろうか。
 私はそんな下劣なことを考えていたが、事実はとても恥ずかしいものだった。
「お嬢様が薄着で出ていくのを見かけましたので……。最近は冷えてきましたので風邪をひいてはいけないと思い、上着をお持ちしたんです」
 私が考えていることを汲んでくれるどころか、私の至らない部分を補ってまでくれている。まさに、完璧な執事。しかし、セバスは追跡できる魔法を使えなかったはず。まさか、私の思考を読んでここまで上着を届けてくれたのだろうか。そうだとしたら、もはや恐ろしさを抱くほどだ。
「それより、お嬢様は何を?」
「あっ、そうだった」
 私はルーデンくんを尾行している最中だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

【第1章完結】悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼第2章2025年1月18日より投稿予定 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

傷だらけの僕は空をみる

猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。 生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。 諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。 身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。 ハッピーエンドです。 若干の胸くそが出てきます。 ちょっと痛い表現出てくるかもです。

【BL】婚約破棄で『不能男』認定された公爵に憑依したから、やり返すことにした。~計画で元婚約者の相手を狙ったら溺愛された~

楠ノ木雫
BL
 俺が憑依したのは、容姿端麗で由緒正しい公爵家の当主だった。憑依する前日、婚約者に婚約破棄をされ『不能男認定』をされた、クズ公爵に。  これから俺がこの公爵として生きていくことになっしまったが、流石の俺も『不能男』にはキレたため、元婚約者に仕返しをする事を決意する。  計画のために、元婚約者の今の婚約者、第二皇子を狙うが……  ※以前作ったものを改稿しBL版にリメイクしました。  ※他のサイトにも投稿しています。

すべてはあなたを守るため

高菜あやめ
BL
【天然超絶美形な王太子×妾のフリした護衛】 Y国の次期国王セレスタン王太子殿下の妾になるため、はるばるX国からやってきたロキ。だが妾とは表向きの姿で、その正体はY国政府の依頼で派遣された『雇われ』護衛だ。戴冠式を一か月後に控え、殿下をあらゆる刺客から守りぬかなくてはならない。しかしこの任務、殿下に素性を知られないことが条件で、そのため武器も取り上げられ、丸腰で護衛をするとか無茶な注文をされる。ロキははたして殿下を守りぬけるのか……愛情深い王太子殿下とポンコツ護衛のほのぼの切ないラブコメディです

ブレスレットが運んできたもの

mahiro
BL
第一王子が15歳を迎える日、お祝いとは別に未来の妃を探すことを目的としたパーティーが開催することが発表された。 そのパーティーには身分関係なく未婚である女性や歳の近い女性全員に招待状が配られたのだという。 血の繋がりはないが訳あって一緒に住むことになった妹ーーーミシェルも例外ではなく招待されていた。 これまた俺ーーーアレットとは血の繋がりのない兄ーーーベルナールは妹大好きなだけあって大いに喜んでいたのだと思う。 俺はといえば会場のウェイターが足りないため人材募集が貼り出されていたので応募してみたらたまたま通った。 そして迎えた当日、グラスを片付けるため会場から出た所、廊下のすみに光輝く何かを発見し………?

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@12/27電子書籍配信
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

処理中です...