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5 聖地、独立国家

アルスター 47

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 わくわくしながら荷馬車に揺られ、そして、止まった。
「着いたわよ」
 そう言われ、ドワーフ王、人類王が降り、そして、最後に、僕も荷馬車を降りた。
「お……おぉ!」
 目の前には鉄の塊があるのだが、それがひたすら上へ伸びている。そして、真下から全体像を見ると、目の前のこれが足だったということに気づいた。
「な、なんですかこれは」
 鋼鉄で出来た巨大な人型の何かがそこに立っていた。でも、銅像のように誰かを模して作られたと言う感じではない。それはまさに甲冑と言うべきだろうか。でも、こんな巨大な甲冑、誰が着るのだろうか。もしや、僕が知らないだけで、この世界にはこんなに大きな巨人がいるのだろうか。童話にはたまに出てくるし、ドラゴンがいるという話なので、本当にいても疑いはしない。
「これはな、ロボットと言ってな。これで空を飛び、そして、戦うんだ。レーザーソードを持って、銃も使う。銃も人間の大きさじゃない。銃弾は大砲より大きいぞ!」
「おぉ!」
 エルフだけじゃなく、巨人も飛べるのか。
「乗ってみるか? コックピットもつけているから乗れるし、そこからの景色は圧巻だぞ」
 てっきり巨人用だと思っていたのだが、どうやらこれは巨人用ではないようだ。
 ただ、人が乗って空を飛ぶというのは聞いた話だった。
「もしかして、これが飛行船ってやつなんですか?」
 これで旅をすると言うのはかなり夢が広がる。これからも、この荷馬車で旅をするのだろうと思っていたが、これで空を飛べば、そんな必要もなくなる。
 だが、そんなことはないようだ。
「あぁ……いや、飛行船はこれじゃないんだ」
「そうなんですね……」
 冷静に考えれば、それも仕方ないことだ。なんたって、こんなのが飛んでいたら目立つ。敵が来ても戦えばいいのだろうが、こんなのと戦える種族なんて、それこそドラゴンぐらいしか考えられない。
「いいじゃない。これを動かせば。戦闘もできるなら、敵対勢力をこれで薙ぎ倒せば万事解決じゃない」
 何の感情もなくメリルが自分の意見を言ったが、それにドワーフ王は渋い顔をしていた。
「それが……実はな……これはロマンだけで作って、立たせるために軽量に計量を重ねて、中身はほぼ空っぽの張りぼてなんだ」
「そんな……」
 初めて出会ったロマンだったのに、夢を壊された気分を味わっていた。
「なんというか、兄さんもそうだったけど、男って何の役にも立たないものをよく作るわよね」
「何でも役に立たないなんてことはないんだ。これだって、いつかは動く日が来るかもしれない」
 ドワーフ王は遠くを見つめながら黄昏ていた。
「アルスター、行きましょう。こんなの気にしないで」
 僕もこれが動く日は気になるが、ここに来た目的を忘れては行けない。
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