悪役令嬢は見る専です

小森 輝

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1 供給がなければ作ればいいじゃない!

悪役令嬢は見る専です 11

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 ザックさんは瞳を閉じているルーデンくんへと近づく。そして、両肩を掴み、ゆっくりと顔を寄せ、いよいよ唇と唇が……合わさらない!
 ザックさんの唇はルーデンくんの唇ではなく額に触れていた。
「これでいいだろ?」
「いい訳ないでしょ! 逆に何でこれでいいと思ったの? 私の言い方が悪かった? キスよキス。キスって言ったらディープに決まっているでしょ! 舌と舌を絡め合わせながら綿密に唾液を混ぜ合わせ、そして、息をすることを忘れていた二人が呼吸を荒げながら離れ、そして、それを名残惜しそうに唾液が糸を引き、お互いの舌を結ぶ。それはまさに、舌と舌に結びついた赤い糸!」
 最高のキスとはそういうものだ。こんなの同性愛でなくても分かるというのに。
「なんでこんなことも分からないの? その年で童貞なの? 魔法使いにでもなろうとしたの?」
「なっ……俺だって経験ぐらいあるわ! それと、俺は魔法使いじゃなくて料理人だ!」
「ならそれをやりなさいよ! さあ!」
「いや……それは流石に……なあ」
「僕もちょっと……親しき仲にもやっていいことと嫌なことはありますから……」
 二人とも乗り気ではないようだ。でも、この××しないと出られない部屋の特性があれば、必ず屈する。何かのジャンルに入るきっかけなんて何でもいいのよ。問題はそこからどう育てていくか。この二人はあと一押しでこちら側に落ちる。
「ほら! ルーデンくんをリードしてあげるのは経験者であるザックさんの役目よ。これまでルーデンくんが頑張ってきたんだからザックさんもいつまでもヘタレてないで気合い見せなさいよ!」
「抱き合うとか、そのぐらいのスキンシップならいいんだが……キスとかそう言うのになるとな……やっぱりボーイズバーに行ってくれとしか……」
「くぅ……」
 ××しないと出られない部屋の力を使ってもキスにすら発展しないなんて。同性愛への偏見も少ないので簡単に落ちると思っていたのに、それが逆にボーイズバーで済むという結論に至ってしまった。
「だけど……」
 私はあれだけは許容できない。可愛く着飾って男に喜んでもらおうとする男を男として認められない。そこを譲ってしまうとboys loveの良さがなくなってしまう。
 やはり、監禁して××しないと出られない部屋なんて強引な方法をとったのが間違いだったのだろうか。
 しかし、今まで部屋は違えど、同じ屋根の下で寝泊まりしてきたのだ。普通なら、男同士、同じ屋根の元、性欲も吐き出せずに何日も、何も起きないはずもなく……。という展開になったはずなのに、これまでそれといった様子もなく、痺れを切らした私は××しないと出られない部屋を行ったのだ。それなのにこの結果……。
「お嬢様、今日はこの辺にしておきましょう。彼らもまだ仕事が残っていますし」
「でも……」
「今日はたくさん涎を流せました。それでいいではありませんか」
 確かに、セバスの言うとおり、今日の収穫がなかったわけではない。とても妄想は捗った。全く供給がなかった今までに比べれば、呼吸も楽になった気がする。
「分かったわ。今日のところはこの辺にしておきます」
 諦めた私は部屋の施錠を解除した。
 すぐに出て行く三人。
 少しもったいない気もするが、また腐食が進んだときに挑戦しよう。そう心に決めた。
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