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2 元三王協定
アルスター 10
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「鍵が開いて嬉しいのは分かるが、まあ、そんなに焦るな。少し時間をくれ」
「時間をくれって……。早くしないと見回りとか来るかもしれんぞ」
「そんなに時間はとらない。それに、言うことを聞いて損はさせないぞ」
「ドワーフ王がそこまで言うのなら仕方あるまい。妖精女王はどうじゃ?」
「私も構わないわよ。損はさせないとまで言うんだから期待してましょ」
二人の王の許可を得て、ドワーフ王は僕の方をみた。
「いえ、僕はそんな王様たちが決めたことに文句を言ったりはしません」
「坊主は王族でもなんでもないただの人間だもんな。だがな、自分の意見があるなら言った方がいいぞ。俺たちはもうただの王と民の関係ではないんだから」
僕も世界を救う一員に入っている。小さな村から出て出稼ぎにきているという気分は捨てなければならないのかもしれない。
「まあ、そう気負うな。坊主はその動けない女王様を守ってやればいいんだから」
「そう……ですね」
自分で重い使命を背負おうとしていたが、どうやら見抜かれていたようだ。
「まあ、そういうわけだから、とりあえず、守りやすいようにしておこうと思ってな」
「持ってるだけじゃダメなんですか?」
「坊主……右手に剣をもって左手で盾を構えたら女王様をどうやって持つんだ?」
「盾は指輪についているから左手は空いていますよ」
正確には人差し指から肘にかけて数カ所固定される。それでも行動を阻害されないのだからすごい盾だ。
「まあ、盾の方は手が空くが、それでも左手にそんなものを持っていたら戦いにくいだろ?」
「そんなものってなによ、そんなものって」
メリルは怒っているが、確かに、握りながら戦うのは邪魔だし、それに、万が一落として割れたりしたら一大事だ。
「俺がその妖精女王をネックレスにしてやるから」
「ネックレスって……でも、そんな道具……」
どこにもない、と言おうとしたが、ドワーフ王は目の前に道具を出した。
「ドワーフの七つ道具だ。ほれ、これでネックレスにしてやるから、その妖精女王を渡しな」
「ちょ、ちょっと! 私、ドワーフのふっとい手に握られるとか嫌よ!」
「……よろしくお願いします」
メリルの反対を押し切って、ドワーフ王にメリルを手渡した。
「よし、ちゃちゃっとやっちまうか」
「乱暴にしないでよ? 元だけど私は妖精女王なんだから」
「分かってる分かってる」
最初に持ち出したのは鎖だ。これを首にかけるのだろう。でも、それはきっと貴重なものに違いない。
「いいのか? 七つ道具なんじゃろ? そんなもの、使ってしまって」
「あぁ、これはウロボロスチェーンと言ってな、この紫の鎖を切らない限り、どこを切り取っても修復し続けるんだよ」
「ほう……それは切った鎖を売り続ければ儲かるんじゃ……」
「この鎖は熱に弱くてな。鉄のように熱で溶かそうとすると灰になってしまうんだ。だが、ネックレスぐらいなら……」
ウロボロスチェーンの他にハンマーやペンチなどを使い、メリルはネックレスに繋がれた。
「できたぞ。ほれ、これなら首にかけるだけだ。これなら落とす心配はない」
「ありがとうございます」
鎖だけだったのに、しっかりと宝石のメリルが固定してある。
「しっかし、これだけのことができるものをよく賊から隠し通せのう。確か、ドワーフは魔法を使えないと聞いたんじゃが……」
「魔法なんてもんじゃない。ドワーフの七つ道具は常に隠しているからな」
「隠しているって、どこに? 隠せるような場所なんてどこに……」
「玉袋の裏だよ」
ドワーフ王はしたり顔で言った。確かにそこなら身ぐるみをはがされても見つからないだろう。けど、少し汚いような気が……。
「玉袋って何よ」
メリルは女王、つまり女性。そんなものはついていないので、知らないのも頷ける。
「知らないのか? 玉袋っていうのはだな」
「そ、それよりも、早く脱出した方がいいと思うんです! 雑談して時間を無駄にする暇はないと思います!」
