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3 妖精の賢者
アルスター 23
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「でも、そんなに簡単なことじゃないわよ。王城の警備は、当然、この国で一番厳重。もちろん、その中でも宝物庫の警備レベルが一番厳重。普通なら宝物庫なんて近づくことすらできないんだけど、私にまだ妖精女王の権限が残っているからそこは心配しなくても大丈夫」
「問題はどうやって王城に忍び込むかじゃな……儂の鍵は人類製限定じゃからな……」
人類王が胃袋の中に隠し持っている何でも開く鍵は人類限定でエルフやドワーフの国では役に立たない。
「その鍵、いいもののはずなのに、国外へ出るとただのガラクタだな」
「そもそも、私自身が鍵のようなものなんだからそんなもの不要よ。だから出さないで。気持ち悪いから」
「そんなに嫌わんでもいいではないか……」
人類王はしょんぼりしている。でも、僕も、いくら大事だからといって自分の胃の中に隠すのはやりすぎではないのかと思う。
「問題はどうやって王城に忍び込むのか……今は警戒度も高いだろうし、そう簡単にはいかなそうね……」
「そこは小生にお任せあれ!」
自信満々にベリルさんが胸を叩いた。
「おぉ、どこか抜け道でも知っているんじゃな?」
「いえいえ、小生、あまり家から出ないので、道なんて詳しくないでござるよ」
僕も期待していたので、かなり落胆した。
「まあ、そんなに落ち込まないでくだされ。これは話の前振りではござらぬか」
そして、一つ咳払いをした後に説明を始めた。
「抜け道なんていう盗人に入ってくださいと言わんばかりの道はありませぬ。ならば、方法は一つ。正面突破でござる。今はちょうど、我が妹の失脚により、民の疑念が渦巻いているのでござる。そんな中で、小生の盟友たちが呼びかければ、デモ、いや、これはもはやクーデターとなりうるでしょうな。そうなれば、見張りをすり抜けるのは造作もないこと。ただし、人類王もドワーフ王も顔は知られているので、クーデターに紛れるのは不向きでござるからな。これはアルスター氏と我が妹の二人きりがベストでござろう」
「儂らは顔が割れておるから仕方ないの」
「俺たちがバレて警備を強化でもされたらそれこそ終わりだからな。まあ、心配がなくなる訳じゃないが。二人で駆け落ちとか、その歳で乙女な考えをするんじゃないぞ」
「だ、誰がそんなこと!」
作戦は決まったようだ。その大役を任されたのは、王ではない小さな村出身の僕。今度は失敗できない。責任重大だ。
「そんなに堅くならなくていいわよ、アルスター。なんたって、私がついているんだから。失敗しても私がどうにかするわ。だから、大船に乗った気持ちでいいんだからね」
そうだ。これは僕だけに任された大役ではない。責任感は重要だが、それに押しつぶされてはいけない。
「いい表情になってきましたな、アルスター氏。なに、気負う必要はありませぬ。アルスター氏は、その胸に抱く大事なものを守り抜けばよいのですから。妹を頼みましたぞ、我が未来の愚弟よ」
最後の言葉だけ耳打ちされて、その意味を聞くことなく、僕は家の外へと送り出された。
「頑張ってくるのですぞ!」
「は、はい!」
よく分からないが、僕は責任とか大役とか、難しいことを考える必要はないんだ。ただ、メリルを守る。そのことだけに集中していればいい。
「問題はどうやって王城に忍び込むかじゃな……儂の鍵は人類製限定じゃからな……」
人類王が胃袋の中に隠し持っている何でも開く鍵は人類限定でエルフやドワーフの国では役に立たない。
「その鍵、いいもののはずなのに、国外へ出るとただのガラクタだな」
「そもそも、私自身が鍵のようなものなんだからそんなもの不要よ。だから出さないで。気持ち悪いから」
「そんなに嫌わんでもいいではないか……」
人類王はしょんぼりしている。でも、僕も、いくら大事だからといって自分の胃の中に隠すのはやりすぎではないのかと思う。
「問題はどうやって王城に忍び込むのか……今は警戒度も高いだろうし、そう簡単にはいかなそうね……」
「そこは小生にお任せあれ!」
自信満々にベリルさんが胸を叩いた。
「おぉ、どこか抜け道でも知っているんじゃな?」
「いえいえ、小生、あまり家から出ないので、道なんて詳しくないでござるよ」
僕も期待していたので、かなり落胆した。
「まあ、そんなに落ち込まないでくだされ。これは話の前振りではござらぬか」
そして、一つ咳払いをした後に説明を始めた。
「抜け道なんていう盗人に入ってくださいと言わんばかりの道はありませぬ。ならば、方法は一つ。正面突破でござる。今はちょうど、我が妹の失脚により、民の疑念が渦巻いているのでござる。そんな中で、小生の盟友たちが呼びかければ、デモ、いや、これはもはやクーデターとなりうるでしょうな。そうなれば、見張りをすり抜けるのは造作もないこと。ただし、人類王もドワーフ王も顔は知られているので、クーデターに紛れるのは不向きでござるからな。これはアルスター氏と我が妹の二人きりがベストでござろう」
「儂らは顔が割れておるから仕方ないの」
「俺たちがバレて警備を強化でもされたらそれこそ終わりだからな。まあ、心配がなくなる訳じゃないが。二人で駆け落ちとか、その歳で乙女な考えをするんじゃないぞ」
「だ、誰がそんなこと!」
作戦は決まったようだ。その大役を任されたのは、王ではない小さな村出身の僕。今度は失敗できない。責任重大だ。
「そんなに堅くならなくていいわよ、アルスター。なんたって、私がついているんだから。失敗しても私がどうにかするわ。だから、大船に乗った気持ちでいいんだからね」
そうだ。これは僕だけに任された大役ではない。責任感は重要だが、それに押しつぶされてはいけない。
「いい表情になってきましたな、アルスター氏。なに、気負う必要はありませぬ。アルスター氏は、その胸に抱く大事なものを守り抜けばよいのですから。妹を頼みましたぞ、我が未来の愚弟よ」
最後の言葉だけ耳打ちされて、その意味を聞くことなく、僕は家の外へと送り出された。
「頑張ってくるのですぞ!」
「は、はい!」
よく分からないが、僕は責任とか大役とか、難しいことを考える必要はないんだ。ただ、メリルを守る。そのことだけに集中していればいい。
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