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2 元三王協定

アルスター 6

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「……なんじゃ、見たところ、ドワーフのようじゃな。これは都合がよい」
「あぁ……ドワーフなのは間違いないんだが、ちょっとばかし、境遇が似ていてな。俺も王様だったんだわ。ドワーフ王、ドルミロ・ドワルゴン。もちろん、元だがな」
 もう何がなんだか分からない。
 この場にドワーフ王もいると言うことは、この大陸にある三カ国、人類、エルフ、そしてドワーフ、その元王がこんな薄汚い牢屋の中で一同に会しているということ。もはや、歴史的な瞬間と言ってもいいほどだ。そんな場に、田舎の小さな村出身で家名もない僕が居合わせるなんて、場違いにもほどがある。
「ドワーフ王……地中に籠もって鉱石ばかり掘っているドワーフの王となんて面識がないんですけど……人類王は面識が?」
「いえ、儂も初めてです」
 少し、沈黙が流れた。おそらく、本物なのか疑っているのだろう。僕だって疑っている。こんな場所で人類王、妖精女王、そしてドワーフ王の三王が揃っているなんて、信じられない。
「おいおい、嘘なんてついていないぞ。というか、この状況で嘘をつくメリットなんてないだろ」
 弁明はしているが、二人の王は完全に信じている様子ではない。
「まあ、お主が王かそうでないかは別として、ドワーフなのは間違いないんじゃ。そのドワーフでも、この妖精女王の魔法はどうにもできんと?」
「そうだな。ドワーフは鉱物に詳しいとは言っても、採掘技術や加工技術が専門だ。こんな魔法で宝石に閉じこめたなんて言われても、その魔法の解析や解読は専門外ってことだ」
「なるほどな。残念じゃったな、妖精女王」
「そうね……」
 妖精女王のメリルはそれほど残念そうに見えない。
「なんじゃ、他に策でもあったのか?」
「いえ、その……珍しい魔術を研究している人を知っていて……」
「それなら一番にそやつを訪ねたらよかっただろうに」
「その……知ってるかもしれない奴ってのが、所謂、変人というものでして……」
「この際、変人でも仕方ないじゃろ。それで、そやつはどこにいるんだ?」
「エルフの国よ」
「エルフの国か……たぶん、もうすでに4代目の王を立てているだろうから、入国は厳しそうじゃな……」
「大丈夫よ。私が生きている限り、妖精女王の権利はすべて私にあるから」
「ならば、後は敵をなぎ払い、道を切り開く存在か……」
 妖精女王は宝石。人類王は老人。ドワーフ王はそもそも戦闘には向いていない。となると、この場にいるもので戦えるものといったら……。
「どうだ、坊主。儂らに雇われて傭兵として仕える気はないか? もちろん、成功報酬は三カ国とも弾むぞ」
 町で傭兵になりお金を稼ごうとしていたので、やることはあまり変わらない。変わるのは成功報酬の桁が違うと言うこと。
「アルスター、私たちと一緒に旅をしてくれない?」
 でも、王の命令には逆らえない。
「分かりました。僕もお手伝いさせてもらいます」
 こうして、元妖精女王、元人類王、元ドワーフ王、そして、田舎の小さな村出身の僕との4人で旅をすることが決まった。
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