そんな場所にあったものでネックレスにされたなんて知ったら、メリルはきっと激怒する。ドワーフとエルフの関係が悪化しないように、僕は先を急かした。
「時間をくれって……。早くしないと見回りとか来るかもしれんぞ」
「そんなに時間はとらない。それに、言うことを聞いて損はさせないぞ」
「ドワーフ王がそこまで言うのなら仕方あるまい。妖精女王はどうじゃ?」
「私も構わないわよ。損はさせないとまで言うんだから期待してましょ」
二人の王の許可を得て、ドワーフ王は僕の方をみた。
「いえ、僕はそんな王様たちが決めたことに文句を言ったりはしません」
「坊主は王族でもなんでもないただの人間だもんな。だがな、自分の意見があるなら言った方がいいぞ。俺たちはもうただの王と民の関係ではないんだから」
僕も世界を救う一員に入っている。小さな村から出て出稼ぎにきているという気分は捨てなければならないのかもしれない。
「まあ、そう気負うな。坊主はその動けない女王様を守ってやればいいんだから」
「そう……ですね」
自分で重い使命を背負おうとしていたが、どうやら見抜かれていたようだ。
「まあ、そういうわけだから、とりあえず、守りやすいようにしておこうと思ってな」
「持ってるだけじゃダメなんですか?」
「坊主……右手に剣をもって左手で盾を構えたら女王様をどうやって持つんだ?」
「盾は指輪についているから左手は空いていますよ」
正確には人差し指から肘にかけて数カ所固定される。それでも行動を阻害されないのだからすごい盾だ。
「まあ、盾の方は手が空くが、それでも左手にそんなものを持っていたら戦いにくいだろ?」
「そんなものってなによ、そんなものって」
メリルは怒っているが、確かに、握りながら戦うのは邪魔だし、それに、万が一落として割れたりしたら一大事だ。
「俺がその妖精女王をネックレスにしてやるから」
「ネックレスって……でも、そんな道具……」
どこにもない、と言おうとしたが、ドワーフ王は目の前に道具を出した。
「ドワーフの七つ道具だ。ほれ、これでネックレスにしてやるから、その妖精女王を渡しな」
「ちょ、ちょっと! 私、ドワーフのふっとい手に握られるとか嫌よ!」
「……よろしくお願いします」
メリルの反対を押し切って、ドワーフ王にメリルを手渡した。
「よし、ちゃちゃっとやっちまうか」
「乱暴にしないでよ? 元だけど私は妖精女王なんだから」
「分かってる分かってる」
最初に持ち出したのは鎖だ。これを首にかけるのだろう。でも、それはきっと貴重なものに違いない。
「いいのか? 七つ道具なんじゃろ? そんなもの、使ってしまって」
「あぁ、これはウロボロスチェーンと言ってな、この紫の鎖を切らない限り、どこを切り取っても修復し続けるんだよ」
「ほう……それは切った鎖を売り続ければ儲かるんじゃ……」
「この鎖は熱に弱くてな。鉄のように熱で溶かそうとすると灰になってしまうんだ。だが、ネックレスぐらいなら……」
ウロボロスチェーンの他にハンマーやペンチなどを使い、メリルはネックレスに繋がれた。
「できたぞ。ほれ、これなら首にかけるだけだ。これなら落とす心配はない」
「ありがとうございます」
鎖だけだったのに、しっかりと宝石のメリルが固定してある。
「しっかし、これだけのことができるものをよく賊から隠し通せのう。確か、ドワーフは魔法を使えないと聞いたんじゃが……」
「魔法なんてもんじゃない。ドワーフの七つ道具は常に隠しているからな」
「隠しているって、どこに? 隠せるような場所なんてどこに……」
「玉袋の裏だよ」
ドワーフ王はしたり顔で言った。確かにそこなら身ぐるみをはがされても見つからないだろう。けど、少し汚いような気が……。
「玉袋って何よ」
メリルは女王、つまり女性。そんなものはついていないので、知らないのも頷ける。
「知らないのか? 玉袋っていうのはだな」
「そ、それよりも、早く脱出した方がいいと思うんです! 雑談して時間を無駄にする暇はないと思います!」
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