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5 聖地、独立国家

アルスター 53

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 荷物を置きに暗幕で囲まれた部屋へと入ると、人類王が待っていた。
「おっ! アルスター君、ちょうど良いところに帰ってきたな」
 人類王が何故か木でできた剣を持って座っていた。
「もしかして、それを武器にするつもり? それじゃあ何も切れないわよ?」
 メリルの言うとおり、あれでは何も切れない。でも、個人的には、誰かを殺せるような武器ではないのであちらの方が気が楽だ。
「あぁ、これか。もちろん、儂が戦闘で使うものじゃないぞ」
 やっぱり、メリルが言っていたとおり、これを武器にするつもりではないらしい。では、何のために使うのか、飾りにでも使うのだろうか。
 そんなことを考えていると、人類王の真意に気づいた。
「これは、模擬戦用じゃ。そんで、一個はアルスター君、君のものじゃ」
 人類王から木製の剣を渡されたので、それを受け取った。
「でも、人類王、剣術なんてできるの?」
「一通りはできるぞ。剣術、槍術、弓術、柔術。子供の頃から叩き込まれておるからの」
 王様は玉座に座っているのが仕事なのだとばかり思っていたのだが、案外、ハードな生活を送っているらしい。
「飛行船の修理には、まだ時間がかかるらしいからの。その間に少し稽古を付けてやろうと思ってな」
「なんでまた急に……」
「黄金の果実を取りに行ったとき、戦闘をしたんじゃろ? アルスター君のお兄さんと。でも、何とか退かせた。その話と盗賊との戦闘を考えれば、少し稽古が必要だと考えるのも必然じゃろ」
 人類王は全てお見通しのようだ。ベスにぃを退かせたのは僕に託されたエルフの宝剣のおかげ。僕自身の実力ではない。
「アルスターの至らないところは私が補うわ。それでいいんじゃない」
「いいや、メリル。指導、お願いできますか?」
「ちょっと……」
「出きることは少しでもやっておきたいんだ」
 そう言って、僕は首からメリルを降ろした。
「巻き込まれただけとは言っても、坊主も男だからな。守られる男ではなく守れる男になりたいんじゃよ。春が青いのう」
「そ、そんなんじゃないですよ!」
 人類王に軽くからかわれて、僕と老人の特訓は始まった。
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