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4 妖精の宝物庫
アルスター 28
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「でも、ちょっと暇ね。兄さんが騒ぎを起こすって言っていたけど、まだ時間がかかりそうだし。早く来すぎたかしら」
「あれだけ飛ばしたからね……」
時間を余すぐらいならもう少しゆっくり飛ばしてほしかった。そうしたら、あんな怖い思いも情けない思いもしなくて済んだのに……。
「せっかく早く来たんだし、ここで何もしないのは時間の無駄よね」
「それはそうだけど、特に何かできるようなことってなさそうな気がするんだけど……」
潜入するのも正面突破で騒ぎが起こらないと何もできないし、この付近で隠れ潜むんで時間を待つしかなさそうなのだが、メリルには考えがありそうだ。
「とりあえず、潜入した後のことを考えましょう」
「後ってことは、宝物庫への行き方とか?」
「その通り」
でも、口頭で説明されても覚えれる気がしない。
「それじゃあ、いくわよ」
「行くって、どこに……」
その答えを聞く前に僕の視界は急激に上昇した。
「はっ……はぁ!?」
また空へと飛ばされた。でも、あの時ほど体への不安な浮遊感は感じない。一回の飛行で体が慣れてしまったのだろう。
「今、あなたの視界だけを上空に移動させているの。だから、転んだりしないようにね。平衡感覚を支える魔法も使っているけど、あんまり酷いと支えきれなくなっちゃうから」
「わ、分かった……」
視界だけが飛んでいて、足は地面に付いているのなら浮遊感なんて味わえるはずがない。体が慣れたというのは、ただの気のせいだった。
「とりあえず、見てほしいんだけど…………今更だけど、高いところとか大丈夫よね?」
「大丈夫。平気平気」
「それはよかった」
あんなスピードで飛ばされたらトラウマになっていてもおかしくないのだが、あまりにも現実味がなかったので大丈夫だったのだろう。
「じゃあ、下を見てちょうだい」
そう言われて下を見ると、かなりの高さにいた。
「はぁっ……」
思わず息をのみ、足が竦みそうになる。
「大丈夫? 実際にはこんな高さにはいないから、安心して」
「う、うん……大丈夫」
先ほど言っていたように体を支えてくれていたのだろう。あまりメリルに迷惑はかけられない。気を引き締めなければ。
「それじゃあ、説明するんだけど、今、真下にいるのがアルスターの体ね」
「なるほど……」
動かず、ちょこんと立ち尽くしているのが僕らしい。
「それで、その前にあるのが王城よ」
「え……」
木造でこぢんまりとした城だと思っていたのだが、それは正面から見た姿で、上から見ると、城はとてつもなく広がっていた。もはや、この城は一つの町なのではないのかと思うほど。僕が住んでいた村よりも広いかもしれない。
「あれだけ飛ばしたからね……」
時間を余すぐらいならもう少しゆっくり飛ばしてほしかった。そうしたら、あんな怖い思いも情けない思いもしなくて済んだのに……。
「せっかく早く来たんだし、ここで何もしないのは時間の無駄よね」
「それはそうだけど、特に何かできるようなことってなさそうな気がするんだけど……」
潜入するのも正面突破で騒ぎが起こらないと何もできないし、この付近で隠れ潜むんで時間を待つしかなさそうなのだが、メリルには考えがありそうだ。
「とりあえず、潜入した後のことを考えましょう」
「後ってことは、宝物庫への行き方とか?」
「その通り」
でも、口頭で説明されても覚えれる気がしない。
「それじゃあ、いくわよ」
「行くって、どこに……」
その答えを聞く前に僕の視界は急激に上昇した。
「はっ……はぁ!?」
また空へと飛ばされた。でも、あの時ほど体への不安な浮遊感は感じない。一回の飛行で体が慣れてしまったのだろう。
「今、あなたの視界だけを上空に移動させているの。だから、転んだりしないようにね。平衡感覚を支える魔法も使っているけど、あんまり酷いと支えきれなくなっちゃうから」
「わ、分かった……」
視界だけが飛んでいて、足は地面に付いているのなら浮遊感なんて味わえるはずがない。体が慣れたというのは、ただの気のせいだった。
「とりあえず、見てほしいんだけど…………今更だけど、高いところとか大丈夫よね?」
「大丈夫。平気平気」
「それはよかった」
あんなスピードで飛ばされたらトラウマになっていてもおかしくないのだが、あまりにも現実味がなかったので大丈夫だったのだろう。
「じゃあ、下を見てちょうだい」
そう言われて下を見ると、かなりの高さにいた。
「はぁっ……」
思わず息をのみ、足が竦みそうになる。
「大丈夫? 実際にはこんな高さにはいないから、安心して」
「う、うん……大丈夫」
先ほど言っていたように体を支えてくれていたのだろう。あまりメリルに迷惑はかけられない。気を引き締めなければ。
「それじゃあ、説明するんだけど、今、真下にいるのがアルスターの体ね」
「なるほど……」
動かず、ちょこんと立ち尽くしているのが僕らしい。
「それで、その前にあるのが王城よ」
「え……」
木造でこぢんまりとした城だと思っていたのだが、それは正面から見た姿で、上から見ると、城はとてつもなく広がっていた。もはや、この城は一つの町なのではないのかと思うほど。僕が住んでいた村よりも広いかもしれない。
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