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5 聖地、独立国家

アルスター 46

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 国の中にはいると、さっきまでの人工的な明かりとは違い、自然の日の光が射し込んできていた。
「おぉ、ちょうどいい時間帯に来たみたいだな」
 ドワーフの領土は全て地中だと思っていたのだが、どうやら、この町は渓谷の中に出来ている様だ。ドワーフの国には光が射し込まないなんて言うのは、完全に偏見だ。
「ドワーフの領土の中でも、ここだけが唯一日の光が射し込むんだ。そこも人気の一つだろううよ」
 ドワーフ国内で唯一であれば、ドワーフが集中し、そして、他国からの観光客も集まるだろう。すると、想像もしなかった化学変化が起こる可能性は少なくない。ベリルさんも何度かここに来たみたいだし、この国に影響を受けたことは間違いない。
 エルフの天才を生み出した町と知ったら誰だって一目は見ておきたいと思うだろう。
「結構、町並みも綺麗なんですね」
 自然の渓谷なので、当然、規則性はないのだが、それでも、渓谷に合わせて綺麗に町が整備されている。
「まあ、ドワーフってのは掘るのが趣味みたいなものだからな。ここも最初は凸凹で住めるような土地じゃなかっただろう。だが、先人たちが暇つぶし程度の気持ちで地面を平らに整地して、そこに町が出来たって感じだな」
 ただのドワーフの町だと言っても、歴史は深いようだ。エルフの国にも歴史があったように、人間の国にも長い歴史がある。もしかしたら、僕が住んでいた村にも歴史があるのかもしれない。いままでただ生きていたが、自分が産まれ育った場所なのだから、分かる範囲で知っておきたい。今度、村に帰れることがあったら調べてみるのもいいかもしれない。
「観光案内は嬉しいけど、目的地を通り越してるなんてことはないわよね?」
「問題ない。この先、ちょうど渓谷が終わる場所で道が終わる。そこに馴染みの店がある」
 そう言われ、上を見てみると、もうすぐ渓谷が終わりそうだった。
「見えたわ。あれがそうなのね」
 メリルがそう言うので、先の方に目を凝らしてみるが、まだよく見えない。メリルは魔法の力によって見ることが出来たのだろう。
「おう、アルスター。気になるのは分かるが、じっくり待って近くに来たときに見上げる方が爽快だぞ」
「そうなんですか?」
「あぁ。ジワジワ見えるよりも近くでいきなり見た方が迫力が違うからな」
 そうドワーフ王に言われたので、おとなしく、荷馬車の中で待つことにした。
「男って、こう言うの好きよね。兄さんの部屋にも飾ってあったし。何がいいの?」
「まあ、妖精女王には分からねえだろうよ。男のロマンってやつはな」
 なにやらすごいものらしいので、期待に胸を膨らませながら、荷馬車が止まるのを今か今かと待っていた。
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