悪役令嬢は見る専です

小森 輝

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1 供給がなければ作ればいいじゃない!

悪役令嬢は見る専です 2

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「さて、そろそろ時間かしら」
 今までの苦労を思い返すと、辛いことばかりだったと思います。
 でも、それももう終わり。あらゆる困難は過ぎ去りました。
 これからは、幸せな日々が待っています。
 私は自室の扉を開け、自由な姿で飛び出します。
 部屋の外に広がるのは、長い長い廊下。
 まるで、お城のような豪勢な装飾が施された壁に赤い絨毯。
 いいえ。まるで、ではありません。ここは正真正銘、お城なのです。そして、このお城の持ち主は、もちろん私。なんと言っても、私は勇者を差し置いてあの魔王を倒した張本人なのですから。自分のお城を持つのなんて当然。それどころか、魔王を倒した功績を称えられ、私はこの国、ウェラベルグ国を治める立場にまで上り詰めていたのです。つまり、没落寸前の貴族の悪役令嬢だった私はクラスチェンジを果たし、一国の女王になったのです。その影響もあり、名前も藤潮弥生からヤヨイ・ウェラベルグへと改名をしました。なんだか強そうな名前です。まあ、実際、強いんですが。
 そんな女王の私は、今や争いのない平和な暮らしをしています。もちろん、こんなに広いお城なのですから、一人ではありません。
『みなさん、そろそろ、お茶にしましょう』
 今の私の声は、このお城にいる全ての人に届きました。
 残念ながら、電話ではありません。
 これは魔法です。
 ここは地球とは異なる世界、異世界なのです。その異世界であるこの世界では、魔法が使えます。とても便利です。能力次第ですが、遠くの人とお話することもできれば、炎や水、風や雷を自在に操れることもできます。中でも助かったのは、言語の翻訳でしょう。突然、異世界に来て失語症のような事態にならなかったのは助かりました。
 魔法を使えば様々なことができますが、便利なことばかりではありません。特に魔法で何でも解決してしまうことにより、科学技術が発達しなかったのは致命的です。おかげで、この世界にはスマホどころか機械すらありません。文明レベルが中世で止まっているのはそのせいでしょう。
 この事実は、私にとっては致命傷だったのだが、それも今日まで。これからは、欲望のままに生きていくと決めたのです。
 私のお城にあるテラスには、シックなデザインの椅子と丸いテーブルが心地の良い日差しに照らされて輝いていた。
 午後のお茶をするにはちょうどいいお日和です。
 そして、私を楽しませてくれるのは、天気だけではありません。
 私が椅子に腰掛けると、このお城の使用人たちが続々と集まってきてくれました。
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