悪役令嬢は見る専です

小森 輝

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1 供給がなければ作ればいいじゃない!

悪役令嬢は見る専です 4

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「うぅ……あれ……僕たち……」
「いつのまに眠っちまったんだ……と言うか、ここどこだよ!」
 気を失っていた使用人たちが目を覚ますと、そこは窓一つない閉鎖された空間でした。壁や床、天井は真っ白で清潔に保たれ、唯一の出入り口である扉は堅く閉ざされている。
 そう、彼らはこの部屋に閉じこめられているのです。
 そして、全員が目覚めた今、彼らをここに閉じこめた張本人の声が部屋の中に響きわたった。
「さあ、やってまいりました! 第一回、××しないと出られない部屋inウェラベルグ!」
 今まででは考えられないほど私はテンションが跳ね上がっていた。なんたって、私の欲望が実現しようとしているのだから。
「な、なに言ってるんだよお嬢! ていうか、どこにいるんだ?」
 ザックさんが叫んでいる通り、私はその場にはいない。別の部屋から魔法を使って使用人の彼らを閉じこめている部屋をモニタリングしている。もちろん、私の声も魔法で彼らに届けることが可能だ。
「この時を……この時をどれだけ待ったことか……」
 そう。私はずいぶんと長い間、この時を待っていたのだ。
「思えば、辛い日々だった。でも、それも今日で報われる!」
 悪役令嬢から大逆転したのも、魔王を倒して世界を救ったのも、全て今この時のため。
「この世界には娯楽が少ないの。主に、同人誌本が!」
 魔法が発達しているこの世界では本がない。というか、紙がない。記録するのも魔法、手紙も魔法、おかげでこの世界は紙というものを必要としていなかった。
 だが、私には必要だ。
 紙がなければ絵を描くこともない。漫画という娯楽が生み出されることもない。そうなると、同人誌なんて言うものも生み出されない。つまり、私が人知れず愛していたBL本もこの世界では生まれない。
「私の生きる糧。いや、私にとっては酸素と変わらないそれが、この世界にはないの! でも、それなら、私が作ってしまえばいいじゃない。悪役令嬢として侮蔑を受けた。魔王を倒して世界を救った。そして、今はこの国を統べる女王。ならもう、これから私が趣味でBLの園を作っても文句ないでしょぉ!」
 私はこの楽園を作るために、どんなに辛いことも頑張ってきた。そして、今まさに、私は供給を得ようとしている。
 え? 二次元と三次元ではBLも話が変わってくる?
 大丈夫。そのために私の使用人は選び抜かれたのだから。
 私が選出し、そして理想的な男性を私の使用人として雇っているのだから。言わば、解釈違いもカップリングも私の好みのままに作り上げられる理想郷なのだ!
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